第二部 その先への第一歩

第五章 新たなる始まり

第072話○2回目の履修登録

 圭司からのキスを初めて受けて、二人で抱き合いながら泣き、そして再び二人で寝てしまった。


 ふと目が覚めると既にお日様が高く昇っていた。びっくりして時計をみると12時、今日は16時からのレッスンしかない日で良かった。あわてて圭司を起こし、お風呂にさっと入って、圭司がお風呂に入っている間に朝昼兼用のブレックファーストを作った。


 そして、圭司とお互いの思いを確認したその日は大学の履修登録が始まる日だった。


圭司「よし、ブレックファーストも食べたし、履修登録をやってしまおう。」

未亜「そだね。忘れるとまずいからね。」

圭司「じゃあ、例の講義情報雑誌ガイドブックを取ってくるよ。」


 そういうと圭司は自分の部屋に戻って、春学期にも大活躍した講義情報雑誌ガイドブック試験対策号アンチョコを持ってきた。


圭司「この二つを組み合わせて、基盤教育科目ぱんきょうはできるだけ負荷の少ない授業を選択しよう。いまの二人の仕事のボリュームだと専門科目を頑張ろうとすると基盤教育科目ぱんきょうまで負荷が高くなると絶対に手が回らない。専門科目はお互いやりたいことのメインのはずだからそっちはちゃんと取りたいものを入れていこう。あとは未亜の仕事のことを考えると4限と5限はできるだけ避けた方がいいよな。あとライブとかイベントとかを考えると土曜日の科目も避けるべきか……未亜、どうしたの?」


 私は目が点になってしまった。


未亜「……圭司、大丈夫?無理してない?」

圭司「えっ?なにが?」

未亜「いや、いまメンタルボロボロのはずなのに……。」

圭司「それは未亜のおかげだよ。」

未亜「……えっ。」

圭司「だって、嫌悪されるような過去が判っても支えてくれて、泣きたいだけ泣かせてくれて、こんなにもボロボロで情けない姿を見せても微動だにしなくて、その上、俺だけのために早緑美愛としてあんな素晴らしい歌を聴かせてくれた。この先どんなことがあっても絶対に未亜は俺のそばにいてくれるって、心の底から思わせてくれた。二度寝から起きたらなんか『あんな最低な奴らのために未亜と俺の未来を無駄にさせてなるものか』って、頭の中がそんな感じになった。」


 私は思わず涙ぐんでしまう。


未亜「……そか……私のやったことは……本当に圭司のために……なったんだね……。」

圭司「うん、ありがとう。……二人で一緒に歩んでいこう。」


 私は黙って頷くことしか出来なかった。


未亜「……うん、もう大丈夫!私もノートパソコン持ってくるね!一緒に履修登録しよう!」


 私は少し安心した。でも、もしかしたら、いまは私との関係が一つ前に進んだからテンションが上がっていて、なんとか押さえ込めている部分もあるのかもしれない。しばらくはメンタルのアップダウンが激しくなりそうだからしっかりと見ていかないと、だよね。私が出来ることも一つずつやって、ライブツアーで支えてくれた圭司を今度は私が支えて。二人で支え合って前に進んでいきたい。


 履修登録の画面を一緒に開くと強制的に割り当てられる語学は、フランス語は一緒だったけど、英語は分かれてしまった。そこで例の作戦を圭司に伝える。


圭司「英語の時間分かれちゃったね。」

未亜「実は英語の割り当てを変えることが出来ます!」

圭司「前にもそんな話してたよね?どうやってやるの?」

未亜「私の英語が割り当てられている金曜2限に必修の『マーケティングデータ分析入門』が入っているよね?」

圭司「入っているね。」

未亜「これは必修で、しかも基本的に一年のうちに取らないといけないでしょ。ほかにも開講している時間はあるけど、その時間帯に別の授業を受けるのでここで取るしかない、英語に関しては圭司の割り当てと同じ時間なら大丈夫、って申請するの。」

圭司「そんなこと出来るの!?」

未亜「うん、ちょっと待ってね。」


 私は履修登録のホームページを操作して、語学の変更申請をする画面を出した。


未亜「ほら、ここで出来るよ。」

圭司「へー!すごいな、こんなの知らなかったよ。」

未亜「春学期の登録をしているときにたまたま見つけてね。それがいま役に立ったのです!」

圭司「語学もそうしたら一緒だね。」

未亜「うん、私の方で申請しておくね。」


 そのあとはまず自分の取りたい専門科目を出し合った。ほぼ一緒だった上に取れる単位上限はまだ余裕があったので、前期でそれぞれ別に取ってしまった流通論と現代の経営以外の専門科目は二人で同じにすることが出来た。


 そのあと、空いた時間に基盤教育科目ぱんきょうを入れていった。その結果……。


未亜「見事に4限と5限は開けられたね!」

圭司「取りたい専門科目が3限までに集中していたっていうのも運も良かったよ。」

未亜「そだねー!」


 秋学期も頑張る。圭司と私の未来に向かって一歩ずつ進むんだ!

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