第29話 戦場の戦士



◇◇◇


 ヴィクターとビリーは疲弊していた。

 倒しても倒しても死体を喰らい増え続けるアンデッドの大群。

 体力だけが徐々に奪われていく…。


「もう既に1000体は、いるな…。

 ヴィクターよ…。

 あとどのくらい戦える?」 


「弱気だなビリーよ。

 しかし、いつか限界がくる…。

 しかも今も…尚、増え続けている!」


 それを見ているフィリップ王子は不敵な笑みを浮かべていた。


「もはや今、連合軍で戦える

 戦力はせいぜい1000と言ったところか」


「さ…さすがフィリップ様の術式です!」


「ここで一気に勝負を決める。

 ブロックを使い終わらせる」


「ブロックですか!

 ですがもう既に我らが軍の勝利は

 確実かと…」


「ストラス人のやつらは

 潜入、暗殺に長けた民族だ。

 それに潜入隊長のディーンの

 姿も見えない。

 大方、二手に別れて城内にも

 部隊を送っているのだろう。

 城内にも国家騎士団も待機させてあるが

 こっちも早く片付けて

 そちらにも加勢する。

 今回は、父上もかなり苛立っておられる。

 失敗は許されないからな」


「流石はフィリップ様…。

 実に御聡明でいらっしゃる!

 皆の者!ブロックの檻を持ってこい!」


 ドロナック軍の兵士は恐怖に震えながら車輪の付いた巨大な檻を引いてきた。


「よし。

 開けろ!」

 

 兵士は青ざめた顔をしながら、檻を解錠した。

 その瞬間巨大な手が現れ、兵士は檻に引きずり込まれた!

 檻の中からは兵士の悲鳴と肉と骨が砕かれる音が響き渡った。

 周りにいたドロナック軍兵士は震えながら後退りを始めた。

 そして、檻の枠を掴む巨大な爪を持つ手が出現し、中から悍しい怪物が現れた。

 

 その怪物の顔は目や鼻はなく顔全体が無数の牙を持った口でしめられていた。

 緑色の肌は爛れて悪臭を放っている。

 怪物は叫び声を上げながら暴れ出したが、怪物の前にフィリップが立ち塞がり黒いマナを放ち怪物の動きを止めた。


「ブロック。

 命令だ。

 敵軍を殲滅しろ」


 怪物ブロックは叫び声を上げながら大きな跳躍をして戦場の中に着地した。

 そして、戦場は地獄と化した。

 連合軍の兵士の身体が次々と木の葉の様に舞い上がり辺りには血の雨が降った。


「ビリーよ…。

 これは夢か…?

 私は悪夢を見ているのか…」


 そして、怪物ブロックはヴィクターの前に立ち雄叫びを上げながらヴィクターに襲い掛かった!

 ヴィクターは死を覚悟した…。


 その時、怪物ブロックの顔に特大の魔力の弾丸が撃ち込まれた!

 怪物ブロックは吹っ飛ばされ、フィリップは目を疑った。


 そこに頭を掻きながら背の高い、褐色の肌を持つ男がゆっくりと歩いて来た。


「あんたもストラス人か?

 ひとつ質問したい。

 あんたらの仲間にはリッキーリードが

 いるのか?」


「…。

 貴方は何者だ?」


「俺はラディッチ大陸の戦士

 キングジェイ傭兵団隊長

 キング・ジェイだ。

 質問に答えてくれ。

 リッキーリードが生きているのか?

 そしてお前達の仲間なのか?」


「リッキーリード様は復活なされた…。 

 この戦で我々と共に戦って下さっている。

 今は訳あってこの場にはいない…」


「そうか…なる程。

 結論から言う。

 俺をリッキーリードに合わせてくれ。

 そしたら、あんたらに加勢する」


「…。

 今は味方は少しでも必要だ…。

 そして貴方は相当な腕を持っている様だ。

 今の私に…

 拒否出来る選択肢はもはやはない。

 しかし、リッキーリード様に会って

 どうするつもりだ?」


「どうもしない…。

 世界のあるべき真実を聞きたいだけだ。


 カイル、レオナ準備はいいか?」


「無論だ。

 俺はあのデカイ化け物を

 貰うが構わんか?」


「ああ、任せたぞ相棒!

 じゃあレオナと俺で

 このアンデッド共をやっちまうか?」

 

「はいはい!

 分かったわよ!

 早く終わらせるわよ!」


 ジェイは特大の回転式魔砲光銃を構え、レオナはブースト魔術でジェイの魔力をアップさせる術式をかけた。

 ジェイの連射される魔法光弾が次々とアンデッド達をなぎ倒し始めた!


 そして、ジェイに吹っ飛ばされた怪物ブロックがゆっくりと起き上がったが、目の前には巨躯の重戦士が立っていた。


「おい、怪物よ。

 言葉は話せるか?」


「アガー!ガー!」


「そうか、話せぬか…。

 我が名はカイル。

 ラディッチの戦士である。

 悪く思うな。

 訳あってお前を斬る」


 カイルは肩に担いだ巨大な斧で怪物ブロックの胴体を真っ二つに両断した。


        To Be Continued…



     

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