19話 遭遇

19.遭遇


彩と近藤は頻繁に会うようになり、その度に体を重ねていた。


ある日近藤と彩は2人で飲みに行き、それからホテルに行こうと店を出るとき、

偶然高谷と裕子が店に入ってくるところに出くわした。


「あれ 高谷先輩?」近藤が高谷と裕子を見つけ、声をかけてきた。


「あっ 近藤?」


「あれ?お二人はデートですか?」


「まあな」そう言っていると トイレから彩が出てくると、

彩は高谷を見て まずいと思い思わず顔を見られないように下を見る。


「彩? ああ 高谷先輩。もう彩とは離婚したんですよね」近藤は彩と一緒にいる事に問題ないだろ っという顔で話してきた。


「ああ」克己の顔がどんどん曇ってくる。


「じゃあ 彩 行こうか」

そう言って近藤は、彩の腰に手を回して出て行こうとしたので

克己は彩に向って

「彩、近藤は奥さんも子供もいるんだぞ、また同じ事を繰り返しているのか?」と言われ、ドキっとしたが、

彩は何も答えず、そのまま近藤と一緒に出て行った。


そうだ、私はまた同じ事を繰り返している。罪悪感が体を走る。


そして、その現場を克己に見られた。もう克己には会わす顔がない。


真っ青な顔をした彩、近藤を振り払ってタクシーを拾い実家に帰った。


車の中で涙が止まらなかった。克己のあの見下した、あきれた。っという顔が目に焼き付いていた。


お店では、克己がどんより沈んだ顔をしていた、気分は最悪だった。


あれだけ愛していた彩が、今でも忘れられない彩が、近藤と・・・腰に手を回され、

もう離婚したんですよね?・・・そうだ離婚した。


何故お前が言う?・・・そういう関係か。


どうしてそうなったんだ?


・・・苦しくて胸が痛い・・・・。


それを見ていた裕子は、

今だに克己がまだ彩を想っているのが、裕子には痛いほどわかった。


克己が彩を過去の人にするには何年もかかるかもしれない。復縁するかもしれない。


それでも、それがはっきりするまで何年でもそばにいよう、と覚悟していた。


それが今日の 近藤の一言で、彩と近藤の関係を見て復縁の可能性は消えたみたいと感じた。


本当は、泣きたいほど喜ぶことだが、落ち込んでいる高谷を見て、かわいそうだと思った。


あれだけ思っている人(彩)に、また裏切られた。これだけ誠実な人(克己)を2回も簡単に裏切ったのだから。


そんな人(女)を愛していた、ずーっと6年間信用していたのに。


かわいそうで見ていられなかった。


下心なしに慰めてあげたかった。


「高谷さん?つらいですよね、高谷さんはまだ彩さんの事忘れてないですものね」

「いいですよ、私もその気持ちわかりますから」そう、高谷を忘れられない自分・・


「裕子ちゃん ごめん 」


「いいんですよ、今日、これから私のところで一緒に飲みませんか?お話 聞きますよ?」

心が砕けて、身も心も弱くなっていた克己には、1人で家に帰れば彩の事を思い出す。


・・・家には帰りたくない。


裕子のこの一言は救いだった、克己にとって藁をもすがる思いで、


「いいの?」


「いいですよ、お話聞きますよ」


「すまない・・・」


「いいえ、じゃあ 行きましょうか?」


「うん」 そう言って、すぐにお店を出て、タクシーに乗って裕子のマンションに行った。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る