第54話 肉ダンジョン
この星には、通称肉ダンジョンという、ダンジョンがあるらしい。
正確には、トーミーダンジョンと言うらしいが、誰もその名で呼ばない。
なんでも、このダンジョンは、
モンスターを倒すと、肉とかがドロップするらしい。
現在ダンジョンランキングで3位という、好成績を治めている。
実はこのダンジョンは、極めて重要なダンジョンなのである。
昔、人類とダンジョン側が、激しく覇権を争っていた頃、
今から300年ほど前、ダンジョンの脅威による融和ではなく、
ダンジョンの経済による融和、共存共栄をおこなったのが、
この肉ダンジョンである。
ここのダンジョンは、かなり特殊でモンスターを倒すと景品が出るが、
止めを刺してしまうと、何もでない。
これは、地元トーミーギルドとの約束事で、取り決められている。
冒険者も、景品が出たら、戦闘終了、止めは刺さない。
出てくるモンスターも弱く、武器も棒又は素手推奨というレベル。
超初心者用のダンジョンで、一攫千金は望めないが、
とりあえず、命の危険が少なく、飯の当てになると、
子供から引退した冒険者などに、人気のダンジョンである。
こうなったのには、勿論訳がある。
同期であるダンジョンマスターが、人類との戦闘で殺されていくのが、
釈然としなかったからである。
本来、悪辣な貴族、上級市民への鉄槌を下すためにあるはずなのに、
自分らは安全なところで、見ているだけ。
逆にダンジョンは脅威であり、守るためと称し、税を上げる始末である。
ダンジョンマスター・ヴィアンドは賭けに出た、
トーミーギルドとの直談判で約束事を決めた。
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