第四章 戦場

第9話 孤立

 厳しい判定もできる、つまり温室の花ではないということが知れただけでも私にとっては、過ごしやすい環境ができあがっていた。


 同じカレッジに進んだ戦友からは、アイツらは自業自得だ、虎の尾を踏んだんだという話をするくらいであった。


 戦友は現状でカレッジに進んだのは三人で残り二人は別のカレッジに進んでいた、専攻が違ったのである。


 それは致し方なかった。


 フランクに話すのを許している戦友は、エクレールとも付き合いが長かった。


 お互いにやり取りから察することもでき、信頼を置けたのである。


 ただそういう雲行きでは無かったようで、一部の国が挙兵きょへいを考えているという不穏ふおんうわさが出回ったのであった。


 学内での噂は、流した奴がすぐにバレて情報の真偽を、学内で先生方が調べるといったようなことも行われた。


 学内での噂はただの噂程度のものだったが、情報のソースが不味まずかった。


 確実に何かやらかしそうなところに、つながったからである。


 審議をそこに求めるより早くに、そいつらが挙兵したのだった。


 国でいえば挙兵した国は大小込みで十は超えていた、しかもより厄介なことに固まっていたのである。


 つまり戦地が広がることを示していた。


 そして各家に出征要請が下ったのである。


 私はエクレールと一緒に参戦したかったが、お家の都合でそう上手くかぶらなかった。


 私は戦友やエクレールとは離れたところに布陣させられたのだ、単騎掛けのできない局面で、私は勇名により、その布陣の大将補佐についていたのだ。


 だが、その大将は初陣であるだけでなく、戦の戦況読みがかなり遅かったのだ、ことあるごとに戦況予測をいいながら補佐に着いたのだが。


 補佐のいうことを聞かないどころか、指揮官の采配も無視して動こうとしたので補佐の権限の内一つを使って、指揮官の采配したところに動くよう進言した。


 だが動かず、すでに時遅く周りを囲まれていたのであった。


 しかも軍を捨てて逃げる策に走り、逆に即見つかり、全ての情報を吐いたうえで殺されるという一番やらかしてはいけない行為を行ったのだった。


 おかげでこちらの位置情報は筒抜けのまま戦闘が開始され、雪崩れ込む敵に対し応戦できたのは一部の実戦組のみとなった。


 敵は十重二十重と陣を引いているので突破は難しく、全滅もかくやといったところであった。


 念のため自陣に潜んでいるシノビをあぶり出し情報を得たのはいいものの逃げる先が無かったのである。


 本格的に孤立しており、十重二十重とえはたえの陣をつらぬいてようやく合流できるかといったところになっていた。


 パートナーのフォルテもこの状況にはなんともいえずかといって手をこまねいていては命に危険が迫るといった様子で、私も苦渋くじゅうの決断をせまられたのであった。


 敵陣を突破するか否か、否と答えても囲まれているためいずれ圧迫死するのは目に見えていたため。


 圧迫死と敵陣突破の二票で決を採りみなが敵陣突破を唱えたのであった。


「剣林弾雨は覚悟ができています、将、御采配を」と私に向って唱えられた。


「皆の命預かる、いや、もらうぞ! 出来る限り速く突破せよ! 死に急ぐな! 死に急いだら、そいつも引っ張ってでも行くからな!」と答えた。


「私が倒れても、前に進み続けろ!」とも声をかけた。


「斬り込むぞ、息を合わせろ!」と唱え敵陣に斬り込んだ、深夜の斬り込みである。


 これが長い戦いを予感させるものとなるとは思わなかったのだ、この時点で味方機は三十機ほどしか残って無かった。


 元々師団規模百五十機ほどがいたはずが、今は二個中隊半規模である。


 十重二十重の包囲網を抜けられる気がしないのだ。


 だがやるしかなかった、それ以外に道が無かったからだともいえた。


 そして深夜の突撃が始まるのであった、深夜でしか稼げないという読みも当たっていた。

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