第43話
「雷光! ガイア! 雷光! ガイア!」
「聖剣召喚! ホーリースラッシュ!」
「くっ、さすがに強い……」
「諦めるな、ダメージは通っている!」
「分かってるよ、僕たちにしかできないんだから」
「そうさ、僕たちの、メイダス人と地球人の、熱い友情がなければこいつらを倒すことはできない」
「ボッチリオ!」
「こしあん!」
「「いくぞ、勇者と魔王の合体技! ファイナルビューティーアターック!」」
幾度も軌道を交差させた僕とボッチリオさんの残像。舞い上がる、桜の花びら。そして背中合わせになった僕たちがカメラに視線を向けた後ろで、ちゅどーんと爆発する傀儡人形たち。かくしてシンボル部屋に蠢いていた脅威は倒された。とてもマッチポンプな方法で。
「こしあん、やったな! これでイベントの平和は守られた」
「まだだよ、ボッチリオ。僕はこのイベントを楽しんでいる全プレイヤーのためにも、もっと緊迫した状況を作り出さなければと思っているんだ」
「一体何を……」
「敵味方の生存者数を同数にする。そこから未来が始まると信じて!」
「こしあん、お前って奴ぁ……そんなにもゲームを愛していたのか」
「僕は敢えて悪者になろう。メイダス人のプレイヤーは僕を嫌いになっても、このイベントを嫌いにならないでほしい」
「こしあん~~~~~…………はい、カットー」
「ふぅ、疲れたよ。本当にこんなので侵略阻止できるの?」
「できるかどうかは分からない。でも民意を味方につけるには、この方法がベストだよ」
ボッチリオさんと相談して導き出した答えは、民意で政治を動かす方法だった。ただし、ただ訴えただけでは効果が薄い。それなら台本ありきで、僕のカリスマ性をもっともっと高めよう……みたいな話になったんだ。
まずは負の要因でしかない傀儡人形たちを自らの手で退治。そのときメイダス人であるボッチリオさんの協力も得て、仲良しアピールも忘れない。
ボッチリオさんと仲良しイコールメイダス人と仲良し……みたいに感じてくれる視聴者が少しでもいれば良いな、という作戦だ。こしあんという偶像は、メイダス人の敵じゃない、むしろ仲間だ! みたいに持って行ければと思う。
次に、もうひとつの不安要素を排除する。この部屋のに続くワープポイントの前にいるカオス・ファントムだ。こいつがいることで、僕たちの手で生存者数を操作し難くなるからね。
要は、生存数が同数になるまでメイダス人プレイヤーだけを倒し、日本人プレイヤーにはシンボルに触ってもらってログアウト権を獲得してもらう。こうすることで、彼らはいつでもリアルに戻れるので、不満はなくなるはずだ。元々、好き好んでこのゲームに参加してるわけじゃないからね。それに僕のせいだって免罪符も有効になる。科学技術庁からの報酬もこれで減らされることはない。
そして同数にした後は……。
「本当に運営が接触してくると思う?」
「間違いなくしてくるね。こしあんくんの話だと、一気に三十人ロストできる切り札を獲得してるんでしょ? 現状でもそれを使われるとメイダス側の負けが確定しちゃうんだ。同数に合わせなくても必ずコンタクトを取ってくるさ」
【味方生存数:67 敵生存数:77】
現在の敵生存数は77人なので、ここから30を引くと47人。そうなればメイダス側の負けが確定で、ルールにより日本への侵略ができなくなる。そこはメイダス現政権としては汚点となるので、何としても回避したいところ……と言うのが、ボッチリオさんの言い分だ。僕は地球人だから、あちらの情勢や空気は分からない。なのでここは彼の提案に乗ることにした。
視聴者を味方につけ、なおかつ政治家の言いなりである運営の機嫌も取らなければいけない。面倒くさいけど、やるなら今だ。
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