第2話:転生錬金術師はスキルを錬金する
できればあまり危険なことはしたくないのだが、万が一魔物に襲われたりすれば、自衛の手段は必要になる。
自分の力量というものを早いうちに知っておいた方が良い。
近くにいた灰色のウルフに狙いを定めた。
使うスキルは、魔法攻撃欄にある『火球』に決めた。
スキルは初めて使うものでも自然に使い方がわかるようで、特に練習などは必要ないようだ。
——『火球』。
真っ赤な火の球が生成され、灰色のウルフに向けて飛んでいく。
パンッ!
衝突音が鳴る。
一撃では倒せなかったらしい。
攻撃に気づいたウルフが俺を狙い、走ってくる。
かなり動きは早いが、目で追えないほどではない。
ここは落ち着いて——
パンッ! パンッ! パンッ!
続けざまに三連撃を加えることで、ウルフを倒すことができた。
なるほど、だいたいどのくらいのものか分かってきた。
今のステータスなら問題なく四発でウルフを倒せる。
しかしまとまって襲いかかって来たときには十分対応できるとは言えない。
スキルポイントは余っているみたいだし、火球とステータスだけでも錬金術でレベルアップさせておくか。
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◆ステータス
名前:佐藤慎也
ジョブ:錬金術師
レベル:1
保有SP:3900
保有スキル:
○特殊スキル
『錬金術Lv.∞』『アイテムスロットLv.∞』
○攻撃魔法
『火球Lv.10』『水球Lv.1』『風球Lv.1』『地球Lv.1』『聖球Lv.1』『闇球Lv.1』
○物理攻撃
『基本剣技Lv.1』
○パッシブスキル
『攻撃力強化Lv.10』『防御力強化Lv.10』『攻撃速度強化Lv.10』『移動速度強化Lv.10』『魔法攻撃力強化Lv.10』『魔法抵抗力強化Lv,10』『生命力強化Lv.10』『魔力量強化Lv.10』
攻撃力:S
防御力:S
攻撃速度:S
移動速度:S
魔法攻撃力:S
魔法抵抗力:S
生命力:S
魔力量:S
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スキルレベル1→2の時は2SPの消費でスキルレベルを上げられていたが、スキルレベル2→3の時は3SP、3→4の時は4SPといったようにだんだんと消費SPが増えていくようだ。
合計で405SPの消費。
かなり消費してしまったが、能力値を見るとかなり強化されたようだ。
近くにウルフの群れがいたので、あれで試してみよう。
「おおっ?」
さっきとは比べものにならないほどの力強さを感じる火球が生成された。
メラメラと青く輝く光熱の炎。
それがヒューッとまっすぐウルフの群れに飛んでいく。
ドガガガガアアアア————ンッッッ‼︎
空気が大きく振動する。
けたましい音とともに地面が割れるんじゃないかというくらいの大きな揺れを感じた。
粉塵が舞い、視界はまったくのゼロになってしまっている。
「やったか……?」
粉塵が落ち着いてきて、視界が回復してきた。
火球の着弾地点は高熱で一部ガラス化している。
そこにさっきまでいたウルフの群れはなかった。
おそらくさっきの移動速度的には逃げたということではないだろう。
跡形もなく消えてしまった——といったところか。
ふむ、悪くないんじゃないか?
異世界に転生して無事に人里まで辿り着けるか少し心配だったのだが、これなら道中も問題なく移動できそうだ。
念のために他のスキルのレベルも上げておこうか? と思ったその時。
「ちょ、何があったんだ⁉︎」
「火山の噴火か……⁉︎」
「お、おいあんた大丈夫か!」
冒険者風の男たちが集まってきたのだった。
俺の攻撃による音で、引き寄せてしまったのかもしれない。
しかしどうやら、話している言葉は日本語ではないようだ。
しかし自然と理解できるし、話すこともできる。
「ああ、なんともないよ」
「……そうか。珍しいこともあるもんだな。あんた、見ない顔だが冒険者か?」
「……そうだな」
会社員と言っても通じないだろうし、今まさによくわからない世界で冒険しているともいえるので、冒険者と言っても差し支えないだろう。
「この辺でソロで冒険者ってのは珍しいなあ。もしかして当たりジョブか?」
「当たりジョブ?」
「ん? 『剣聖』とか『賢者』とか……あー、他にも『聖者』とか『聖女』とか色々あるだろ? この辺の魔物は一体ずつならなんとかなるが、群れで襲われたらやべーからな」
なるほど、見るからに当たりジョブといった感じのネーミングだな。
「俺は錬金術師らしいんだが、これって当たりなのか?」
俺が聞き返した瞬間。
三人の冒険者の顔が曇った。
「え、錬金術師……?」
「錬金術師って、神話で聞いたことがあるが……」
「世界最弱のハズレジョブのことか……?」
冒険者は、憐みを感じる目を俺に向けていた。
「ま、まあ……そのなんだ、ジョブだけで全て決まるわけじゃねえからな」
「うんうん、ポーションは作れるって聞くし……魔導具師に比べるとアレだけど……まあ、生きてたら良いことがあるよ。きっと」
「強く生きろよ、少年」
そんな言葉をかけられた。
「錬金術師って弱いのか?」
「知らない方が幸せなこともあるぜ。まあここからは下っていくだけで村に辿り着く。俺たちのアドバイスだが……冒険者はもう辞めたほうがいい。命を大事にな」
ふむ、さっきの火球はかなり強かった気がするのだが、どうやら錬金術師はハズレジョブらしかった。
俺には冒険者は向いていないらしい。
「なるほど、そうだったのか……。下っていけば村があるって話だけど、どのくらいで着くんだ?」
「二十分も普通に歩けば着くだろうよ。気をつけてな」
「ああ、ありがとう」
「おう、達者でな」
俺は気さくな冒険者と分かれ、坂を下った先にあるという村に向かうことにした。
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