第196話○旅行の計画と税理士さんの打ち合わせ
紗和も前を見てちゃんと進んでくれていて、本当に嬉しい。そんなことを思っていたら朋夏が思い出したように話す。
「そういえば、早緑様が紅白で歌う曲、『主役』だよね!?紅白出場歌手とその楽曲の作者がここにいるよ!サインもらわないと!」
「ちょっと、朋夏は二人から何回サインもらうの。」
「いや、ちょっといってみたかったんだよね。」
「あ、未亜と紗和さんが固まってる。」
「……と、とりあえず、その話はともかく、安比行きの件だけど、さっきの話の流れだと紗和も来られそうだね?」
「も、もちろん行くよ!そんな楽しそうなこと絶対に参加だよ!」
「百合ちゃんと心菜ちゃんは高校生だから難しいっていっていたね。」
「まあ、こればかりはしょうがないよ。仕事じゃないし。」
「きっと朋夏が仕事にしてくれる!」
「未亜は私のことをなんだと思っているの!?」
「朋夏は無理でもへべすならきっと!」
「へべすでも無理なものは無理だからね!?二人とも私を勘違いしてない?」
「してないよ!すごい人だもん!」
「トップVだもんね!」
「それいったら未亜は紅白出場歌手で、彩春はあのドルプロの中の人じゃない!」
「へべすさん、最近、リスナーさんに恋愛相談しているのに荒れるどころか、みんな親身になってくれているし、やっぱりすごいひとだよねー。」
「へべすさん、すきなひとがいるんだねえー。だれなんだろうなー。」
「ふたりがいじめる!」
「本当にこのやりとり、配信と変わらないよね。好き。」
「紗和!?」
それ、みんなに言われるんだよなあ。特に意識しているわけではないんだけどね。
「えーっと、そろそろ、話をしようか。朋夏さんに預かってもらっている金額はいくらだっけ?」
「317万円だね。」
「今回で全部使う必要はなくて、ここから一部を使う感じにしたい。未亜もそれでいいよね?」
「もちろん!」
「彩春さんの実家は宿代を受け取ってくれないっていっていたけど、今回は人数も多いからそこはやっぱりちゃんとしたい。」
「親にも話してみるよ。」
「贅沢はしないけど、せっかくだからかかる費用はここから出したい。ということで、だいたいの流れを決めたいんだよね。」
「流れ?」
「うん、旅程っていうのかな?」
「ああ、なるほど!」
こういうときに圭司はやっぱりすごいなあ、と思う。
「まずは新幹線で盛岡までいくっていうことでいいのかな?」
「飛行機は花巻だからね。羽田には飛んでないんだ。」
「そうしたら新幹線で。座席は遊びだから普通車で大丈夫だよね?」
「太田さんに聞いてみようか?」
「そうだな。ここはちょっと確認しよう。」
「えっ、グリーン車指定なの?」
「うん、ライブの時もサイン会の時もグリーン車だったよ。」
「すごいなあ……。」
「まあ、会社もいろいろとあるんだろうね。それで、新幹線で盛岡に着いたらどうやって安比まで行けばいいのかな?電車?」
「列車は本数あまりないんだ。」
「そうするとバスとか?」
「うん。ただ、うちは安比っていってもペンション街からは外れたところにあるから盛岡駅からシャトルバスでAJA安比温泉グランドホテルまで行って親に迎えに来てもらう感じかな。」
「11人の送迎とか出来るの!?」
「安比温泉スキー場に送迎するマイクロバスがあるから大丈夫だよ。」
「えっ、ペンションっていっても結構大きい?」
「えーとね、公式サイトを見てもらった方が早いかも。」
彩春さんはバッグからノートパソコンを取り出すとブラウザを立ち上げた。
「あれ?朋夏さんのところのWi-Fiにつないでいるの?」
「そうだよ。行き来していろいろとネットにつなぐことも多いからね。うちのWi-Fiには朋夏のパソコンとかがつながるようになっているよ。」
「へえー。例の件を考えるとそれぞれの自宅回線にノートPCとかがつながるようにしておいた方がいいかもね。」
「圭司に賛成だよ。機会を見て、早めに設定しあった方がいいかも。」
