隣の部屋に住むお姉さんがエッチすぎる件

気絶しそうになった話をするお姉さん

　定期的に行われるGT杯、そのチーム分けが発表されたことで、参加者たちの中で喜ぶ者も居るだろうし落胆する者ももしかしたら居るかもしれない。

　気になっていた人、喋りたかった人、あまり関わりたくない人、色んな気持ちが交錯するだろう。さて、そんなチーム分けが発表されマシロと同じチームになった二人の反応はどうだったのか、それを見て行こうと思う。

「というわけでございまして、今度のＧＴ杯にマシロさんとセリーナさんの三人で出場することになりました」

　マシロのチームメイトで唯一の男性であるマイカー、彼も配信でＧＴ杯へのことを言及していた。登録者数三十万人をほこる有名配信者、ＧＴの方もかなりの熟練者であり、多くのキャラクターを使いこなし解説動画も投稿するということで実力は申し分ない。

：待ってました！

：マシロとセリーナ……ハーレムやな

：セリーナはともかくマシロって誰？

：おっぱいの大きなお姉さん

：ほ～

：ちな彼氏持ち

「あはは……」

　登録者数七十万人を超え、今も右肩上がりに登録者を伸ばしているマシロのことを知らない人はもちろん居る。それでもそんな人に対し即座に教えることが出来るのはつまり、やっぱりマシロは有名なのだと暗に示していた。

「マシロさんなぁ……僕も良く動画見てるよ。本当に上手っすよね」

　T0が最高ランクのGTにおいて、T2に位置するマシロの腕前は凄まじいものがある。T0やT1の人たちは頭がおかしいといわれてもおかしくないほどに上手なのだがそれでも、T2以上に位置するのはプレイ人口の１４％程度……それを考えるとマシロの実力がかなり高いものだと理解できる。

：俺も見てるけど上手だよね凄く

：そうだな……色々と凄い

：それな

：何見てるか良く分かるわ

：お前もだろ！

：悪いか！

：草

　いつにも増して賑やかなコメント欄にマイカーは苦笑した。とはいえ、マシロともそうだしセリーナとも初絡みになる。マシロは問題はなさそうだが、やっぱりもう一人のセリーナは色々と話を聞いていた。企業アタランテの問題児セリーナ、さてさてどうなるのかとマイカーは期待と不安を同時に抱えるのだった。

　そして、マイカーとは別にセリーナも出場の報告配信をしていた。

「今回マシロさんとマイカーさんの三人で出ることになりました……げへへ、あのおっぱいさんと知り合える機会を頂けるなんてありがたやぁ！！」

：開幕おじさんやめてもろて

：マシロ逃げて～！

：ステイしろ雌猫が！

：10000￥　いいぞもっとやれ

：割とマジで迷惑だけは掛けないように

：保護者いっぱいやな

：飼い主みたいなもんだ

　企業所属のVtuberであるセリーナ、そこそこ古株とも言える彼女のアバターは可愛らしい猫耳の生えた女の子である。しかし、まるで親父だと言わんばかりの欲望に染まり切った声に視聴者はいつも通りだなと思いつつ、マシロやマイカーに迷惑だけは掛けてくれるなと気が気でない。

「迷惑なんて掛けないよ！　信用してくれないなんて泣いちゃうにゃぁ～」

：いや……ねえ？

：先輩にも後輩にもセクハラする女が何を言ってるんだ？

：変なことで炎上とかはやめてくれよ。もう悲しませないでくれ

「一回も炎上してないし！？　ちょっと失礼すぎじゃない！？」

：誇れよセリーナ、それがお前の積み上げてきた信頼(笑)だ

「嬉しくない！！」

　ぜぇはぁと荒く息を吐くセリーナ、彼女は基本的にこうやって視聴者に揶揄われるのもまた持ち味の一つである。本人にそのつもりはなくても、煽り耐性が低い故にこうして玩具にされてしまうのだ。セリーナ自身は別にそれを不快に思っておらず、これも自分の在り方だと受け入れていた。

「でもさ、マイカーさんも上手いけどマシロさんも本当に上手だよね。切り抜きとか配信私もそこそこ見てるもん」

：上手よほんま

：野良で出会ったプロに撃ち勝ったりしたこともあるしな

：意外とマシロリスナー多い？

：おうよ見てるぞ

：いつもお世話になっています

：何にお世話になってるんですかねえ

：そりゃナニだろ

：えぇ……気持ち悪い

「……いやでも気持ちは分かるよ。あの体とASMRは凶器でしょ。私女だけどマシロさんと寝れると思うわもちろん性的な意味で」

：気持ち悪い発言はNGで

：マシロに伝えておこう

：マシロには彼氏居るだろいい加減にしろ！

：たか君なぁ……結構返事くれるから好き

：それな。リプ返してくれるんだよね

　基本的に他の配信者の名前を出すのはNGなのだが、こうしてマシロの話題である以上仕方のないことだ。たか君に関しては……う～んといった感じだが、まあいいかとセリーナは流す。

