第134話●家具を買いに行こう
紅白の出場が発表された翌日、火曜日も普通に授業は1限から。火曜日の「現代のマーケティングリサーチ」はみんながそろっている授業だ。
いつものように未亜と並んで席に座る。前にはやっぱりいつものように彩春さんと朋夏さ……あれ?今日は彩春さんの隣に華菜恵さんが座っている。朋夏さんはもう一つ前に座って……えっ、隣に慧一!?そういえば、昨日もあとから来た慧一は朋夏さんの隣に座っていたな。これはもしや。でもあの二人なら付き合い始めたら公開しそうだから、まだお互いに気になっている段階なのかもしれない。明日も様子を見てみよう。
そんな気づきのあった火曜日を経て、家具を買いに行く水曜日になる。今日はみんなと一緒の授業ではなかったけど、みんなで食べたランチ、席に座った並びは、やっぱり慧一の隣に朋夏さんがいた。昨日のランチもそうだったんだよね。考えてみると先週くらいから隣に座っていたような気がするから誕生会の前の週にでも二人でデートでもしたかな?これはきっとそうなんだろうなあ。今日のドライブで未亜に話してみよう!
3限の授業が終わったあと、大学の近くにあるジパングレンタカーまで一緒に行って、そこから二人でレンタカーに乗って、春日部へ向かう。出発して早速、未亜に気がついたことを話してみる。
「そうそう、今日、ちょっと気が付いたことがあるんだ。」
「えっ!なになに?」
「うん、大学で授業を受けるとき、最近、慧一と朋夏さんが並んで座って受けているんだよね。」
「えっ!?」
「あとね、いままでランチの時って、慧一は幸大と並んで座ることが多かったんだけど、昨日も今日もランチの時、慧一と朋夏さんが二人で並んで座っていた。」
「あっ、そういわれてみれば!もしかして、つきあい始めたのかな?」
「うーん、つきあい始めたっていう空気でもないんだよね。たぶん二人だけで一緒に遊びに行ったりはしていると思うんだけど。」
「お互い意識しあっている感じかー。なにか手助けしてあげた方がいいのかな?」
「いや、変にこちらからアクションしないほうがいいとおもう。慧一は決めるときには決める奴だからさ。ただ、アクションがなくて悩んだとき、慧一は俺、朋夏さんは彩春さんと未亜に相談する可能性が高いから、なにかあったら共有しようか。」
「うん、わかった!そうしよう!うわー、上手くいって欲しいなあ。」
「本当だよな。」
ほかにも最近あったことを話しながら車を進めていく。
岩槻のインターチェンジで高速を降りて、16号を走り、匠向原の駐車場に車を止める。店内に入るとすぐに案内され、山西さんというアドバイザーが付いてくれた。いまある家具と置く予定の場所をあらかじめスマホで撮って、それぞれの寸法を入居時にもらった見取り図のコピーに記入して持っていったのだけど、そこまでする人は少ないらしく、山西さんに感心されてしまった。
まずは山西さんの案内で店舗全体の説明を受けつつ、ざっと見て回りながら好みなどをヒアリングされていく。二人とも割とシックなデザインが好きだったことが今更判り、好みが似通っていたことも嬉しい。結局、テーブルと椅子がきちんとしたものでこれは買い換える必要はないという判断となり、それにあわせて、ほかの家具のデザインも選ぶことにした。テーブルと椅子はしっかりと二人で選んでおいて良かったなあ。
「主目的はダブルベッド一式を二式と食器棚を3メートル幅に入る感じで1台か2台です。あとは予算の残額とデザイン次第で二人で座れるソファ、できるだけ大きな家具調こたつ、テレビ台、あとは私の部屋に置くパソコンデスクですね。」
「ご予算感は?」
「とりあえず100万円くらいですが、いいものがあればもう少し出します。」
「判りました。」
昨日予算感を話し合って、せっかくだからちゃんとしたものを買おうということで、二人で50万円ずつ出し合うことにした。ただ、個人的にはデザインと機能面をしっかり妥協することなく選びたいと思ったので、貯金からあと50万円は出すつもりでいる。未亜が早速小声で話してくる。
「ねえねえ、予算100万じゃないの?」
「高校の頃からこういうときのために印税とかを貯めた貯金があるからさ。いいかっこさせてよ。」
「もう……。うんわかった。圭司に任せるよ。でも、私もちゃんと用意があるからね。予算感がキツかったらいってよ。」
「うん、そのときはすぐ確認するよ。」
やっぱり未亜も予備費みたいなものがあったか。うちは二人とも考え方が似ていて、楽だなあ……。
