第14話 そして……。
全校生徒マラソンも無事に終わり、俺は静香と一緒に帰っている。
隣にいる静香は何か思い詰めた様子だ。こちらをチラチラと見ている。
静香と目が合い、俺が『どうしたの?』と聞いても無言で目を逸す。
しばらく無言のまま歩く。通学路にある公園を通り過ぎようとした時、静香から『話があるから公園に行こ』と言われた。
公園の屋根付きのあるベンチに座る。ここは子供の頃よく遊んだ公園。昔は広かったけど今は狭く感じる。
時刻は午後三時。暑さのせいだろう、公園には俺と静香の二人だけで他には誰もいない。
隣にいる静香が俺を呼ぶ。
「今日、生徒会長に告白されたの……。『好きです。付き合って下さい』って……」
その話を聞いた俺の心臓が止まりそうになる。
静香はその後すぐに『断った』と言った。俺はホッと胸をなでおろした。
話し続ける静香。断った理由は『好きな人がいるから……』と。
安心していた俺は一気に不安になる。平静を装いながら『静香の好きな人って、俺の知っている人?』と聞く。
頷く静香。そして俺を真っ直ぐ見つめる。静香の好きな人はいったい誰なんだ? 俺であって欲しい。
「私……あなたの事が好き。私と付き合って下さい」
静香の好きな人は俺だった。嬉しすぎて頭が真っ白になる。
「えっと、えっと、こんな俺で良ければ、よろしくお願いします」
俺は頭を下げた。クスッと笑う静香。頭を上げると笑顔の彼女がいる。
「今、この瞬間から私は彼女だよ。よろしくね」
「は、はい!」
突然すぎて実感が湧かない。静香が俺の彼女になった。
◇◆◇
公園から家までの道のりを静香と手を繋いで歩いている。彼女から『手を繋ぎたい』と言われた。
繋いでいる手がすごい事になっている。緊張で汗がドバドバ。で、ビチャビチャだ。やばい。嫌われないか?
家に着くと手を離す。静香は名残惜しそうにしている。手汗は大丈夫みたいだ。
今日の喫茶店は休み。なので家で三人で晩ご飯を食べる。父親と静香が料理を作った。
食事中に今日から静香と恋人になったと父親に伝えた。自分のことのようにすごく喜んでいた。
食べ終えると俺は風呂に入った。後片付けは二人がやるとのこと。それに甘えた。
風呂から上がり静香と父親がいる台所に行く。後片付けは終わっていて、二人でお茶を飲んでいた。
俺が声をかけると静香は風呂へ。俺は父親と少し雑談して部屋に戻った。
部屋に戻る途中、風呂上がりの静香が廊下に出ようとしていた。
俺に気づいて微笑む静香。風呂上がりで白い肌がピンク色だ。
近くまで行くと風呂上がりの良い匂いがする。同じものを使っているはずなのに俺や父親と全然違う匂い。
廊下で湯加減などたわいもない会話をしていると、静香から『あとから部屋に行くね』と言われた。
胸が高鳴る。嬉しさがバレないように平静を保ちながら俺は『うん。わかった』と答えた——。
幼馴染の女の子と自分の父親が〇〇な関係ということを主人公は生涯知らない。 さとうはるき @satou-haruki
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