第58話 ペットを飼おう

翌日は雨だった。

ここから先、王都まで街道を外れて行くならは田畑と農道になる。

足元は悪くなるだろう。

今朝はミズーリが先に起きていて、私の顔をいじって遊んでいた。

唇を指でビルビル弾いていれば目も覚める。

「…何をひへひるほかな。」

喋りにくい。

「暇だから。起きて。ご飯食べよ。」

分りましたよ。

「それとも、またする?」

私に何かしたんですか?ミズーリさん。


雨といっても嵐のレベルだ。風が強いので、傘くらいではびしょ濡れになるだろう。

トースト、目玉焼きとカリカリベーコン、ブロッコリーとコーンのマヨサラダ、牛乳の、そろそろ我が家の定番化してきた朝食を食べる。

マーガリンをトーストに塗りながら今日の指針を話あうが、雨が止むまで停滞で一致。


停滞なら停滞でどうしようか。

洗い物を終えたミズーリは既にソファで溶けている。アイスクリームの空きカップが二つローテーブルに置いてある。

朝から何やってんだか。この女神は。

家の充実でも図ろうか、でも何か欲しい物あったかな。

私の元の家を思い出していて、一つ見つけた。あれが欲しい。逢いたい。でも、これは大丈夫なのだろうか。

万能さんに確認すると問題ないと言う。

ならば、と。

私は愛犬チビを呼び出した。

本物のチビは私の死後は実家に引き取られたと言う。このチビは万能さんがトレースした、チビの記憶を完コピのポメラニアンだ。チビは久しぶりの主人との再会に歓喜を隠さず私に体当たりして来た。

「きゃーきゃーきゃーきゃー。」

ミズーリも歓喜を隠さず私に体当たりして来た。

「この仔なに?可愛い可愛いどうしよう私この仔可愛い過ぎておかしくなりそう。」

チビはミズーリに抱き締められると、歓迎しますよと顔をペロペロ舐める。

そういえばコイツは人見知りをしない、人が大好きな犬だったな。番犬には全くの役立たずだった。

「名前はチビ。前世での私の愛犬だ。」

「チビちゃん。チビちゃん。」

ミズーリ名前を呼ぶたび、チビはワンワンと返事をする。

マッタリとした雨の朝は、すっかり賑やかになってしまった。


ケージをベッドの足元に置きシートを敷く。

トイレの躾は済んでいる。外に出せば全部出し切って帰ってくるので、私の在宅時は庭を自由に出入りさせていた。チビはご近所のアイドルで、姿を見かけると皆話しかけてくれた。

チビも毎回お座りしてお相手するので、我が家の外務大臣を一手に引き受けていた。

大好物はさつまいも。

コイツは毎食のフード以外のおやつは大事に取っておく習性があって、特にさつまいもは一日かけてゆっくり味わう変な犬だった。

さつまいもを出すと、ミズーリの腕から逃れて私の前でお座りをする。

私がうなづくとワンと一言。

この呼吸が私達。チビの目の前に置くと、さつまいもにお手をして私を見る。

よし、と言うとチビは芋を咥えてケージに入り一口齧る。が直ぐケージから出て来る。

チビはお芋さんより、私との再会と新しい出会いが嬉しいと見えて、尻尾を振り振り私達を見比べている。

その姿にミズーリが敵う訳もなく、また抱き締める。

絨毯と犬に蕩ける女神様。

新しい仲間の合流である。あ、馬くん拗ねないかな。

大丈夫だぜご主人。

そうですか。どこから私に話しかけているんですか?あなた。

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