第33話 主人公補正持ちのバカ2
「お前、もしかして俺が好きになった人のこと知ってたりするのか?」
悠斗は俺が呆れているのにも一切気づかず自分の状況を一発で当てた俺に恐れおののいている様子だった。俺はさも普通のことを話しているような素振りで、
「知ってるも何もあの三人のことだろ。お前の近くにいる女子なんてそれ以外にいないしな」
おそらく悠斗の候補は水蓮寺、先輩、桐葉の三人だ。とりあえず悠斗から状況を聞いてそこから作戦を立て直すことにしよう。
「そうだ俺が好きな人っていうのは…………。早希さん、桐葉ちゃん、石立の三人だ」
「あ、あぁ、そっちだったか」
「一条、お前予想と違ってびっくりしただろ?」
俺はジュースをむせながら頭の中を整理する。そういえば石立にも俺は壁ドンされていたな。髪色が普通だったせいか全然気にしてなかったがあれは石立もヒロイン候補になることの予兆だったか……。水蓮寺に関しては後から何かしらのイベントがあって仲良くなるだろう。となれば今のヒロイン候補は先輩、桐葉、石立、水蓮寺の四人になる。これはなかなか面倒くさくなりそうだ。
「それで、悠斗はどうしてその三人のことが気になるんだ?」
「いや、特に意味なんかは……」
俺はこれ見よがしに恥ずかしがる悠斗の顔を食い入るようにみる。これはよっぽどもの凄いことが起きていそうだ。俺の最近の体験を軽々と超えてくるような凄いこと。聞きたくないが、今後のためにも聞いておかなければいけない。
「何かがあったんだろ? 教えてみろよ。普通に生活していたらいきなり三人のことを好きになるわけない。三人が好きになるような特別なことがあったんだろ?」
「そうなんだよ! やっぱり一条には全部お見通しなんだな。……分かった。お前にはしっかりと話すよ。三人のことを好きになった理由を全部な」
この言い方は俺にとったら相当危険かもしれない。嫉妬心で悠斗に殴り掛からないように俺は心の準備を念入りにしておこう。先輩と来た時と同じように平凡なファミレスのテーブル席は一種の修羅場と化していた。
「俺実は……、最近三人とよく目が合うんだ」
目が合う? これはどういうことだろう。単純に俺が目の前のこいつに馬鹿にされているのか、それとも俺の知識が欠如しているのか。俺は一応悠斗に確認をとってみる。
「目が合うっていうのは……、隠語的ななにかのことか?」
「いや、文字通り目と目が合っただけだがそれがどうかしたか?」
「……………………」
なるほどどうやら俺は悠斗になめられているらしい。俺は悠斗の突飛さに再び呆れながら速やかにこの場を去ることを決意した。
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