第27話 ツンデレヒロイン爆誕!

「ん……、ここはどこ………?」


 目が覚めても私の周りは全部真っ暗で、一瞬私は困惑する。さっき、あの子が代わってくれるって言ってたところから全く記憶がない。ここで、休んで良いならもう少し眠っておこうかな。そう思っていると目の前に大きな映像が映し出された。


「あれは……、私…………?」


『ほら、水蓮寺さん。みんながあなたのことを知りたがっているわ。黒板に名前を書いて自己紹介をしてあげて。さぁ、教壇に上がって上がって!』


『……………』


 人生で初めて客観的に見る水蓮寺遥は、私が何度もやり直してきた自己紹介の場面に差し掛かっていた。ここは結局どうやったら良かったんだろう? そう思いながら見ていると、私の姿をした少女は無言でチョークを手に持つと、殴りつけるように勢いよく自分の名前を刻んで前を向き直す。自信ありげな余裕たっぷりの笑顔。その表情に私を含めた全員が釘付けになっていた。


『私の名前は水蓮寺遥。今日から転校してきたからとりあえず宣言しておくわ! 私は、ここを最高に楽しい学校に変える。だからアンタ達、そのために全面的に協力しなさい! いい!? 分かったら返事は!?』


『『『はいっ!! 水蓮寺さん、よろしくお願いしますっ!!』』


『いいわ……。これくらいしてやっと面白くなるのよ………』


 全クラスメイトを一瞬で自身の個性で圧倒すると私は心から込み上げる喜びを隠しきれないように笑う。これは……、一体どうなってるの? あまりにも自分と違う横暴な態度に私は気分が悪くなる。しかし、その間にも画面内の私は悠斗に向かって近づこうとしていた。


『よう! 今の自己紹介凄かったな。転校初日でクラスをまとめさせれるなんて遥は才能があるんじゃないか? あ……、あと俺さっき遥とぶつかっーーーー』


 多少ざわつきが残る教室内を何かが弾け飛ぶような衝撃音が通り抜ける。嫌な予感がした私が伏せていた顔を上げると、その不安を具現化したように悠斗がビンタされている映像が映し出されていた。


『いきなりぶつかっといて、その態度はなに!? あ、あと私の名前をそんな気安く呼ばないでよ! アンタみたいな奴なんかから名前なんて呼ばれたくもないわ!!』


 終わった………。私の人生はもう、終わりました……。私はまたがっくりと力なく倒れる。一瞬、誰かが笑うような声がしたが、私は無理矢理目の前の現実から逃げるようにまぶたを閉じていた。

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