第3話:転生練金術師は村に着く
◇
冒険者が言っていた通り、近くの村には二十分ほどで到着した。
しかし、村と呼ぶには些か大きいような気がするのは俺だけだろうか。
まるで要塞のように村の周りは壁が囲っている。
門を通して出入りする決まりになっているようだ。
この世界には魔物がそこら中に潜んでいるようだから、村の中に入らないようにこうした造りになっているのだろう。
門を通って、村の中に入る。
たくさんの冒険者や村人が行き交っており、めちゃくちゃ栄えているようだった。
都市——とでも呼んだ方がしっくりくるが、現地の冒険者がそう呼んでいるのならそれに合わせるとしよう。
「しかし……村に来たとはいえ何をしていいかわからないんだよな……」
とりあえず人がいる場所までいけば、この世界で生きていくなんらかの術が見つかるだろうと思った。
しかし、甘かった。
あまりに人が多すぎて、コミュ障の俺は誰に話しかけていいのかまずわからない。
買い物をしている人々を見ていると、この世界でも普通にお金という概念はあるみたいだから、なんらかの形でお金を手に入れないことには食べ物にも困ってしまいそうだ。
冒険者——という可能性をふと考えたが、俺は冒険者には向いていなかったのだということを思い出して、思考を停止した。
どうすればいいのかわからないまま村の中をぐるぐると散歩していた時だった。
「——やめ、やめてください!」
路地裏から、若い女の子の声が聞こえてきた。
ふと様子を見てみると、そこにはおよそ日本人とは思えない金髪碧眼の美少女が困った様子だった。
歳は……顔で判断するなら十五歳くらいだろうか。
しかし胸は顔に似合わないくらいに大きく、思わず目を奪われてしまう。
しかし大きいのは胸だけで、スラッとした理想的な見た目ではある。
俺はロリコンではないのだが、ドキッとしてしまう。
このような魅力的な容姿だからこそ、今のような厄介ごとにも巻き込まれてしまったのだろう。
「いいじゃねえか? 俺とパーティ組みなよォ。毎晩優しくするよォ? ヒヒ……」
女の子は、脂ぎったおっさん冒険者に壁ドンをされるような形で凄まれていた。
おっさん冒険者は女の子の冒険者を口説いているようだ。
表向きはパーティに勧誘しているようだが、下心を隠しきれていない。
やれやれ、どこにでも迷惑野郎というものはいるんだな。
大人として困っている少女を見殺しにはできないな。
この子とは何の面識もないが、このまま放っておいて乱暴されるようなことがあったら寝覚めが悪い。
「おい、その辺にしておいたらどうだ?」
「ああん? ンだテメェ‼︎」
注意すればすぐに逆ギレ。
どこの世界も頭が悪いやつというのは、ワンパターンだな。
「その子が嫌がってるだろう。無理やり言うことを聞かせようなんて恥ずかしいとは思わないのか?」
「決めつけてんじゃねえよ‼︎ この女は嫌がってねえ! 喜んでんだ! な? そうだろ?」
「う、嬉しいわけありません……! 迷惑ですから!」
「……って言ってるみたいだが?」
「こ、こいつ……生意気言いやがって!」
逆上したおっさんが、俺に向けて拳を振るってきた。
「あ、危ないです……っ!」
「このくらいなら全然大丈夫」
力の限り思いきり振っているようだが、俺から見れば——遅い。
さっきのパッシブスキル強化により、俺は強力な動体視力と防御力、攻撃力……その他諸々を手に入れた。
だから——
ガシッ!
「な、なんだと……振り上げた俺の腕が掴まれてる……だと⁉︎ 親父にも掴まれたことなかったってのに!」
「うるさいな……」
おっさん冒険者の拳は左手で受け止めたので、今度は右手で軽く頬を殴る——
ドガッシャ————ンッ
「うがああああ……ば、化け物だ……! こ、こんなの勝てるわけねえ! お、覚えてろ!」
路地の壁に激突し、戦意を喪失したらしかった。
おっさん冒険者は足を引きずりながら、俺たちの元を去っていった。
骨が折れないような殴り方をしたので深刻なダメージにはなっていないはずだが、数日は打撲で痛むだろうな。
これで反省してくれればいいんだが……。
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