第10話 操縦の基本
ブランクラフトの操縦機器は同形のものが左右1対。
【スティック】×2
【ペダル】×2
【レバー】×2
主要なものは座席の両脇に立つガングリップ型のスティックと、足下のペダル。
副次的なものはスティックの手前にある、前後にスライドするレバー。左側はスロットルレバーで前に押すほどエンジンの出力段階が上がる。まずアキラはそれを一番前まで押しだした。
すぐ左レバーを放して、左スティックを握る。
スティックは前後左右に倒れる仕組みで、指で操作するボタン類が多数ついている。親指で押す大型の十字ボタン1つと、小型ボタン4つ。トリガーが人差指用と小指用の上下に2つ。
【十字ボタン】×1
【小型ボタン】×4
【人差指トリガー】×1
【小指トリガー】×1
左スティックは進行入力で、倒したほうへ機体を移動させる。また上昇するには人差指のトリガーを、下降するには小指のトリガーを引く。
アキラは左スティックを前へと倒し、左右のペダルを踏みこんだ。アキラの乗る戦闘機の姿をしたブランクラフト〘クロード〙が、機尾の2つのエンジンノズルから炎を噴いて前進する!
ゴッ‼
左右のペダルはそれぞれ左右のエンジンに対応している。
踵側を支点にして爪先側を倒すほど、高出力でエンジンを噴射する──出力段階が高いほど少しの傾きで高出力になる──左スティックで指示した方向へ進むよう、噴射方向を調整して。
この時、左右のペダルを同じだけ踏みこめば真っすぐ進むが、踏む深さを変えて左右のエンジン出力に差をつけると、出力が低いほうの半身が遅れて機体はカーブすることになる。
カーブする方法はもう1つ。
移動しながら回転すること。
ペダルはそれ自体を前へと押してスライドさせることもできる。この操作は一度には左右どちらかしかできず、片方を押すともう片方は自動的に後ろに下がる。
これをやると体を左右に向けるように旋回する。
パイロットが両脚のあいだに機体の上下軸を挟んでおり、左右の脚を互い違いに前後させることで軸をこすって回転させているイメージ。
また右スティックは倒したのと同じ方向へと機体を倒して回転させる。これが前後軸と左右軸の回転で、ブランクラフトは3軸どの方向にも回転できる。
全方向への移動と回転、左右のエンジンの出力調整、これらを同時に使いこなし3次元の空を自在に泳ぐ。その時のコクピットの傾きをシミュレーターの動きが体感させてくれる。
(敵機接近!)
前から飛んでくる敵のブランクラフト〘メルス〙、自機の〘クロード〙と同じく旧大戦で活躍した機体の巡航形態が多数はっきり見えたのを合図に、アキラは右レバーを後ろに引いた。
その機能は──変形!
クロードが全身の機構を作動させ、戦闘機の姿の巡航形態から、人型形態へと瞬時に変わった。同時にメルス各機も人型へと変わる。
巡航形態はエンジンが常に後ろ向きなため前方以外への移動が苦手。一方、人型形態はエンジンが両脚の下腿部に来て、全身の関節を動かすことで、どの方向への移動も回転も柔軟に行える。
人型は空気抵抗が巡航形態より大きくなるので速度は下がるが、交戦中は小回りのよさのほうが重宝する。クロードが巡航形態では使えない手でガンポッドを構え──
グッ
アキラは右スティックの十字ボタンの中央を押した。これを押しているあいだは精密射撃の入力がされる。
ピピピ……
全周モニター上に主武装であるガンポッドの照準を表す〔緑色の
赤枠の中には現在のロックオン対象であることを示す〔赤色の十字線〕があり、それが〔緑色の十字線〕と重なって〔黄色の十字線〕へと変色する。
ピーッ!
グイッ‼
発砲を促す効果音と同時に、アキラは右スティックの人差指トリガーを引きしぼっていた。ガンポッド機関銃が弾丸を連射!
ズガァン‼
バババッ‼
「よっと!」
アキラはそれらの軌道を見て、どの機体からの弾にも当たらない方向へと機体を回避させた。スイスイと弾雨をかいくぐりながら──今度は十字ボタンを押さずに人差指トリガーだけを引く!
バババッ──ズガァン‼
先ほどの機体を撃墜してから新たに赤色の十字線がついていた別の敵1機を、アキラ機の機関銃の弾がまた貫いた。
十字ボタンを押さず人差指トリガーだけだとクイックショット、ロックオン対象へと機体が自動で銃口を向けて発砲する。
トリガーを引いた瞬間の銃口が目標からそれているほど発砲まで時間がかかり回避されやすくなる反面、照準のために腕を動かしつづけるため全身の動きが鈍くなる精密射撃より細かく動きながらの射撃に向いている。
ズガァン‼
敵からの攻撃は全て華麗に回避してみせて1発も被弾せず、己の攻撃は一度も外すことなく、アキラは全ての
『ミッション、コンプリート‼』
¶
アキラはシミュレーターの球形マシンから出た。普段どおりに上手く戦えたが、現役パイロットの目にはどう映ったか。外で観戦していたカグヤに問う。
「どうだった?」
「お見事でしたわ! ……ただ、申しあげにくいのですが」
「えっ、なに⁉」
「難易度、イージーでしたわよね……?」
「うん……」
難易度には4段階ある。下から〔
「ダメ、かな」
「いえ、よく戦えていました。ただ、機体速度が遅いのはまだよいのですが……弾速が遅くなることは現実ではありえません」
「……」
「レーザーなら光速、実弾でも超音速の弾を〝見てからよける〟のは現実には不可能です。そのよけかたをいくら磨いても実戦では使えません」
「な、なるほど」
「弾速だけリアルにして、やってみてください」
「はい……」
アキラは他の難易度はイージーのまま、弾速だけ現実そのままのリアルに設定して、同じステージに再挑戦した。
ちゅどーん
敵の最初の攻撃を避けられず、瞬殺された。
それから何度やっても、同じ結果になった。
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