第229話●みんなで楽しむ安比旅行!
「みんな集まったね。じゃあ、私がワゴンタクシー呼んであるから分乗して東京駅へ行こう!」
いつもにもましてバッチリ変装している彩春さんの仕切りから安比旅行がスタートする。みんなで行く旅行は本当に楽しみだなあ。ちなみに今日は瑠乃さんも変装している。顔出ししているとその辺が大変だよなあ。
東京駅丸の内口にタクシーが止まるとみんなでぞろぞろと八重洲地下中央口まで移動する。今回の旅行、彩春さんからの提案で荷物はすべて事前に送ってある。帰りもペンションからの発送を手配しておいてくれたそうだ。スキーウェアを持っている人も既に送ってあって、持っていない人は彩春さんの実家でレンタルの用意があるそうなので、ほぼ手ぶらで旅行を楽しむことができる。俺はレンタルで済ませる予定だ。未亜は実家にウェアがあるということで連絡して直接送ったって聞いた。帰りは自宅に配送してクローゼットにしまっておくそうだ。
みんなで話をしながら銀の鈴に着くとすでに華菜恵さんは到着していた。
「みんなおはよう!点呼取るからまだ移動しないでここにいてね。」
華菜恵さんは今日の参加者をリストにして印刷してきている模様。すごい。ただ、名前は「みあっち」「ますっち」のようにあだ名になっているのが面白い。
「その名簿、あだ名なんだね。」
「うん、私が判りやすいのとうっかりなくしても大丈夫なようにね。」
そうか!ここのメンバーは芸能人が多いから、本名で活動している二人はモロバレだし、それ以外のメンバーもそこから本名が判る可能性があるからか。細かいことだけどそういうところをきちんと配慮出来るってすごい。華菜恵さんが大崎で評価されている理由がこういうところからもよく判るな……。
華菜恵さんが点呼しているところを見ている間に志満さんと紅葉さんも到着して全員勢揃いした。まだ8時50分なのに全員ちゃんとそろっているとかすごいなあ。
「9時15分になったら移動するからその間に駅弁買っちゃってね。」
みんなぞろぞろと思い思いの方向へ。
「圭司はどうする?」
「あてがあるから着いてきて。」
「うん。」
銀の鈴から少し丸の内側へいったところへ未亜を誘導する。
「あっ!シウマイ弁当だ!そうだ!前にここで買ったね。」
「そうなんだよ。じゃあ二つ買おうか。」
シウマイ弁当を買って戻ると華菜恵さんも弁当の調達に出かけたようで、俺たちが戻って少ししてからみんながいるところへ戻ってきた。
「じゃあ、みんな戻ってきたみたいだし、9時15分になったから移動しよう!たかっち、最後尾から付いてきて、列が長くならないように促してくれるかな?」
「わかった。」
引率の先頭は華菜恵さん。俺は頼まれたように前との間隔が開きそうになると詰めるように促して、できるだけ集団で動けるように配慮する。それにしても女性9人男性3人ってすごい人数になったなあ。ここにいない、心菜ちゃん、磨奈さん、百合も加えると合計15人かあ。最初は一人、そのあとは未亜と二人になったところからここまで広がるなんて感慨深い。磨奈さんにもメンバーの状況を伝えて、今後は一緒に楽しんでいきたいよね。もちろん楽しいことばかりじゃなくって、今後もいろいろあるとは思うけど、みんなで乗り越えていきたいな。
地下からみちのく13号が出発する東京駅22番線ホームに上がるとまだ新幹線は到着していなかった。今回はできるだけ人が少ない号車がいいかな、と思ったので、一番後ろの1号車を押さえている。
『まもなく22番線に電車が到着いたします。足下の黄色い線までお下がりくださーい。この電車は清掃のため、すぐのご乗車は出来ません。』
「あっ、入ってくるみたいだよ。」
「すぐ乗れないみたいだね。」
1号車の入り口に並んだまま、みんなで思い思いに雑談していると再びアナウンスが入る。
『22番線、お待たせいたしました。準備が出来ましたので、ドアが開きまーす。』
「よし、順番に乗り込もう。」
一番後ろを押さえているので、そのまま進む。
「3人掛けを4列で押さえてあるから回転させて向かい合わせにしちゃおうか。」
「そうだね。」
乗り込んですぐに出発した新幹線は快調に北へ向かって走る。
「もう大宮をすぎて、仙台まで止まらないから駅弁食べちゃおうか。」
「そうだね!楽しみ!」
「あれ?未亜と圭司くんは一緒なんだ。」
「横浜のシウマイ弁当だよ。」
「ハマッコのソウルフードだからね!」
「そういう地元の名物料理っていいよね。所沢だと料理じゃなくて狭山茶とかかなあ。」
「そっか、志満は所沢か。新潟市だとわっぱ飯とのっぺい汁がソウルフードだよ。新潟県全体だとへぎそばとか笹団子なんかもそうだね。」
「さすが明貴子は新潟に詳しいね!札幌はいろいろあるよ。一番有名なのは味噌ラーメン、最近だとザンギが有名かな。あとは成人したら最初に飲むって決めているのが札幌ビール!」
「
「八幡平も南部煎餅あるんだ!」
「南部藩だったからねー。」
「みんな美味しそうなものばかりあっていいなあ。」
「所沢っていうと湖と野球場っていう印象だなあ。」
「最近だとKAKUKAWAの施設なんかもあるね。」
「ところざわチェリーシティだよね。あそこ、一回行ってみたいんだよねー。」
「明貴子か圭司くんが担当者さんに頼めば見学させてもらえそう。」
「どうだろうなあ。確率でいくと俺より明貴子さんの方が成功率高そう。」
「そうかね?」
「多作のベストセラー作家だから。」
「明貴子が書き下ろし書きますよっていったらすぐOK来そうなレベルだよね。」
「あー、いま太田さんに保留にしてもらっている依頼があるからそれをダシにしたら見られるかもね。少し余裕が出たらやってみようかな。」
「本当!?」
「うん。『みんなで楽しむためなら手段は選ばないよ!』」
「それ『
「さすが、紗和!すぐ判るなんて愛読者だけあるね!」
「何度も読み返しているから!」
雑談は尽きずに新幹線はどんどん北へ進んでいく。この仲間で話していると本当に気分が落ち着くし、楽しいんだよな。話題が変わりながら話をしていると景色に雪が見えてきた。そろそろ盛岡駅かな。
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