「サブチャンの寝起きドッキリ良かったよねぇ。おい男共、世の中にはあの体を好き勝手出来る男が居るんだぞ♪」

：やめろそれは俺に効く

：寝たのか……俺以外のやつと

：ガチ恋勢はSNSでもまだ発狂しています

：マシロの公認なんだから黙ればいいのにな

：あの二人のラブラブオーラ、このチャンネルで感じることは一生なさそう

：セリーナに彼氏……ヤバい、喪失感とかマジでないわ

：それな。逆に一生男が出来ないかもって不安になるくらい

「お前らその話題はやめろ！　私だって頑張れば男の一人や二人――」

：万年処女は黙ってもろて

「ああん！？　てめえチ〇コちょん切るぞクソがあああああああ！！」

　……とまあ、これが大人気Vtuberの一人であるセリーナだ。

　マイカー、セリーナ、この二人と一緒にマシロは戦っていくことになる。GT杯は基本的に一日だけ、それ以降の絡みは本人たちに委ねられるが果たして……どうなるか楽しみにしておこう。

『ああん！？　てめえチ〇コちょん切るぞクソがあああああああ！！』

　怒りの雄叫び、可愛らしい猫耳の女の子が放つには過激すぎる言葉がスマホから響き渡った。突然のことに俺と、そして隣に座っていた真白さんは目を丸くした。

「……おぉ」

「中々個性的な子ね……」

　引いている……ほどではないが、それでも女の子でここまでガッツリと口にするのはビックリした。それも生配信で、企業の看板を背負っているVtuberがである。とはいえこんな風に感情に任せて思ったことを口にしている姿は面白い。可愛い外面から放たれる汚い言葉はギャップというか、見ている側がクスッと笑ってしまうようなものを感じるからだ。

「どうですか真白さん、このマイカーさんとセリーナさんは」

「ちょっと不安はあるけど楽しい配信にはなりそうね。それに私、こういう子の扱いは得意かもしれないわ」

「ほ～」

　声質的に幼い印象だが……Vtuberに関して中の人詮索はご法度だが、たぶん中身はかなり若い人だと思っている。真白さんと同じくらいか、それとも少し下か……もしかしたら俺と同じくらいなんてことも考えられる。たぶんだけど、甘やかせるようにするのかなとも考えている。もしかしたら、会ったその日にお姉ちゃんなんて呼ばれたりすることになるのでは。

「それにしても、やっぱりたか君のことは結構広がって来たわねぇ」

「……そうですね。恐れ多いといいますか」

　朝におはようございますとか投稿すると多くのハートが付いたりするし、何人かの人が返事を返してくれる。今までになかったことで緊張してしまうが、それでも多くの人と繋がることが出来るのはやっぱり嬉しかった。

「赤色の投げ銭を連発されてオドオドしてたたか君は可愛かったわ♪」

「あれは誰でもそうなるでしょ！」

　赤色……つまり高額の投げ銭が何回も投げられたのだ。視聴する側の時は凄い大金だなと思ったり、羨ましいなとも思うことはあった。だがしかし、それを実際に送られる側になると、俺が最初に思ったことは無理をしないでくれという申し訳なさだったのだ。

「私も高校生の時はそんなだったわね。高二の時に誕生日配信で百万超えた時は気絶しそうだったもの」

「凄いですね……」

　高二となると三年前か、確かに学生の身からするとおっかなびっくりだ。

「収益はもっと前から出ていたからある程度お金に耐性はあったけど……うん、たか君みたいに申し訳なさは感じてたかしらねぇ」

　でもそれだけまだ学生だった真白さんに貢いでいた視聴者が居るってことか……ちょっと怖いと思うけど、案外この世界だとそれが普通みたいなところはある。

　それから少しばかりセリーナの配信を見てからスマホを机に置いた。

「たか君～♪」

　何もすることがなくなれば大好きな恋人が胸元に抱き着いてくる。

　真白さんを抱きしめ、彼女の頭をよしよしとするように撫でているとこんなことを俺は言われた。

「ねえたか君、たか君も自分のチャンネルを作ってみたらどう？　サブチャンネルの方でもいいけど、たか君がメインの生配信とか実況動画とか上げてもいいし」

「……う～ん」

　それは……ちょっと悩みどころさんだな。

「もうすぐ頼んでいたパソコンも届くから配信も同じように出来るわ。だからたか君がもし自分で配信とかしたくなったらいつでも言ってね？」

「分かりました」

「ふふ、夫婦揃って配信者かぁ……素敵ねあなた♪」

　まだ結婚してないし夫婦じゃないですけど……とは言えなかった。

「たか君大好きよぉ♪」

　こんなに嬉しそうな微笑みを見せられるとどうしても……言えるわけはないよね。

【あとがき】

GTの元ネタはエペになります。

さてさてどんな風に大会を書こうかなぁ……取り敢えずどっかの誰かさんをボコす展開は既に考えています（え

真白さんが得意とするキャラ、普段良く使うキャラはエペでいうどのキャラになるか当てられる人は居ますかね。