五章 防衛イベントでオンライン
第54話
今回のイベントはクラン単位での参加なので、傭兵のピエールやバロスは連れて行けない。AIが安定してきたから惜しいけど、こればっかりは諦めよう。育成は続けるけど。
僕たちのクランは三人しかいないから、出来ることはたかが知れている。でも考えられうる最高の状態で挑みたい。
まずは、こしあん。戦闘面では頼りにならないステータスだけど、敵からアイテムを奪うことにかけては第四サーバーで多分一番だ。インベントリのアイテムが切れても、その能力さえあればパーティの継続戦闘能力が上昇する。
なので、そこだけ押さえていれば大丈夫かな。保険で全属性耐性のスキルも覚えさせて、できるだけダメージを抑えたい。でもこのステータスじゃ、どのみち一撃くらったら大怪我だろうけど。
こしあん
HP 750 MP 220
物理攻撃力 292
魔法攻撃力 22
物理防御力 105
魔法防御力 105
速度 105
幸運 189
アイテムドロップ率 約129%
アイテムスチール成功率 約154%(ハイパースチールが育てば174%)
ドロップ・スチール共に、激レアアイテムの場合はさらに5%アップ
次にヴァネッサだけど、彼女の防御性能に関しては全く心配がない。気がかりなのは状態異常と即死だけ。これもイベントまでにスキルを鍛えれば何とかなると思う。NPCなので、二十四時間レッサーヴァンパイア耐久とかやっても平気なんじゃないかな。彼女にも保険で全属性耐性のスキルを覚えてもらおう。
ヴァネッサ
HP 1890 MP 180
物理攻撃力 210
魔法攻撃力 18
物理防御力 324
魔法防御力 239
速度 18
幸運 18
被ダメージ50%ダウン(被物理ダメージは55%ダウン)
ガードスタンスで物理と魔法防御力1.5倍
最後にニャン汰さんだけど、パーティにいるだけで仲間のステータスが上昇するのは嬉しいかぎり。ヴァネッサなんて、この特性と自身の特性やスキルを組み合わせれば、被ダメージを限りなくゼロにできる。
ただニャン汰さんの特性は、自身には適用されないらしい。まあそれでも、こしあんより安定したステータスなので何とかなる感じかな。防御無視能力が高いのも嬉しいところ。
全状態異常耐性、全属性体制、即死耐性、次元断のスキルブックに加えて、激レアアイテムのフレイムタンも二本渡して、さらに安定感を増してもらおう。
フレイムタン 物理攻撃力+270 火炎の追加ダメージ
次元断 相手のレベルが自分より低ければHPを半分にできる。
ニャン汰 HP 950 MP 850
物理攻撃力 678
魔法攻撃力 85
物理防御力 185
魔法防御力 140
速度 31
幸運 30
防御無視55%
パーティステータス25%アップ
ストロングLV5(攻撃力1.5倍)
シールドLV5(被ダメージ25%カット ヴァネッサに使えば75~80%カットできる見込み)
貫通LV5(防御無視25% 自信に使えば相手の防御を80%無視)
僕たち、意外と強いんじゃないか? 三人だけで何でもできそうな気がする。厳密に言えば、ヴァネッサとニャン汰さんだけで。くっ、ホコリが目に……。
「こしあんさん、ありがとうございます!」
「こしあんくん感謝にゃ!」
「こんなことしか役に立てないからね。それよりレッサーヴァンパイアと戦闘して、全員の即死耐性を上げておこうよ」
「なんでレッサーヴァンパイアなのかにゃ?」
「だって、即死攻撃してくるのは奴だけだし」
「それなら新大陸に行くにゃ。即死、毒、麻痺、混乱、各種属性攻撃のオンパレードにゃ。しかも範囲攻撃にゃ」
あ、その手があったか。でもそれだと全員死ぬだろうだから、蘇生薬や回復アイテムを使う暇がないような……。
「ニャン汰さん、まさかゾンビアタック?」
「そうにゃ。耐性を鍛えるだけならそれで充分にゃ」
目からウロコの発想だった。死亡によるデスペナルティは三十分のステータス最弱化。でも、戦って勝とうと思わなければそんなのは関係なくなる。今回の目的は耐性の強化だけだから、ゾンビアタックのほうが効率的だ。
ちなみにゾンビアタックとは、何度倒されても復活して再度敵に突入するプレイスタイルを指す。ゲームである以上、敵モンスターにもHPが存在する。要はそれをゼロにすれば勝ち。たとえ【1】でもダメージが入れば、いつかは倒すことが可能だとの考えから生み出された脳筋戦法だ。今回は倒すのが目的じゃないけど。
「じゃあ行こう、新大陸に!」
「分かりました、護ってみせます!」
「ゴーゴーにゃ!」
ヴァネッサ、護っちゃダメ。攻撃を受けないと耐性は育たないからね。タウントとか絶対しないでほしい。しっかり言い聞かせておかなければ。
かくして僕たちは港町シェレナから船に乗り、新大陸への上陸を果たしたのだった。
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