第35話 開放と崩壊
俺はアドリアーノの話に頭の整理が追い付いていなかった。
俺の今までの魔力喪失についての考察は全く持って見当違いだったという事か?
そこに悪魔バルバトスが不機嫌そうに俺達の会話に割って入った。
「おい魔族。
いきなり入って来て世間話とは
随分失礼じゃないか?」
「黙れ、下っ端の悪魔風情が!
200年ぶりの友人との再会なんだ。
黙って終わるまで待っていろ」
アドリアーノは全身にマナを纏って睨みつけるとバルバトスは冷や汗をかきながら一歩後退した。
「さて…。
話を続けようかリッキーリード」
さすがのちびりそうになる様な魔王オーラ全開だな…。
友達と思ってくれてて良かったよ…。
「なあ…。
俺が呪いにかかっているだって?
俺は自分の魔力実験で
魔力が無くなったんだぞ」
「お前本気でそう思っていたのか?
お前は凄い奴だが相変わらず
昔からどこか抜けているな…。
現に俺は200年前の『ある時』から
お前の魔力が減り始めていた事に
気付いていた。
本来なら直ぐに魔力が枯渇する様な
即効性のある強力な呪いだが、
流石のお前の膨大な魔力だ…。
全ての魔力を喰らい尽くす迄には
少々のタイムラグがあったのだろう…。
大方、最後の魔力実験で
残りの魔力を使い切った際に
お前は魔力実験のせいで魔力が
無くなったと勘違いしたんだろう」
「何…だと…。
マジかよ…」
確かにそう言われて見れば不自然過ぎる…。
しょっちゅう魔力制御の練習ばかりしていたから、魔力が減少し続けていた事に気付かなくても不思議じゃない。
「しかし、アドリアーノ。
シャームリアドーをかけられた時に
一時的に俺の魔力が戻ったんだが?」
「それは呪いの上書きだ。
基本的に上位の呪いは
一人に対して一種のみ発動し
呪いが解除される迄、
その呪いを背負うことになる。
しかし、稀に新しい
上位の呪い術式をかける事で
一時的に呪いが
上書きされるケースがある。
もし、そうなった時、通常の人間はその
上書きの際の拒絶反応で大体絶命する」
「上書き?
でも、ダミアンが言うにシャームリアドーも
魔力を喰らいつくす呪いだったはず…」
「その呪いが、お前の魔力を封じるには
余りに微弱だった為だ。
しかし一時的に、上書きと言う工程だけが発動した訳だ。
そして直ぐにお前の身体によって無効化され
元の呪いに戻ったという事だな。
その間、時間にして3分といった所だ」
「3分…。
それで俺は3分だけ強くなったように感じたのか…」
「そこで俺がこれからお前に
新たに呪いをかけてやろう。
相性からしてシャームリアドーと
同じような効果が見込める筈だ。
その呪いが消えるまで
5分といったところだろう。
あのレベルの悪魔程度なら
お前には十分な時間だろう」
「そうなの…?
じゃあ…お願いします」
「黙って聞いていれば!
貴様俺を誰だと思っている!
そんな人間のただのチビに
私が5分で負けるとでも言いたいのか!?」
「ああ。
そうだ。
リッキーリードよ行ってこい」
アドリアーノは俺には術式をかけた。
《ドクン!!》
以前シャームリアドーの時と同じような反応が出た。
そして俺の体内から前と同じ様に魔力が溢れ出した。
何だろう…。
なんか、またパワーアップしてるのか?
俺の緑色の魔力が俺の周りで竜巻の様に巻き上がり俺を包み込んだ。
「凄い…。
これが大魔道士リッキーリードの
力なのか…。」
ディーン達は俺の魔力に驚き動く事すら出来なくなった。
「やはりな…。
そうだ。
お前の魔力は常に増幅を続けていた。
お前はまだ自分の今の本当の力を知らない。
もし呪いが解除されればこの程度ではすまない筈…。
本当にお前は見ていて
飽きない面白い男だ…」
俺の魔力を見た悪魔バルバトスは青ざめ震えだした。
「何だ!
この魔力は…。
こいつは本当に人間なのか!
ありえない!」
バルバトスは隣にいるアンガス王の頭を鷲掴みにした。
そして容姿が変形を遂げ口が化け物の様に拡がり、隣にいたアンガス王を丸呑みした。
バルバトスの魔力が更に増大しさらなる変形を遂げた!
「リッキーリードといったか…、
貴様は…。
この世に存在してはいけない!
お前は…一体なんなんだ!」
「俺も…。
自分が何者なのかすら分からないよ」
魔族大帝アドリアーノはニヤリと笑った。
「ふん…。
世界を超越した魔神リッキーリードよ
お前は…この世界をどう変える」
俺は静かに魔術を繰り出した。
『エクスプロージョン…』
ドロナック城の屋根と壁が吹き飛んだ。
◆◆◆
城塞都市ドロナック
城壁周辺
キングジェイ傭兵団とスモークランド連合軍は無限に増え続けるアンデッドと怪物と化したフィリップ王子との激戦を繰り広げていた。
フィリップ王子は自我を失っていた為、統率を失ったアンデッド達はジェイ達だけではなくドロナックの城壁にも登り始めそこではドロナックの衛兵達とも戦闘が始まり辺りは地獄絵図と化していた。
「ヴィクターさん!
ビリーさん!
どうだ?体力は持ちそうかい?」
「何とか気力だけは
保っていると言った所だろうか…。
そちらはどうだ…?」
「俺の魔力にも限界はあるからな。
ダメージを与えられてるのかも
微妙なところだぜ…。
ん…。
何だ?
あっちから誰か歩いて来たぜ」
そこに3人の人影がゆっくりとまるで散歩でもしているかの様に現れた。
「おいあんたら!
ここは今、戦場だぞ!
って…おい。
あんたら魔族か…」
ジェイは驚いた…。
歩いて来たその3人の容姿はジェイの知っている人間の容姿ではなかった。
中央にいる背の高い女は人間にも見えなくもないが両サイドにいる二人の男は明らかに人間ではなかった。
ゆっくり歩いて来ると女はジェイに話しかけた。
「おい、お前。
私はリリアン・ブラッドフィールド。
リッキーリード様は何処にいるか
知っているか?」
「あんたは一体何者なんだ?
リッキーリードの仲間なのか?
…って危ねえ!」
そこにフィリップが飛びかかって来た!
しかし、リリアン・ブラッドフィールドは腰にかけていた剣を素早く抜き、向かって来たフィリップの首を一瞬にして切り落とした。
「もう一度聞く。
リッキーリード様は何処にいるか
知っているか?」
To Be Continued…
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