第29話

 思いのほか、ぐっすり眠れた。人間の体は睡眠を取るように出来ているらしい。時計を確認すると正午前。実に十二時間近く爆睡したことになる。


 アップデートは何時間も前に終わってるから、ガチ勢の皆さんがゲーム内で色めき立っている頃だ。


 ……お湯を沸かして、カップ麺でも食べよう。


 充分な睡眠を取って夢の中で状況を整理したら、慌てることなんて何もないことに気づいた。忍者かハイシーフ、どちらになるかなんて火を見るより明らかだ。


 こしあんのユニークスキルと今までのSP振り、そして何よりオンリーワンを目指すならハイシーフしかない。


 あ、お湯が沸いた。


 僕の考えた最強でも最高でもないキャラクターだけど、極めればきっといつか輝けるはずだ。


 このカップ麺、上げ底だな。


 タブレットの電源を入れ、並んだアイコンからレガリアワールドオンラインをタップした。映し出されたタイトル画面は、昨日までのものと違ってる。


 お、三分経った。


 街を背景に色んなジョブキャラが並んでたのに、レガリア大陸を俯瞰で見たものになっていた。どこかに向かって進む客船も、その中に描かれている。新大陸に行けるようになったらしいから、そのイメージなのだろう。


 味、薄っ。かやく少なっ。


 ログインすると、こしあんが立っているのは冒険者ギルドの中だった。ああ、そうか。昨日ここで強制ログアウトになったんだった。


 転職窓口の受付おじさんをタップして、メニューを表示。チェンジ可能なジョブ一覧から……と言ってもふたつしかないけど、ハイシーフを選択した。


《こしあんはハイシーフになりました》

《ジョブ特性が変更になりました》

《ジョブスキル スチールがハイスチールになりました》

《盗賊の目を覚えました》

《各ステータスが5ポイント上昇しました》

《転職ボーナスとしてSP20を取得しました》

《セカンドジョブの設定が可能になりました》


 おおお、色々パワーアップした。続いてセカンドジョブも設定してしまおう。


 ステータス画面を一度閉じてから、受付おじさんをタップ。いまさらだけど、なんでお姉さんじゃなくて、おじさんなんんだろう。他のMMORPGなら絶対お姉さんなのに。さすが国営と言うべきか、国営臭いと言うべきか。男女平等の精神が見え隠れしている。


 セカンドジョブを設定する、を選ぶと七種の基本ジョブが表示された。僕が選ぶのはもちろん……シーフだ!


 そして転職ボーナスのSP【20】を、物理攻撃力に【6】、物理防御力に【4】、魔法防御力に【5】、幸運に【5】振り分ける。


 さあこれで、本当に後戻りは出来なくなった。でも覚悟を決めたので後悔はない。僕は僕の、アイテムドロップ特化の道を突き進んでやる。それこそ、誰も追いつけない次元まで。



 キャラネーム こしあん

 ジョブ1 ハイシーフLV31

 ジョブ2 シーフLV1

 HP 305

 MP 80

 物理攻撃力 21+3+140

 魔法攻撃力 8+1

 物理防御力 30+3+40

 魔法防御力 27+1+40

 速度 25+10+25

 幸運 90+13+10

 ジョブ特性1 アイテムドロップ率30%アップ

 ジョブ特性2 アイテムドロップ率20%アップ

 ユニーク特性 アイテムドロップ率30%アップ

 ジョブスキル ハイスチールLV1 罠解除LV1 脱兎LV1

        盗賊の目LV1

 メルクリウスの加護 激レアアイテムドロップ率5%アップ


 武器1 プレリュード 物理攻撃力+60 スチール成功率20%アップ

 武器2 クインテット 物理攻撃力+80 攻撃回数+1

 頭防具 忍者の頭巾 魔法防御力+40 速度+5

 体防具 忍者の衣 物理防御力+40 速度+5

 足防具 忍者の足袋 速度+15

 装飾品 忍者バングル 幸運+10 アイテムドロップ率10%アップ


 ジョブ1 SP 0ポイント

 ジョブ2 SP 0ポイント

 所持金 1393300G



 ごちそうさまでした。

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