第26話

 同じ歳だからなのか、ジングウジくんとはわりと話が合う。

 どうせなるなら一緒に養子になりたいなぁ。どっちが兄なのだろうか。ジングウジくんっぽいけど、俺は五月生まれなので俺の方が兄という可能性も。

「志望校はどこなんだ?」

 帰る前に、ジングウジくんが話しかけてくる。

「え?大学?」

「そうだ。」

「まだここって決めたとこはないけど…。」

「僕はT大だ。誰にも何も言わせないために。僕達がどこに進学するか、世間ではものすごく注目されると思うぞ。周りに何か言われる前に、決めておいた方がいいだろう。」

 ジングウジくんは言わずと知れたパンジャーブ一の大学の名前を言う。でもジングウジくんならきっと行けるだろう。そんな気がする。

「ハルシャが進学したときには、入試制度がハルシャ向けに変わったとか、どうとか、なんかいろいろあったらしいからな。」

「え、そんなことまで言われるの?」

「ハルシャは皇族が多く卒業したG大じゃなくてC大に進学した。リファやサイファもI大。なぜかは知らないけど。C大やI大は皇族を獲得するために入試制度を変えた、とか特別待遇だ、とか言う奴もいたと聞く。G大を目指すなら何も言われないだろうが、それ以外なら何か言ってくる奴がいるかもな。」

 そんなことまで言われるのは嫌だな、と俺は思った。せっかく努力して入学しても実力じゃないとか言われたら、嫌になりそうだ。ハルシャは、どうだったのだろう。


「皇室の方はG大が多いですよ。シーファさまもそうですし、今の皇帝もそうです。シュウトクさまとキョウカさまもそうです。G大は警備の仕方もよくわかっているのでとても嬉しいですけど、でもショウタさまの行きたい大学に行って、学びたいことを学ぶのが一番です。」

 サヤさんはにっこりして言った。

 やりたいことがないわけではない。養子になろうがなるまいが、俺のやりたいことを変える必要はない。そう強く言い聞かせる。

「早く決めてくれないかな、誰が養子になるのか。そしたら、もっとちゃんと心構ができるような気がするのに。」

「合否を出してほしい、ということですね。」

 サヤさんは困ったように言った。

「私たちが決めることじゃないんですよ…。私たちはもう、ただ見守ることしかできなくなってしまいました。」

「え、選定官が決めるんじゃないんですか?」

「私たち選定官には、御養子に適さないと判断された人物を候補から外すことはできますが、この人にします!と決める力は持っていないんです。」

「じゃあ、誰が?」

「それは、候補の方には言ってはいけないことになっているんです。」

 えへへ、とサヤさんは笑った。

「いずれ、わかると思いますよ。」

 俺たちに裁可を下すのは誰なのか。皇帝か?シュウトクか?

 わからない。だが、できることを一つ一つやっていくしかない。

 まずは進路を改めて決めていかないとな、と俺は思った。

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