15話.裕子のチャンス
15.裕子のチャンス
子供がいなかったのが幸いである。
それから、裕子はバツイチお局様として、会社に勤め続けていた。
自分がバツイチになってからも良く高谷夫婦の話を耳にした。
それはとてもうらやましく、でももう自分とは関係のない世界、唯一、その相手が自分ならと妄想する程度、そう思っていたところに奥さんの浮気が原因で克己が離婚した、と聞いた。
最初はかわいそうと思い、それから、あんな良いご主人がいるのに浮気?と怒り、そしてだんだん自分にもチャンスが?!と思うようになっていた。
裕子も入社当時は引っ込み思案で自分から何も言えなかったが、離婚を経験し30歳お局様、もともとの性格上強く積極的には行動できないが、昔よりは活動的になっていた。
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克己は彩を忘れるため、仕事にのめりこんでいた。結婚していた時より多く出張するようになり、夜遅くまで仕事をして、時には泊まり込みもするというより泊まりたい、だって家に帰りたくないから。
そんな克己を見て、裕子には明らかに彩を忘れるため仕事に没頭しているのが見え見えだった。
裕子にとっては6年ぶり、食事に誘ってみる事にした。
裕子は克己に話しかけた。
「高谷さん?」
「はい?」
「最近、お仕事頑張ってますね」
「いや~そんな事ないですよ」
「わかりますよ、奥さんの事忘れられないんでしょ」
「えっ・・・・」
「無理しない方がいいですよ、ねっ、今度一緒にお食事しませんか、バツイチ同士で」
「でも、お子さんいらっしゃらないんですか?」
「いえ、いないんです。高谷さんもお一人でしょ」
「はい」
「じゃあ 今度の金曜はいがですか?」
そう言って金曜に一緒に食事をする事になった。
裕子はうれしかった、もう6年ぶり、大好きだった人、いや今でも大好きな人とデートできる。
少しずつ距離を縮めて行けたら・・・
克己が彩さんを過去の人にした時に告白しよう、もう今度は間違えない、そう決心した。
金曜に一緒に食事をしながら、自分の入社当時、克己に仕事を手伝ってもらっていたころの話をして盛り上がった。
あの頃克己は裕子の事をどう思っていたか知りたい。
直接聞くわけにはいかないし、離婚したてでまだ彩さんを思っている人にそれはかえって心象を悪くする。
過去を懐かしむ程度。彩さんと知り会う前の話
克己が 当時、私と一緒に食事をした時 落ち着く と言ってくれた。
悪い印象ではなくむしろ良い印象だったことに、内心喜んだ、でも、かえって後悔が大きくなった。
(あの時やっぱり告白していれば、変わっていたかもしれなかったんだ・・・・・。)
(いや、うしろばかり気にしていたらダメ、今こうして一緒に食事をしているんだから)
離婚してから、両親が見合い話をよく持ってきた。
でもまた同じ事を繰り返すのではないかという懸念と、やっぱり克己の事が好きで、ダメとはわかっていても、その気持ちに整理がつかないと結婚は難しいと思い、すべて断ってきた。
気が付けば30歳バツイチお局様・・・
でもうれしい。断ってよかった・・・
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