第3話 閉店後に……。
学校が終わり、いつものように父親の喫茶店へ静香と行く。店に着くとすでにお客さんが三組いた。
十席あるカウンターに一人の年配の男性。それと若いカップル。二つある、椅子がソファーの四人がけのテーブルの一つに幼稚園児くらいの子供を連れた若夫婦。全員常連さんだ。
三組同時だったらしく、父親は忙しそうに動いている。静香もすぐに学校の制服から喫茶店の制服に着替えて対応した。
俺は二人が手が回らない時に手伝っている。そんな事は滅多にない。父親も静香もテキパキと無駄のない動きで仕事をこなしている。
俺は指定席になっているカウンターの一番奥の席に座って晩御飯のナポリタンを注文する。
今日は何故かお客さんが多い。入れ替わりで席が埋まる。繁盛するのは良い事だ。
忙しい時は俺の注文は後回しになる。そんな時は教科書片手に勉強をしている。二人に余裕はまだあるけど……今日は手伝う方が良さそうだ。
父親に手伝うと伝えてエプロンを着ける。手伝うと言っても料理はまったく出来ないので、注文の品を持って行ったり飲み物を作る程度。
「いらっしゃいませ〜」
静香の声が店内に響く。お客さんが途切れそうにない。今日は何かイベントあったかな?
◇◆◇
「ありがとうございました〜」
最後のお客さんが支払いを済ませて帰る。閉店の時間だ。
「腹減ったぁ〜」
忙しすぎて晩飯を食べていない。背伸びをしながら声に出した直後にお腹がグゥ〜となった。
隣に静香がいる。聞こえた? 別に恥ずかしくはないけどさっ。
父親が『カレーで良いか?』と聞いてきたので『お願い』と答える。晩御飯に注文していたナポリタンは作るのに時間が掛かる。なのですぐに出来るカレーだ。
静香に『食べる?』と聞いてみる。『食べる』と返事。普段は仕事中にまかないを食べている。
カレーの準備が出来るまで、最後のお客さんの皿を片付ける。片付けが終わると晩御飯が準備された四人掛けのテーブルに座る。
「いただきます」
一口食べる。空腹に父親のカレーは最高だ。うまい。
三人が食事を終えると後片付けを始める。分担作業で効率よく動き終わらせる。
「よし、終わりだね。じゃあ俺は家に帰る。父さん運転気をつけて」
と、俺はいつものように一人で帰ろうと身支度を始める。
「二人に言うのを忘れていた。今日から一週間、静香ちゃんをウチで預かる事になった」
父親の言葉に俺の手が止まる。……はい? 預かる?
静香を見ると驚いた顔をしている。
「えっと……それって一緒に住むって事だよね?」
俺が尋ねると父親は頷きながら『そうだ』と言った。
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