第193話●未亜のレッスンを見学……あれ?
しっとりとした雰囲気のまま、タクシーは8時半過ぎに大崎本社ビル1階のタクシー車寄せへたどり着いた。三人でタクシーを降りると7階の営業事務ルームへ上がる。普段だと太田さんに予約したスタジオを聴くそうなのだけど、未亜が太田さんと朝連絡を取った時にどこの部屋を予約したか忘れた、といっていたということなので、営業事務ルームまで来た次第。大石さんは、今日、別の担当声優さんと一緒に大阪のイベント出演で出張しているそうで、彩春さんも営業事務ルームで空きを見てもらうと一緒に上がってきた。
「すみません、アイドルセクションの早緑美愛です。太田チーフ
「いま確認しますね。……えーと、今日はスタジオビルの801が9時から18時までの予約になってます。」
「えっ、そこですか!?判りました。」
「文化人セクションの雨東ですが、私も今日は見学で同じスタジオに入ります。太田チーフPの許可はもらってます。」
「判りました。じゃあ、雨東さんのお名前も入れておきますね。」
大崎のレッスンスタジオは入り口にICカードの読み取り機があって、予約を取っている人と名前の登録されている人が自分の入館証を読み取らせるとロックが解除される仕組みになっているのだとか。今朝モーニングを食べながら未亜に教えてもらった。それでいま登録してもらった感じだ。前に百合のオーディションをしたときは太田さんが事前に登録しておいてくれたからすんなり入れたんだな。
「声優セクションの岡里いろはですが、自主レッスンしたいんですけど、大石
「あー、今日はスタジオビルも含めて18時まで一杯なんですよ……。」
「えっ!?そうなんですか!?」
「あっ、そうしたらいろは、一緒にレッスンしようよ。」
「いいの?」
「うん、だって、太田さんが押さえてくれてるのが割と広めのスタジオなんだもん。一人じゃ持て余しちゃうよ。」
「やった!ありがとう!」
「そうしたら岡里さんも入れておきますね。」
未亜によるとスタジオビルの801スタジオというのは8階にあるレッスンスタジオで、150㎡くらいある結構広いスタジオだそうだ。俺が見学するとはいえ、彩春さんと二人だとけっこう持て余しそうだなあ。せっかく広いところが押さえられてるんだし、未亜と彩春さんの動きを見ながら俺も身体を動かすかな。
予約確認と俺たちの登録も完了したので大崎スタジオビル4階の更衣室まで三人で移動する。
「ありがとう助かったよ!」
「いいよいいよ、声優の自主トレがどんなものだか見たかったし。」
「美愛とそんなに変わらないメニューだと思うけどね。私こそアイドルの自主レッスンを見てみたいな。」
「お互いに動きを確認しながらやろうか。」
「そうしよう!雨東先生は普通に見学?」
「俺も一応トレーニングウェアは持ってきているから一緒に身体を動かしたいかな。」
「よし、じゃあ今日は三人でレッスンしよう!」
「二人ともお手柔らかにお願いね。普段そういうことやったことないからさ。」
「しごいちゃおうかな。」
「早緑さん、頼むよー。」
そんな話をしながらスタジオビルまでやってきた。入ろうとしたら中からちょうど出てくる人影……えっ!?百合!?
「百合!?」
「……えっ!?おに……雨東先生!?」
「百合ちゃん、おはようございます!」
「あっ、早緑さんといろはさんもおはようございます!」
「百合、今日はどうしたんだ?」
「えーと、試験勉強ばかりしていてもつまらないし、かといって、学校は閉まっているから、大崎で自主レッスンしようと思って来たらスタジオが全部埋まっていたの。」
「百合も自主レッスンでスタジオを使えるのか。」
「うん、私はこっちのビルだけだけどね。特待レッスン生だと使えるんだよ!しかも
「それなら、百合ちゃん、私たちと自主レッスンしない?」
「えっ!いいんですか!?」
「うん、実は今日、太田さんが8階の801を押さえてくれてるんだけど、あそこはちょっと広いから。あと、百合ちゃんのキレキレなダンスも久しぶりに見てみたいし。」
「えっ、百合ちゃんってそんなにダンス上手いの?」
「うん、一度見たけど、すごいよ。いろはも見たら驚くよ!」
「えへへ……。なんか照れます……。」
「じゃあ、行こうか。早めに着替えてレッスンに入った方がいいから。」
「えっ、おに……雨東先生もレッスンするの!?」
「俺は見学メインだけど、簡単なところは一緒にやって、ちょっと身体を動かそうかなって思ったんだ。」
「なるほどね。じゃあ、一緒にウォーミングアップとかは頑張ってみようよ!」
「そうだな。三人ともよろしくね。」
思わず、百合とも一緒になったけど、未亜がいうようにあのキレキレのダンスは楽しみだな。
三人で4階に上がる。考えてみれば俺がこっちに来るのは初めてだ。ビルの案内板に確かに大崎健保の検診センターって書いてある。ここで来年健康診断を受ければいいんだな。
更衣室で着替える前に4階にある大崎スタジオ&アカデミーの事務所へ立ち寄って、801の利用者に百合の名前を追加してもらう。予約したタレント、つまり今回だと未亜が一緒に行って、入館証を提示すれば追加が可能だそうだ。
更衣室で着替えを済ませ、三人が出てくるのを待つ。更衣室の前にフリースペースがあって、ウォーターサーバとか飲み物の自販機があるのは変わらないんだな。
「おまたせー!」
「じゃあ、案内するね。」
「早緑さん、よろしく。」
さあ、いよいよレッスンの見学だ!
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