第195話 暴威の力
底知れない狂気に邪気眼と呼ばれる、冥獄眼。
その力は未知であるが、やることは変わらない。
力でねじ伏せてやると、ジオは一足飛びで駆け、正面から向かう。
対して、ジャレンゴクは嬉々としながらジオを迎え、新たなる地獄を召喚する。
「んふ♡ もし寒かったら、友情の絆で温かくするんだよ? できるよね? 友達なんだから」
「ッ!?」
「極寒地獄ッ!!」
ジオの周囲のみに起こる急激な温度変化及び凍える冷気。
吹き荒れる極寒の風が突如ジオの全身を襲い、その肉体を徐々に凍らせ……るかに見えた。
「うお、お、お、俺が凍……るわけあるかぁ! こんな涼しい風ぐらいでよぉ!」
「おおっ!?」
ジオは猛りながら構わず突き進み、全身を自身の荒ぶる魔力で覆い、極寒の地獄を跳ね飛ばす。
一瞬でジャレンゴクの懐に飛び込み、ジャレンゴクも反応が遅れた。
ジオは、ガラ空きのジャレンゴクの肉体めがけて、容赦ない渾身の拳を叩き込む。
「ジオソーラープレキサスブロー!」
「うひゃっ!? お……ごっ……」
腰ごと曲がる勢いでねじ込まれる鳩尾への一撃。
「お、ぴょ……お、れろ……れろ……あは……」
悶絶し、胃液を激しく吐き出すジャレンゴクに対し、ジオは手を緩めない。
「くはははは、まだだあ! アバラ……全滅しろ! リブボーンバースト!」
「おぎゃ! は、ぎゃが♡ い、痛い♡ いたいいいいいいいい♡」
左右の拳でジャレンゴクのアバラ全てを粉砕するかのように拳を叩き込み、グシャグシャと骨が砕ける音、潰れる肉の音が響き渡る。
胃液どころか、激しく血も吐き出し、その返り血を浴びながらジオは残虐な笑みを浮かべる。
「おい、どうした? 地獄めぐりはまだ終わらねえぜ?」
「うひ、う、ヒ? ひ、いだいィ……」
「痛みがあるうちはまだ生きている証拠! まだ元気じゃねえかッ! ルアアアアアアッ!!」
激痛にもがくジャレンゴクに対し、ジオはジャレンゴクの頭を無理やり掴み、そのまま膝蹴りを叩き込む。
鼻を、頬骨を、人中を、顔面中を崩壊させるかのように。
殺す気で。壊す気で。再起不可能なダメージを与えるため、ジオは連続で膝蹴りを間髪入れずに何度も叩き込む。
「お、おい……あ、あれ……ぼ、暴威の破壊神だろ?」
「暴威の破壊神が……あのジャレンゴクをボコボコにしている!?」
「つえー……あ、あいつ、やっぱりメチャクチャツエー!」
手も足も出ない。それは周囲の者たちからはそう見えただろう。
ジャレンゴクの能力も狂気も一切構うことなく、容赦ない凄惨な攻撃を繰り出すジオに、魔界の民たちは戦慄していた。
だが、一方で……
「……ふむ……マシンはどう見る?」
二人の戦いを見ながら、ガイゼンはどこか訝しむ様子だった。
「……リーダーの攻撃は強大……ダメージも凄まじいだろう……が……不気味さが拭えない」
「じゃのう……リーダー自身も相手の実力や動きを探るため、『回避されることが前提』の大振りの攻撃を繰り出して相手の反応を見ようとしておるのじゃが……あのジャレンゴクが普通に全部くらってしまっておるので、リーダーも逆に戸惑っておるわい」
マシンもガイゼンと同じ思いなのか、傷ついている若い魔族たちを介抱しながらも、その目は二人の戦いから目を離せないでいた。
「えっ? マシン、どういうことなんで? リーダーが……どう考えても強いじゃん!」
「チューニ……確かに……そう見える……が。それでもやはり、あのジャレンゴクという魔族があの程度とも思えない」
仮にも相手は、五大魔殺界の一人。いかにジオが強者とはいえ、この程度のはずがない。
それは当然、実際に戦っているジオも感じていることでもあった。
「……うるああああ!」
「げふっ♡ しゅ、しゅごい……これ、しゅごいよぉ!」
「けっ……変態か? ……まぁ、もっと欲しけりゃくれてやる!」
