第15話 ピリララ ピリララ

「ていうわけでよ、一緒に組んで狩にいかねぇか」




 チンピラっぽい声の掛け方をしてきた発掘家は、パーティーへの勧誘だった。

 2人組でもう一人ぐらい人手が欲しいとのことだそうだ。

 願ってもない話ではあるのだが、懸念が一つだけある...


「ちょっとー、そのお兄さんは私たちが狙ってたの!」

「お兄さん、そんなむさ苦しいパーティーやめてこっち来ない?」


 また別のグループが話しかけてきた。

 3人組の女性パーティーのようだ。


「早い者勝ちなんだよ、お前ら引っ込んでろ」


「大事なのはお兄さんの意思でしょー」


 あー、懸念が当たってそうな気配が出てきた

 この人たち両方とも装備がボロボロだ。

 あまり修繕もしておらず、汚れもついている。

 装備を整備しない時点で信用できないな。

 仕事道具は常に最善の状態を保つって安全意識が大切だとベルティアさんの説教でも聞いた気がする。


 これ、寄生プレイしてくるタイプの人なんじゃないか?

 とりあえず、断わっておくか...


「すいません、今は一人で行動する予定なので、今回は無かったということで」


 そう言って、二パーティーをかき分け掲示板に向かった。


「ッチ、生意気な異邦人だ」

「調子乗ってるわねー、これだから異邦人は」


 聞こえてるぞ、ボロが出るの早すぎるだろ

 寄生って分かったから、今後一切つき合わなくて済むからいいんだが...


 ・

 ・

 ・


 掲示板を見てみたものの、難易度がサッパリ解らん

 モンスター討伐が主なのだが、そこにはモンスター名が書かれている。

 ぶっちゃけ、虎とか鹿とかウサギとか種族名で呼んでた関係でその辺一切覚えてないんですよ...


 今度図鑑でも買いに行こう...


 そんなことを考えながら、掲示板の前で頭を悩ませていたら後ろから声を掛けられた。

 また寄生系の発掘家か...?


「君、ちょっといいかな?」


 そこには、レスラーのような体系の大柄の男性が立っていた。

 背中には大盾を背負い、鎧をがちがちに着込んでいる。

 装備には軽い傷があるものの綺麗に手入れされていた。


「パーティーの誘いなのだが、ここではなんだ」

「向こうで飲み物でも飲みながらゆっくり話したい」

「もちろん奢りだ、どうだい?」


 先ほどの勧誘に比べるとかなり丁寧に感じる。

 第一印象は悪くない、話だけでも聞いてみる気にはなった


「ええ、いいですよ」


 ・

 ・

 ・


「まずは自己紹介だね、私はグルド」

「見ての通り大盾使いだ」

「1ヵ月ほど前から発掘家になったんだ」


「タダノっていいます」

「発掘家は今日が初めてなので、戦闘スタイルは特に決まってません」

「強いて言いうなら、機動力重視の近接系とかですかね」


「タダノ君、まずは話に付き合ってくれてありがとう」

「で、本題なのだが私たちのパーティーに入ってほしいんだ」

「私のパーティーは2人パーティーでね」

「相方はここが苦手で来ていないんだ」


 解らんでもない、俺も体育会系のグイグイしたノリはあまり好みではない

 さっきの発掘家たちも正直あまり付き合いたくない類の人種だった


「ちなみに、もう一人はどんな方なんですか?」


「ああ、魔法使いの女の子なんだ。中遠距離で敵を攻撃する役目だね」

「私が前線で敵を引き付け、魔法で一掃するって戦い方なんだ」

「しかし、私の抑えきれない敵が出てきたときに脆くねて」

「君のような近接系の人が欲しかったんだ」


 一見聞くとかなりいい話だ。

 だからこそ、そんなパーティーが人を募集する理由がわからない

 かなり優良物件すぎて、普通はすでに固定パーティーになってそうだが


「ただね、そのもう一人の子が難儀な性格をしていてね」

「ここのギルドではもう組んでくれる人がいないんだよ...」


 あーそういうわけあり物件か


「なるほど」

「会ってみないと判断できないですね」

「今から会えますか?その相方さんに」


「ああ、遺跡に先にいっているんだ」

「実力を見るだけでもいいから来てくれるかい?」


「ええ、わかりました。」


 さて、どんな人が出てくるんだろうか

 大体、クッソ我儘とかクッソ臆病とかそんなんだと思うが...


