第39話 告白場所探し1
少し天気が崩れ始めていたので、俺と先輩は先に外の施設から回ることにした。まず来たのはイベントで使う用具を収納するための倉庫室だ。先輩は一応生徒会長としての確認業務も行っているらしく、倉庫内に入って備品をチェックしている。俺は先輩の作業を邪魔しないようにしっかり倉庫の扉を抑えて待ち構えていた。
「ねえ、一条君。こことかは誰にも見つからないで良いんじゃない? ラブコメだと良い感じに閉じ込められて邪魔されなさそうだし」
「ダメです。確かに倉庫に入れば密室状態にはなりますけど、告白する直前で開けられてしまうと思います」
「そうね。一条君も水蓮寺さんと閉じ込められていい雰囲気になった途端、美琴ちゃんに見つかったみたいだし」
そう言いながら先輩が振り向いた瞬間、俺は急いで扉から手を離す。石立の奴め、先輩にもあのことを言いふらしてたのか……。石立にいつか仕返しをしようと俺は心に誓った。
「もう備品の確認は済んだでしょう? 次の場所に行きましょう!」
「はいはい……、今行くわ……」
俺はすぐさま次の候補地へと足を向ける。先輩は焦っている俺を見て無邪気に笑い声をあげた。
次に来たのは人通りの少ない校舎裏だった。先輩は少し壁によって死角を探している。俺は他の施設の位置と導線を把握してから先輩のもとへ歩み寄った。
「ここも割と良さそうね。いつも全く人が通らないし、校舎裏って告白場所のイメージが強そうじゃない?」
「通常時ならいいかもしれないですけどイベントの時はここを通って倉庫に行く人がいるんでやめた方がいいかもしれないですね」
「それだったら逆に屋内のほうが良さそうな気がするわね。校舎内で二人きりになれて告白できる場所……、思いついた! 一条君、一緒に来て!」
先輩はいきなり声を張り上げると俺の腕を掴みながら駆け出していく。前を見据えて一直線に走る先輩は今まで見た中で一番楽しそうだった。俺は先輩の姿がありえないほど煌びやかに輝いているように見えた。頭の中の酸素が失われると同時にその光の印象が焼き付いていく。そして気が付いたときには俺は校舎内の最上階まで到達していた。
「一条君、準備は良い……?」
先輩は息を弾ませながら扉に手を掛ける。さっきまで厚く覆われていた灰色の空は綺麗に澄んだ青空に変貌し、ここが告白の地であることを示すように屋上には光が溢れていた。
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