まずは一番大事なベッドを見せてもらう。シングルとダブルしか知らなかったのだけど、それよりも大きいクイーンサイズとキングサイズがあるそうだ。
「ダブルって結構狭いな。」
「うーん、そうだね。」
「拝見しているこの間取りでしたら、シングルベッドの
「そうしたら洋服ダンスはいまほとんど使っていないのでシングルベッドと一緒に実家へ戻します。こちらの部屋はいかがですか?」
「こちらはそのままシングルの代わりに180cmのキングサイズが入りますが、洋服ダンスの開閉と取り出しが少し辛いので、160cmのクイーンサイズがよろしいかと。」
「普段は圭司の部屋で寝るから私の部屋はクイーンでいいんじゃないかな?」
「うん、そうだな。」
「ありがとうございます。両方ともテーブルなどと似たようなデザインがあります。えーと、こちらですね。展示はキングサイズだけですが、デザインはそのままで幅を20cm狭くしたものがクイーンです。隣はフレーム下部に引き出しが付いています。引き出しは横幅の半分ほどのスペースになっていて、片側のみです。組み立てるときに左右を選べるのでどのようにおいても対応できます。当店のベッドフレームとしては安価な部類になりますが、両方ともデザインはシンプルながら、寝たまま手が届くところに時計などの小物類が置けるスペースやスマホ充電用のコンセントが付くなど、機能面もしっかりしています。もちろん耐久性は高いです。」
「このデザインで引き出し付きの方がいいんじゃないか?」
「うん、いいね!」
「じゃあ、これでお願いします。」
「こちらはベッドのフレームになるのであとはマットレスですが、キングサイズもあるものですとこちらが売れ筋です。もっと高いものや安いものもあるのですが、先ほどのベッドのデザインや質の高い睡眠の確保を考えると当店としてはこちらをお薦めします。」
「少し横になってみてもいいですか?」
「はい、大丈夫です。両隣もよろしければお試し下さい。」
マットレス一つとってもけっこう寝心地が違う。結局お薦めされたものが二人とも一番しっくりきたのでキングサイズとクイーンサイズで一つずつ選択する。ベッドはいい買い物が出来た。つづいて食器棚を見る。
「類似のデザインですとこの一角にあるものが良いかと。」
「どれがいいかな。」
「うーん……あっこれいいんじゃないかな。シンプルだけど落ち着いていて、ほら上は開き戸だから掃除もしやすい。」
「えっと、幅は1m20cmか。問題ないな。鍵もあるから地震で勝手に開くこともなさそう。」
「同じデザインでレンジと炊飯器が置けるのもあるね。こっちは少し長めなのかな。」
「1m80cmだな。両方あわせて3mだからちゃんと入る。この二台をセットで使うと良さそうだな。すみません、この二台でお願いします。」
「かしこまりました。えーと、ここまででだいたい税込み80万円くらいですね。」
「まだ大丈夫そうですね。」
そこからソファー、テレビ台、家具調こたつ、書斎に置くデスクトップパソコン用の机と選ぶ。バラバラのメーカーでもデザインを選んでいくと似たような感じのものもあって、面白い。
「合計で140万円くらいですね。」
「判りました。それで大丈夫です。」
「では、在庫を見て参りますので、こちらにおかけになってお待ちください。」
「……二人で使うものだからちゃんと半分ずつだよ。」
「えっ。そこはいいところ見させてよ。」
「うーん。わかった、そうしたら圭司の使うパソコンデスクは、日頃家のことをいろいろとやってくれているお礼として私からプレゼントする。これは譲らないからね。」
「未亜……。判った、ありがたく受け取るよ。」
「うん!わかればよろしい!」
そういって二人で見つめ合って笑った。本当にいい人とお付き合いできているよ……。本当に嬉しいなあ。
しばらくして山西さんが戻ってくるとどれも倉庫に在庫があるそうで、購入を決定する。支払いはYakutenカードで。あとは明日にでもお互いネオン銀行の共用口座に個人口座からお金を移しておくということにしている。
おととい確認したときに宛先は入居の時と同じで太田さんの名前にしておいて欲しいといわれたので、太田さんの名前を書いている。購入した名前と配送受け取りの名前が違うから訳ありなのは向こうも気がついていたとは思うけど、おくびにも出さないのはさすがプロだった。家具が来るのが楽しみだ!
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