第018話○インタビュー掲載と友人たちの感想

 インタビューのあと、私は引き続き、ツアーに向けてレッスンを頑張っている。圭司も連載を確実に進めながらアニメ化プロジェクトの打ち合わせに呼ばれているようだ。もちろん二人とも大学の授業はきっちりこなしていく。日々、二人で前に進んでいる感じがして心地よい。


 そして今日は6月9日。いよいよ私たちのインタビューが載る週刊KAKUKAWAの発売日。

 昨日の夜9時が私たちの交際に関する情報の解禁時間で、所属事務所の公式サイトにニュースリリースとして、交際に関するお知らせが掲載された。雨東晴西公式サイトにもほぼ同じ文章が載っている。同時に週刊KAKUKAWAのウェブサイトには「先出し週刊KAKUKAWA」と称して、インタビューの冒頭が公開された。「階段教室から始まる関係」というすごいサブタイトルが付いている。


 私は知らなかったのだけど、圭司によると事務所のホームページも雨東晴西公式ホームページもアクセスがすごくて見られなくなったらしい。さらにつぶやき系SNSのTwinsterで全世界トレンド一位に「雨東先生」、二位に「恋人関係」、六位に「早緑美愛」がはいったそうだ。報道の主体はやっぱり雨東先生かれだけど、こんなにも反響があるとは思わなかった。

 しかも朝のテレビは私たちの交際を芸能ニュースのトップで報じている。


「『雨東晴西熱愛発覚、お相手はアイドル』か……。これはすごいな。」

「……ちょっとびっくりだね。」

「書店大賞ノミネート作家とアイドルという組み合わせは目新しいし、さらにみずから関係を公表することはなかなかないからインパクトが大きいんだろう。」


 お父さんとそんな会話をする。大学へ向かう途中、RINEのメッセージ着信音がしたので見てみると太田さんから「問い合わせがすごい」というメッセージが来ていた。


 大学に着くといつもの教室のいつもの場所に友人たちが座って話をしている。圭司の姿も見える。最初はなかなか友人の出来なかった私だけど、圭司の協力もあって、だいぶ親しい人が出来た。特にいまここにいる飯出いいで朋夏ともか岡里おかざと彩春いろは升谷ますたに慧一けいいちくん、柳内やない幸大こうたくんの4人はほかの授業もけっこうかぶっていて6人で仲良くしている。


「未亜、おはよう!ねえねえ、これ見た?」

「おはよう彩春、何の話?」

「ラノベ作家の雨東がアイドルと交際だって!」


 もちろん、友人たちは圭司が雨東晴西であることも私が早緑美愛であることも知らない。


「へ、へえー、そうなんだー。みんながそんなに知っているんだね。」


 ちょっと言葉に詰まったけど、冷静に返せた……はず。


「そりゃ、書店大賞ノミネートでいま話題のラノベ作家だよ。知らない人の方が少ないとおもうなあ。」

「そういうのに疎い幸大が知っているくらいだもんな。」

「そういう慧一は知ってるのか?」

「もちろん、いま出ている3巻全部持ってるぞ。コミカライズも買ってある。実は新宿のサイン会にも行った。」


 えっ!升谷くんってあのサイン会いたんだ!?仲良くなる前だったからなあ。


「こんな感じで今朝からこの辺みんなで盛り上がっちゃって、ねー、朋夏!」


 彩春と朋夏は私も含めて三人で親友関係だけど、この二人はすごく仲が良くてたまに私だけ話題に入れない空気感になることがある。最初は高校の同級生とかかと思ったんだけど、彩春の実家は岩手、朋夏の実家は宮崎だっていってたから大学に入ってから意気投合したんだろうな。


「うん!私は早緑様も雨東先生も大好きだから大好きな二人が付き合い始めるなんて本当に嬉しくて……。」


 朋夏って、雨東先生かれだけじゃなくて、早緑美愛わたしも好きなの!?しかも様を付けて呼ぶの!?私はびっくりして思わず聞いてしまった。


「朋夏、早緑美愛も好きだったんだ!?」

「あれ?知らなかった?早緑様のCDは全部持っているよ。中野のライブはチケットが取れなくて行けなかったのが本当に残念だったけどそれ以外のライブはかなり行っているんだ!あと早緑様の曲は全部カラオケの十八番だし!」


 まさかのライブガチ勢!?朋夏とカラオケ行ったら、私が早緑美愛だってばれそうだから絶対に行かないようにしよう……。


「それにしてもアイドルと同棲なんて男としてはうらやましいよな。高倉、そう思わない?」

「そうだなー、まさかラブコメみたいなことが現実リアルでも本当に起こるとは思わないよな。」


 圭司、それ、自分の身に起きたことに関する感想だよね?多分みんな客観的な感想だって捉えているけど!まったく、上手く逃げるなあ。

 それにしてもやっぱり「雨東先生がアイドルと交際」なんだね。私の知名度はまだまだ圭司には及ばないなあ。隣に並び立てるように頑張らないと!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る