第34話 クワス

俺が「クワス」と言ったら、2人が固まった。


 「今、君はクワスと言ったのかね?」


 「はい、美味しいクワスだと」


 「クワス、なつかしい言葉を聞いた」

 「なせこれがクワスだと、わかったのかね?」


 「俺の元いた星の、確かロシアではクワスが常飲料だったのと」

 「それに前に、何度か飲んだ事があったので・・」


 2人は顔を見合わせた、信じられないという顔つきだった。


 「ちなみに、元いた星の名は?」


 「地球です」


 しばらく沈黙の時間が流れた。

セルゲイさんは、うっすら涙をながしいるようにも見えた。


 「あの・・協会からの連絡でも、セルゲイさんの同僚みたいだから、よろしくね。

と書かれていたと思うんですが」


 「え・・、そうだったのか・・」


 それからは、セルゲイさんと打ち解けて、色々なことを教えてもらった。


 なんでも独ソ戦において、セルゲイさんは、軍人をしてたらしい、

それは言葉では表せないような、血で血を洗う、すさまじい戦いだったらしい。


 森の洞窟に、怪しい黒い石版があるという報告を受け、

調査をしていたら、いつの間にか倒れていたらしく、

気がついたら、ダンジョン協会に召還をされていたと。


 戻る方法を、色々模索してみたが、76年たった今もできない、そうな。


 こうして俺は、セルゲイさんとの別れを惜しみつつ、協会に戻った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る