最弱無双の転生錬金術師 〜俺だけ使える錬金術でスキルを超絶強化して異世界最強〜

蒼月浩二

プロローグ:錬金術師に転生する

 深夜二時。


 草木も眠る丑三つ時——なんていう表現はもう古い。


 俺の名前は佐藤慎也(さとうしんや)。


 俺のようなブラック企業の社畜は、草木ですら眠るこの夜も今の今まで普通に起きて働いていた。


 そして、明日も当然の如く朝七時出社。


 我が社は月月火水木金金という独自のカレンダーで動いているから、休日などという生温い概念はない。


 ちなみに、とっくに終電は過ぎているが、会社の近くに住んでいるから何の問題もない。


「はあ……」


 不景気の煽りを受け、新卒で入社した会社がこの有り様だった。


 転職しようと何度も思ったが、この通りまったく自由な時間がない。


 退職してから仕事を探せば良いのだが、それでは路頭に迷ってしまう。


 明るい未来が見えない。正直、詰んでいる——と思う。


「そういや、今日はまだログインしてなかったな……」


 そんな俺にも、ひとときの楽しみがある。


 学生時代から続けているソシャゲ。


 しばらくまともにプレイできていないが、毎日一回の無料ガチャだけは欠かさず続けていた。


 ガチャを回す——


「……⁉︎」


 画面が眩く煌めいた。久しぶりに見る確定演出。


 そして、当たったキャラは——


「錬金術師……こんなキャラいたっけ?」


 新キャラの情報は欠かさずチェックしていたはずなのだが、この錬金術師というキャラだけは見たことがなかった。忙しすぎて見逃していたのか……。


 イラストはかっこいい黒衣装の男性キャラクター。


 剣を右手に持ち、左手で魔法を放つようなシチュエーションのようだ。


 剣と魔法を両方使うキャラなんて初めて気がする。


 どうやら、昔からいるキャラを忘れているわけでもなさそうだった。


「とりあえず攻略サイトで調べるか」


 片手でスマホを操作し、いつも使っている攻略サイトを開く。


 サイト内の検索窓に『錬金術師』と入力し、検索。


 しかし——検索結果はありません。


 と、表示されるのみだった。


 新しすぎてまだページが出来上がっていないのだろう。


 明日またチェックしようと思い、スマホをポケットにしまう。


 青信号であることを確認してから横断歩道に踏み出し、歩き始めた時だった。


 ガガガガガ————!


 交差点の死角から、大型トラックが飛び出してきた。


「……⁉︎」


 俺が青信号で渡っているということは、トラックは赤信号。


 いや、この際そんなことはどうでもいいか——


 慌てて避けようとするが、一年ほどまともに休んでいないせいか、身体が言うことを聞かなかった。


 大型トラックはさらに加速して、俺を目掛けて突っ込んでくる。


 運転席が見えた。


 かなり焦っている様子だが、まったく減速する気配はない。


 どうやら、テンパって操作がわからなくなっているのだろう。


 ——俺の人生、ここまでか。


 そう直感した瞬間。


 生まれてから死ぬまでの記憶が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。


 不思議と、死を受け入れていた。


 もはや、今の生活は生きながら死んでいたようなものだったようにも思う。


 もし来世があるのなら、今度は人間らしい幸せな人生を送れますように。


 そう願ってから一秒にも満たない時間で大型トラックと衝突し、俺はこの世を去った。

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