第11話 まずは冒険者登録とステータス確認から

 首尾よく秋篠さんの協力を得ることができた俺と新野は、秋篠さんの案内で霞が関にある冒険者協会本部を訪れていた。


 ダンジョンを攻略するうえで、冒険者登録は必須だという。


「冒険者登録をすると協会からクエストを受注できて、達成すれば報酬が貰えるようになるの。冒険者協会が管理するダンジョンにも入れるようになるし、登録して損することはないと思うよ」


 ちなみに冒険者登録をせずに入れるダンジョンは東京だと新宿と池袋の二か所のみで、この二つも上層より下に進むには冒険者登録が必要になるそうだ。


「登録って俺達でもできるのか?」


「う、うん。身分証……えっと、学生証とマイナンバーカードがあれば大丈夫だよっ。あとは報酬をもらった時の振込先の口座番号を登録しないとだけど、それはアプリからできるし……」


「冒険者って随分と簡単になれるものなんだなぁ」


 面接がない分、アルバイトをするよりも手軽だ。小春の奴がこれを知ったら親に内緒で冒険者を始めかねないな……。


 協会本部の窓口へ登録を申し出て、何枚かの書類に記入をしマイナンバーカードの写しを取られる。たったそれだけで冒険者登録が完了した。おそらく十分と経っていない。


 受付の人から渡されたガイドラインに沿ってスマホに冒険者アプリをインストールする。起動して受付で設定したIDとパスワードを入力。するとすぐにアプリと登録が同期され、ホーム画面に俺の名前が表示された。



名前:土ノ日勇

レベル:未同期

ステータス:未同期

冒険者ランク:G

次の冒険者ランクまでのクエストポイント:350



「なんかゲームみたいね……」


 俺と同じく受付を済ませアプリを起動させていた新野が呆れたように呟く。


「あはは……。アプリを作るうえでロールプレイングゲームを参考にしたのは本当らしいよ。そのほうがわかりやすいからって」

「まあ、確かにわかりやすいよな」


 RPGがそもそもダンジョンから着想を得たというのは有名な話だし、元々から親和性も高かったんだろうな。


「ねえ、秋篠さん。レベルとステータスが未同期になってるんだけど、これってどう同期させればいいわけ?」


「あ、それはまずレベルとステータスを測定しなくちゃいけなくて」

「ステータススクロールでも使うのか?」


「すてーたすすくろーる?」


 秋篠は初めて聞いた単語だと言わんばかりに小首を傾げた。


 おっと、ステータススクロールは前世の世界のマジックアイテムだった。背中に押し付けるだけでステータスが見られる便利なアイテムだったのだが、どうやらそれを使うわけではないらしい。


「あー、俺が今やりこんでるゲームでステータスを見るためのアイテムなんだ」

「あぁ、なるほど……! たぶん土ノ日くんが想像しているものとは少し違うかも……」


 ステータスの測定は冒険者協会の本部や各支部で行えるそうで、早速俺たちのステータスを確認するため測定場所へ向かう。


 ステータス測定室と書かれた部屋には、五台ほどの酸素カプセルみたいな装置がずらりと並んでいた。


「これでステータスを測定するんだよ」

「……なんかすげーSFっぽいな」


 秋篠さんがボタンを操作するとカシュー……と音を立てながら蓋が開く。


「土ノ日くん、ここに冒険者アプリを起動しながらスマホをタッチしてみて」

「こうか?」


 言われた通りにタッチすると、スマホの画面に『同期中』という表示が浮かんだ。


「そしたら機械の中に入って、寝転がるの。一分くらいで測定が終わってステータスが同期されると思うよ」


「わかった」


 いったいどんな仕組みでステータスを測定しているのかさっぱりわからないが、とりあえず言われた通りに機械の棺桶みたいなスペースへ寝転がる。すると蓋が自動的に閉まって、何やら淡い光が棺桶の中に浮かび上がった。


 ……これ、魔法陣か?


 かすかにだが魔力を感じる。ステータススクロールを使った時と似ているな……。おそらく似た原理が働いているのだろう。仕組みはさっぱり不明だが。


 光は秋篠さんが言った通り一分ほどで収まり、自動的に棺桶の扉が開いた。起き上がってスマホを確認すると、レベルとステータスの欄が更新されている。



名前:土ノ日勇

レベル:4

ステータス:HP/439 MP/212 攻撃力/258 防御力/240 魔力/150 器用さ/189 素早さ/229 

冒険者ランク:G

次の冒険者ランクまでのクエストポイント:350



「ぐっ……」


 わ、わかっちゃいたが前世のカンストステータスと比べたらゴミみたいな数値だ。比較するだけ馬鹿らしいとわかってはいるんだけどな……。ちょっとショックを受けてしまった。


「ちょっと見せなさいよ、土ノ日」

「あ、おいこらっ!」


 隙を突かれて新野にスマホを奪われる。画面を見た新野は口角を上げてにやにやした顔を俺に向けてきた。


「なによ、このステータス……ぷふふっ。見る影もないわねぇ、ぷーくすくす」

「う、うるせぇ! お前だってどうせ似たようなもんだろっ!」


「さすがにあんたほど酷くはないわよ」


 なんて笑いながら俺と交代で測定機に入っていく新野。

 その結果はというと、



名前:新野舞桜

レベル:2

ステータス:HP/88 MP/410 攻撃力/58 防御力/49 魔力/305 器用さ/39 素早さ/45

冒険者ランク:G

次の冒険者ランクまでのクエストポイント:350



「俺より酷いじゃねーか」


 さすが元魔王だけあってMPと魔力の数値は高いが、他が壊滅的だった。あれだけ人々から恐れられた魔王がこれとは。


「ぷぷっ」

「わ、笑うなバカぁっ!」

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