 あのクソ女神になれるとそれでもまともに見えてきそうだな


 ・

 ・

 ・



 グルドさんに案内されて、初心者用の遺跡まで足を運んだ。


「おーい、メリー」


「グルド、遅い!!」

「今日の狩場が取られちゃうじゃん!!」


 ちっこい、金髪の女の子が立っていた。

 見た目だと10歳とかそのぐらいだけど大丈夫か!?


「あの、グルドさんこの子ですか...?」


「ああ、彼女はメリー」

「一応15歳で成人済みだよ」


 そういえば、この世界って15で成人だったな。

 それでも子供には変わりないが...


「グルド、ちゃんと要望にあった人?」


「ああ、そうだよ」

「彼はタダノ君、今日発掘家デビューの近接系だよ」


「私はメリー、よろしくね」

「じゃあ行こう!」


 俺を少しの間まじまじと見た後に、すぐに遺跡へ歩き始めた。

 なんというかあっさりしている子だな。


 ・

 ・

 ・


「よかった、まだ狩場空いてたね!」


 狩場とやらに着いたらしい

 そこには普通のサイズのイグアナのような生物が5匹ほどいた。


「じゃあ、まずは私たちが狩りするから見てて頂戴」

「グルドいつも通りにね」


「あいよー」


 グルドさんは盾を構えた

 なにやら喉を指でトントンとしている

 次の瞬間グルドさんから人間では出せないような生物の鳴き声が発された。


 その声を聴くなりイグアナがグルドさんに向けて続々と集まってきた

 鳴き声を出して、モンスターを誘い出したようだ

 そんな魔法もあるんだな



 グルドさんはイグアナにガンガンと体当たりや噛みつきを受けていた。

 しかし、上手い事盾で受け流してダメージを受けてる様子は見られなかった。


 一方メリーちゃんは...













「『ピリララ ピリララ メリーの魔法でトカゲさんよ、丸焦げになぁれ!』」


 !?

 なんというか、一昔前の魔法少女って感じの詠唱だな...

 なお、メリーちゃんから出た魔法は見事にトカゲの群れを丸焦げにしました。


「と、こんな感じです」


 グルドさんは何事もなかったのように説明していた。

 後ろではトカゲの落とした魔石をセコセコとメリーちゃんが拾っていた。



「じゃあ、次タダノの番ね」

「グルド一匹だけ呼び出しできる」


「あいよー」


 そういうと、グルドさんは器用に一匹だけ呼び寄せた




 ぶっちゃけ戦ったことないから強さはわからんけど

 たぶん、ウサギより弱いんじゃないか?

 とりあえず、グルドさんにヘイトが向いているトカゲに石を投擲し、こっちに呼び寄せた。


 メリーちゃんとグルドさんが品定めするようにこちらを見ている。



 足に魔力を満たし、トカゲの真横に飛び出した。

 そのまま2歩目でトカゲの真上を取り、そのまま首を切り落として見せた


 爬虫類は首を真上に向けられない

 だから、真上から攻撃したのだが、ちょっと過剰だったかもしれない

 あのトカゲは反応が鈍いようで、正面から切るだけでも十分対処できそうだった。


 しかし、ギルドの鍛冶屋さんはすごいかもしれないな

 切れ味が別物になってた。

 首切り自体は鹿で慣れてしまったが、それでもあっさり切れてしまった。


「すごいわね」


「かなりいいアタッカーだな」


 2人からの評価も概ね好評のようだ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る