オーバード・スカイ ~この限りある空を超えて~
ヤマイ永次@電子書籍発売中!
プロローグ 空に浮かぶ島で
プロローグ sideエルン
空は、決して手の届かない場所にある。
今までずっと、少女はそう思い込んでいた。
いくら手を伸ばしても決してつかむことはできない、無限に広がる蒼穹の大空。
それは人々が地上に飛来した脅威から空に逃げた現代でも変わることはない。
――ましてや、鳥かごに囚われた少女にとっては。
鳥かごの外にも出ることができない自分に、空へ飛び立つだけの力などありはしない。
そうだと決めつけて。
あきらめて。
少女は、鳥かごの中でただ生きていた。
あの日、少女が鳥かごから空を見上げたあの時。
無限に続くような蒼穹の中を飛翔していく、彼女の姿を見た時までは。
手足に装着した翼を巧みに操って空を舞う姿がとても綺麗に見えた。
楽しそうにも見えた。
そして何より――とても、うらやましく思えたのだ。
行く手を阻む鳥かごなんか軽々と破って、空を目指すその姿が。
手足に付けられた枷をもろとも引っ張って飛び立つような、力強いその姿が。
自分にはない、その大きな翼のような彼女を目の当たりにして、少女はある憧れを抱いてしまったのだ。
……私も、あなたのようになれるでしょうか?
初対面でそう切り出した、少女の問い。
返ってきたのは飄々とした言葉だった。
「できるよ、飛ぼうと思えば。人にだって翼はあるからね」
……人に、翼?
「うん。私たちは、希望を胸に灯して、どこへだって飛んでいける」
それに、ね。
首に巻いた赤いマフラーをバサリと後ろに流して、彼女は大きく両手を広げた。
「
これが、少女の決心のきっかけ。
あれからもう8年。
次のバード・スター・カップまで時間がない。
今回こそは――
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