まさか、全部攻撃を受けられるとは思わなかった。
瞳の力や身に備わった身体能力で回避するなりカウンターを仕掛けるなどをされると思っていたジオだったが、自分の攻撃全てを受けられて、ガイゼンの言う通り少しだけ戸惑っていた。
顔面の骨を無残なまでに粉砕し、アバラも全て折り、その下の内臓に至るまで崩壊させている。
(おいおい……何を企んでやがる……それとも、ここから一発逆転の能力でもあるのか? でなけりゃ……自分が痛めつけられて、ここまで狂ったように笑えねえよな……)
これほどの痛みを受けながらも、意識を失わずにただ気持ちの悪い笑みを浮かべて喘いでいるジャレンゴクに手ごたえのなさを感じていた。
(ガイゼンですら知らなった……冥獄眼……今のところ、炎、針、吹雪を召喚してるが……そんなもん、魔眼に頼らずに魔法でどうにでも出せるもの……その程度であれば、あれほど恐れられるはずがねえ……つまり、あの眼の本質はもっと別のところにある……俺にこれだけやられても笑ってられるぐらいの……)
ジャレンゴクがこの程度であるはずがないのなら、これもジャレンゴクの何かの手なのかもしれない。
そう考えたとき、気になるのは、やはりジャレンゴクの眼。
(なんか特殊な能力……さて、どうする? 戦争なら相手の奥の手を出させずにぶっ殺すのが鉄則だろうが……喧嘩や勝負で……『こうしていれば勝てた』なんて言われるのもつまらねえ……相手の奥の手全部出させたうえで完膚なきまで叩きのめすから……勝ったって言えるんだ……)
何か奥の手があるのなら、それを出させる前に潰すか、それとも引きずり出したうえで叩き潰すか?
その二択がジオの頭に過るも、答えは数秒で出た。
(もし、今の俺のタコ殴りぐらいじゃまだ余裕があるってなら……もっと踏み込んでみるか……奴の能力がカウンター系とかだったら、俺自身も危ねぇが……)
後者を取る。あくまで、相手の力を引きずり出したうえで倒す。
それなれば、相手が実力を出さざるを得ない状況まで追いつめる。
「よう、本当に死んだら、そんときゃ諦めるんだな!」
「ん~?」
「全部壊れろッ!」
全身に荒ぶるように纏わせていた魔力を、ジオは左腕に一点集中。
魔力を込め、凝縮し、その上で……
「ジオスパークッッ!! ……からの……」
本来は敵に向かって辺り一面ごとふきとばす黒い雷を、自身の左腕にのみ弾けさせる。
「へぇ……カッコいい~……うわぁ……黒い花火だぁ!」
顔を無残に潰れて腫らし、元の顔から原形をとどめぬほどになったジャレンゴクだが、それでも口元の笑みは収まらない。
それを叩きのめすかのように、ジオは左腕を構えて駆け出す。
「テラ・ジオブレイクッッ!!」
空気を唸らせながら駆け抜ける光速の突き。
黒い雷を纏って勢いと破壊力を増大させ、全てを破壊し消し炭にする。
「……お……おい!?」
「あへぇ♡」
文字通り、ジャレンゴクの胴体を容易く貫き、そして全身を完全に黒焦げにした。
――あとがき――
ひょっとして今日から仕事の人もいますかあ? ご苦労様です。更新です。
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タイトル変えました。
『勉強不足な魔法蹴撃士~勉強しながら最強の足腰で学園無双』
https://kakuyomu.jp/works/16816927862967571461
新作やる理由は気分転換踏まえて、別に上記でとは言いませんが、もしまた何か書籍化するようなことがあればそのときは「ポルノヴィーチっぽい女の子とか出しちゃえばイラスト書いてもらえるんじゃね?」というゲスい思惑があったりするためです(笑)
某所で「エロいからアウト」となったものですが、どうぞ~。
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