17話 彩の妊娠
17.彩の妊娠
離婚して実家に戻った彩は、生理がこない事に気が付いた。離婚騒動でバタバタしていたので、ストレスで遅れていると思っていたが、1か月後もこない。
妊娠したかもしれない・・・。
あせって妊娠検査薬を買って検査したところ陽性反応。妊娠していた。
杉田の子供だ・・・・。
これが克己との子供だったら、克己は喜んで復縁してくれただろう。
でもその可能性はない。
杉田の甘い言葉に惑わされ、克己を拒んでいたのだ。
彩は基礎体温を付けていた。それは妊娠しないために。
克己との結婚生活は充実していた。
平日は趣味の時間、ほしい物は克己に頼めばたいていの物は買ってくれる。
克己は仕事が終わるとすぐに帰ってくれるから独りぼっちの寂しさはない、夜も愛してくれるし、土日はデートしたり、ときどき旅行にも行ったり。
子供がいるとこんな生活はできない。結婚3年目になると
向こうの両親と自分の両親から孫の話が出てくる。
でも当分この生活がしたかった。
幸いにも克己から子供が欲しいと言われない。だから妊娠しないように基礎体温をつけていた。
しかし杉田と浮気してからは杉田の都合に合わせて会うから、基礎体温と関係ない日に行為をしていた。
どうしようか悩んだが杉田しか相談する相手がいない、冷静に考えれば、彩自身がどうするか決める事であるが、何も考えずに杉田に連絡した。
「もしもし、昇、私」
「ん? 彩、どうした?旅行の事か?」
「えっ、あんた何言ってるの?この前の離婚騒動からまだ1か月しかたってないのよ」
「でも、お前の元旦那は別れた後は会ってもいいって言ってたじゃないか」
「そうだけど、奥さんはいいの?」
「ああ・・・・・・」
「あのね、そうじゃなくて、・・・私、妊娠したみたい」
「えっ?」
しばらく沈黙が続き、杉田は一機に話だした
「それ、俺の子?元旦那の子じゃないの?俺、中出ししてないから、俺の子じゃないよ、
今それどころじゃないんだ、結局テニススクールは生徒に手を出したって、クビになるし、2人から慰謝料請求されて困ってるんだよ、おまけに女房は離婚するって実家に帰っちゃたし、そうだ、彩、俺んちに来ない?1人なんだよ・・・・・・」
あきれた。
あまりに自分勝手だ、私が妊娠して困って相談しているのに。
そういえば、高校時代の時も、最初はテニスの主将でかっこよくて付き合ったけど浮気を続け、いろんな女の子に手を出して、泣かせていたんだ、それがいやで別れたのに、
あーーー、そういえば不倫相手がもう1人いたんだった。
こんな奴の子供?最悪。
「もういいわ」そう言って電話を切った。
彩は途方に暮れていた。杉田からはあんな態度をとられ、希望はない。
もしこの子を産んだら、完全に克己との縁は切れる。
彩の頭の中は、誰にもばれないように堕ろす事しか頭になかった。
家族に気づかれないように産婦人科で見てもらった。
妊娠したかどうかは、今の時点ではまだはっきり断定できません、かなり可能性は高いです。十分体に気をつけてください。そう言われた。
誰にも気づかれないようにしていたのに、兄に疑われ、ばれた。
兄と両親にひどく責められた。
それから1週間ほどたって、急に腹痛になり、出血した。
あわてて産婦人科に行ったところ、生化学妊娠だという事がわかった。化学流産とのこと
心のどこかでほっとした自分がいた。
両親と兄には、本当の妊娠ではない、と説明し、とりあえず怒りは収まった感じがしたので、何か言われる前に自分の部屋に逃げ込んだ。
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