第27話
「進路かぁ…。」
「進路ねぇ。」
俺が相談できる友達はやっぱりこの二人だった。
気まずいとか言ってられない。
俺は、リンとケンショウと昔からよく訪れる公園にやって来ていた。
遊具があるところや散策林などもある広い公園で、俺たちのお気に入りの場所は大きな池の裏にある休憩所だ。
リンとケンショウはまだ恋人らしいかんじではなかったようで、俺の「少し相談がある」という誘いに二つ返事で来てくれた。嬉しい。
「誰に相談する?って考えた時に、思い浮かんだのは二人しかいなくて。」
「ショウタ、友達いないもんね。」
リンがにししと笑う。
その後ろにはもちろん、SPのコンドウさんたち5人ほどがいる。だいぶ慣れてきたかもしれない。彼らは、こちらから尋ねると返してくれるけれど、尋ねない限り何も言わない。いつもお世話になっているので、はじめての人がいると名前を覚えて自己紹介をするようにはしている。そうしないとロボットか何かかと思いそう。
「リンとケンショウはもう進路決まってるの?」
「私は国連の組織委になってみたいと思ってるから、2年は絶対留学したい。そんで、語学を多めに勉強できる大学で、って考えて決めたよ。」
明瞭な答えだ。
「俺はとりあえず目指せる一番上目指したいと思ってる。」
ケンショウは剣呑と言った。
「医学部かなーって。」
「ケンショウなら絶対入れるね!」
頑張って!とリンがはしゃぐ。ケンショウは俺の受験勉強に付き合いすぎて受験当日に風邪をひき、俺やリンと同じ学校に入れなかった。でも、俺より絶対に頭がいい。ケンショウからは、ショウタのせいじゃないから気に病むな、次言ったらボコボコにする、と言われている。
「ケンショウなら絶対いけるよな。」
俺もリンに同意する。恩人であるからこそ、希望の大学に行ってほしいという想いがある。
「どこで働くかは医大行ってから考えるけど、海外でも働けるようにはしておきたいよな。」
ケンショウはリンと一緒に過ごせる道を探っているのだろうか。ズキッと胸が痛むけれど、考えないようにする。
「ショウタは皇室で頑張るって決めたんでしょ?そうすると、やっぱりG大にするの?」
「それを悩んでるんだよ。そもそもまだ、やりたいこととかも見つけてないしさ。」
「皇室に入るってだけで大変そう。」
「確かに、どこか企業に入ってしっかり働くってことにはならない気がするよな。そういう意味では、まだやりたいことが決まってなくて良かったかもしれない。時間に融通が効く仕事だったらできるのかな。宮廷官には、俺がやりたいことを勉強するのが一番とは言われてるんだけど。」
「皇帝は論文書いたりしてなかったっけ?」
ケンショウが呟く。
「たしか、生物系の。」
「研究ならできるのかな。」
「時間に縛られずにできそうだもんな。」
「ショウタが研究者かぁ…。何研究するの?」
リンとケンショウの間でどんどん話しが進んでしまう。
「俺、研究って柄かなぁ。」
「そんなこと言ったら皇族って柄でもないでしょ。未来は未定!目指せば何にでもなれる!されど選択の先にある。」
リンが鼻の下を人差し指で擦りながら言う。
「少なくとも生物系ではなさそう。」
ケンショウが言った。
もう少し考える必要がありそうだ。
「進路は決まったらまた教えてくれよ。今度の受験は手伝えないけどさ。」
ケンショウが俺の背中をバシッと叩きながら言う。
「わかってる。ありがとな。」
「受験終わったらまた3人で遊びにいきたいなー。」
リンも間延びした声で言った。
「受験終わるまでダメなのか?」
「そんなことないけどさー。みんな忙しくなりそうだねってこと。」
くるりとリンが振り返る。
「まっ!頑張りましょーや!」
どんな時でも元気をくれるリン、支えてくれるケンショウ。関係が変わっていっても、大切にしたいと俺は思った。
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