「そうだね。そうしよう!それでね、これがうちのペンション。この前電話したら、なんかここ数年、安比温泉スキー場は家族連れが多くて、学生の大人数旅行は少ない状況なんで、今年のスキーシーズン終了のあと、秋まで掛けて客室を全面リニューアルしたって聞いてビックリしたよ!しかも3階にあった大人数が雑魚寝できる大部屋
「そうするとどんな感じになるの?」
「えーと、リニューアルした客室一覧はこのページに……あった。」
彩春の開いたホームページによると地下も含めて4階建てのペンションで、1階はレストランとフロント、2階は4人部屋4室と畳敷きの大人数部屋1室、3階は4人部屋2室・2人部屋3室・温泉大浴場となっている。ホームページにはないけど、地下は山の斜面を利用した半地下になっていて、彩春のご両親がいまでも住んでいて、彩春の部屋もまだちゃんとあるそうだ。
「それぞれの部屋に温泉を引いているのに大浴場もあるんだね。」
「やっぱり大きなお風呂に入りたい人も多いからだって。ちなみに2階の大部屋も部屋の中に温泉浴場があるよ。ここは眺めはいいんだけど広すぎるのとベッドじゃなくて布団だからだいたい最後まで空いているんだよ。」
「何度か彩春と二人で使わせてもらったけど、すごい広いし、安比のホテルとかスキー場とかの夜景がきれいで、すごくいいから女性陣は8人で布団を敷いて寝てもいいかもね!」
「そうだね。確か押し入れに入っている布団は10組だったはずだから問題なかったはず。親に確認しておくね。基本的に畳敷きの布団はベッドと違って、自分たちでリネン類を取り付けて、自分たちで敷いて、最後帰る日の朝にリネン類を取り外して、布団と一緒に畳の所に置いておくんだけど、問題ないかみんなに聞こうか。二人は大丈夫?」
「私は問題ないよ!」
「私も!」
「あとの四人にも確認だけど、じゃあ、基本はここにしようか。」
「やった!久しぶりで楽しみ!」
「あと男性陣だけど、空いていたら4人部屋を押さえるけど、けっこう埋まるのが早いそうだからダメだったら2人部屋にしてもらうね。」
「うん、そこは任せるよ。多分寝るまでみんなの部屋におじゃまさせてもらうことになると思うから。」
「そうだね!それも楽しそう!中学も高校も修学旅行とは無縁だったからね。なんかすっごい嬉しい!」
紗和がすごい楽しそう。修学旅行のやり直しみたいなもんだもんね。
「じゃあ、そんな感じかな。」
「みんなの予定を確認して、うちの予約入れちゃうね。」
「彩春さん、よろしく。新幹線は一ヶ月前じゃないと予約出来ないから近くなったらまたみんなで打ち合わせしようか。」
「うん!判った!」
みんなで旅行、楽しみだなあ!
旅行の話がまとまったあとも少し雑談をして、部屋に戻る。圭司と一緒にお風呂に入って、一緒に歯を磨いて、一緒に寝る。すっかり当たり前になった日常が愛おしい。
翌28日の午前中は自主レッスンをして、午後には圭司と一緒にお義父様のご友人である税理士・
圭司と全く同じ条件で顧問契約まで締結できたので、あとはお父さんの同意書を送ってもらえば完了。お父さんにはもう連絡してあるので、税理士法人から実家に送ってもらうことになっている。実は、こんなに一気に収入が増えると思っていなかったこともあって、今年の私は白色申告。だから青色申告の圭司と比べるとそれほど大変ではない。来年はしっかりと控除などが行えるようにその辺の手続きも依頼した。
私の報酬額も確認してくれて、その上で、来年4月から成人年齢の引き下げで飲酒喫煙とか以外はすべて成人扱いになるから事務所がOKならば二人で合同会社を立ち上げてしまった方がいいというアドバイスももらう。船渡さんは公認会計士の資格で税理士登録をされているそうで「合同会社には会計監査人は不要ですが、もし将来、法改正などで必要になったときでも私が対応できますので安心して下さい」という頼もしい話もいただいた。
ちなみに船渡さんが副代表を勤められている税理士法人
二人で毎日着実に少しずつ進めているのが本当に嬉しい。紅白に向けて頑張るぞ!
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