第136話 第三者視点5
アランとエリザベートは手枷を嵌められ目隠しをされ、馬車に乗せられてどこぞに運ばれた。
「着いたぞ! 降りろ!」
そう言われても目隠しをされたままでは動きようが無い。座ったまま黙ってジッとしていると、業を煮やしたのか引き摺るように無理矢理立たされて、
「歩け! 世話を焼かせるな!」
後ろから小突かれた。
「分かった分かった。歩くから乱暴しないでくれ。こっちにはレディーがいるんだからな。レディーは優しく扱うもんだと教育されなかったか?」
「減らず口を叩くな!」
もう一度小突かれた。
「痛ぇな。勘弁してくれよ。目が見えないんだ。頼みから手を取って先導してくれよ。段差とかにも注意してくれ」
「しょうがねぇな。ほら、こっちだ」
「イヤなら目隠しを外してくれてもいいんだけど?」
「それはダメだ。おら、早く歩け」
「へいへい。お嬢、大丈夫?」
「えぇ、なんとか...」
二人は誘拐犯人どもに手を引かれながら、どこぞの家の中に入って行った。そこでやっと目隠しを外された。
急に明るくなった視界に目を瞬かせながら辺りを見回したアランは、座敷牢のような所に押し込められたのだと気付いた。
「そこで大人しくしていろ」
鉄格子越しにそう言って、誘拐犯どもは部屋を出て行った。
「ここはどこかしら.. 」
エリザベートが不安そうに辺りを見回しながら呟く。
「多分だけど、馬車の走った距離から判断するに町の郊外か、あるいは町を出てすぐの辺りにある廃屋ってところじゃないかな~」
アランが冷静に分析する。
「なるほど...」
「さて、お嬢。縄抜けしますか」
「分かったわ」
これあることを予想していた二人は、暗器を予め服の至る所に隠していた。誘拐犯どもは手枷を嵌めたことで油断したのか、身体検査を全くしなかった。だから手枷をされていたとしても、互いに隠し場所を探れば簡単に武器が手に入ることになる。
アランは小さ目のナイフを、エリザベートは小刀をそれぞれ出して、両手を縛っているロープに切れ込みを入れ始めた。
「お嬢、ロープを完全には切らないでね? 油断させるためにちょっと力を入れれば切れる程度に残しといて?」
「えぇ、分かったわ」
二人は準備万端整えて主犯の到着を待った。
◇◇◇
一方その頃、アンリエット達の元へはエリザベートの公爵家子飼い隠密衆の一人が報告に来ていた。
「そう。報告ありがとう。あなたもすぐに応援に行ってちょうだい。あなたもよ?」
アンリエットは自分達の護衛に付いていた隠密衆の一人に向かってもそう言った。
「ですが...」
エリザベートからはアンリエットの側を離れるなと厳命されているのだろう。隠密衆は躊躇った。
「大丈夫よ。こっちはもう心配要らないでしょうから。向こうに合流してちょうだい」
「...分かりました」
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