第9幕 それから――
[虹架高校_廊下]
ヘイムダル「次の公演は、オレが主役で決まりだなっ! 有希人と2人主役でもいいぞ!!」
ブラギ 「喜劇を通り越して、コントにでもするつもりですか?」
有希人 「ブラギ、いつの間に、コントなんて言葉まで覚えたの?」
トール 「俺は、何役でもやってやるさ。有希人と、お前らとまた舞台に立てるならな」
バルドル 「僕もです! どんな役でも、有希人くんと一緒なら、喜んで!」
有希人 「うん。次はこの5人でどんな芝居ができるのか、俺も、今からワクワクしてるよ」
ヘイムダル「だよな、だよな! 今度こそ、ロキの奴に絶対勝つぞー!!」
有希人 「……けど、『ワクワクしてる』のは、鷹岡さんも同じみたいでね。コンクールの結果もあって、『次の公演は、もっとしごく』って言ってたよ」
トール・ヘイムダル・バルドル・ブラギ「「「「……」」」」
トール 「……稽古が始まる前に、このメンツで、息抜きでも行っとくか」
有希人 「あは。前みたいに、『そんな暇はない』って言いたいところだけど、……いいかもね。みんなとなら。少し、ゆっくり歩くのも」
[東所沢駅前]
鷹岡 「ふん。相変わらず甘ぇんだよ、お前は。理想論ばっか謳いやがって、頭ガチガチの爺さんか」
竜崎 「サクラ演劇コンクールで負けを認めただろ。お前のやり方じゃ、あれが限界ってことだ」
鷹岡 「ああ? あの時は勝ちを譲ったが、俺のやり方が間違ってたって証明にはならねえだろ」
草鹿 「はいはい、そこまで、そこまで!」
竜崎 「なんだ? 草鹿。こいつの肩持つのか?」
鷹岡 「そーだ。お前はどうなんだ、
草鹿 「絡むねぇ。おれはがんばる子たちの味方だよ。ほら、おっさんども、帰るよー!」
竜崎・洸「「おっさんじゃねえ!」」
草鹿 「そんなとこばっか息合って……もー、面倒みきれませんよ、おれは! そんなだから、モテないんだよ2人とも!!」
[アースガルズ]
スマホで“リズム&ドラムス”をプレイするオーディン。
オーディン「──よっ……。──っ! はは、どうだ! これぞ最高神の実力よ!」
男神 「……オーディン様。また“リズドラ”ですか」
オーディン「おお。ちょうどいいところに。見よ。世界ランク1位だぞ! ふふん。ネット上で、みなが“神”と崇めておるわ」
男神 「……はあ。最高神ご本人が、何を仰るのやら……」
[東所沢駅前_喫茶店]
凛のスマホにメッセージが届く。
北兎凛 「ん……? 誰? “東堂章”? ……ああ、律の先輩ね」
――――――
章 『北兎凜さま初めまして、中都演劇部の東堂章と申します。突然ごめんなさい。律くんからID聞きました。迷惑だったらホントにごめんなさい! でも、よかったら、たまに、メッセージ送ってもいいですか? 馴れ馴れしかったらホントごめんなさい!』
――――――
凛 「ふっ……『ごめんなさい、ごめんなさい』って。文面がもう挙動不審じゃない。……まあ、教育しがいがあるって意味じゃ、面白いかもね。私の連絡先教えるくらいなんだから、“合格”なんでしょ、律」
[中都高校_廊下]
雄三 「今度演劇部の最優秀賞記念公演やりまーす! 観に来て……ねっ!!」
雄二 「おい。あんまり勢いよくチラシ差し出すな。逃げられてんだろ」
雄三 「え~? だってシュバっと出さないと、避けられるじゃ~ん!」
雄一 「お前ら! もっと丁寧かつ素早くだ! 見てろ……こうだ! こうっ!」
雄二・雄三「「おお~! さすが兄ちゃん!!」」
雄一 「フン。このくらい技、キメられなくてどーすんだ。我らが演劇部の、大事な宣伝なんだからな! 気合い入れろ!」
雄二・雄三「「おー!!」」
[中都高校_演劇部部室]
ハジメ(真尋)『……君と俺の出会いは、神様の気まぐれだった』
リョウ(ロキ)『そ。何もかも、たまたまだ。そんな相手と、無理にトモダチになる必要ないだろ?』
リョウ(ロキ)『……ハジメ。もう、これ以上俺に関わるな』
ハジメ(真尋)『……いやだ!』
リョウ(ロキ)『いやだって、お前……』
ハジメ(真尋)『だって俺は、出会ったのが君で……リョウでよかったと思ってる。何もかも、運命──……いや、“運命じゃない”』
リョウ(ロキ)『……え』
ハジメ(真尋)『神様の決めた運命さえも超えてみせる! だから、お願いだ。俺の手を取ってくれ……!』
総介、手のひらを打つ。
総介 「うん! やっぱこっちのほうがイイね!」
章 「前の公演の時も、このシーン十分評判よかったのに。まーた結構な大直しさせやがって!」
総介 「とかなんとか言って、アキもこっちの方がイイって思ってるクセにぃ!」
章 「……くそ~。俺、総介に何回このパターンで押し切られれば気が済むんだ……」
律 「あ。今の見てたら、なんか──メロディ降ってきました」
総介 「え。待って待って。このタイミングで曲変えるのはさすがに急よりっちゃん!?」
章 「台本直すのだって、十分急だっただろうがよ!」
衣月 「……ごめん総介。今のを見てたら、衣装もちょっとだけアレンジしたくなってきたんだけど……」
総介 「もうっ! みんなの演出家泣かせっ!! 本番まで時間ないんだから、超特急でね! ……てなわけで、またいろいろ変わるけど、対応オッケー? 2人とも」
真尋 「うん、もちろん」
ロキ 「これが、中都演劇部、だろ?」
総介 「……さあ。今日も本番だ。みんな、準備いい?」
章 「おう!」
衣月 「うん」
律 「はい!」
総介 「6人で創る“神級”の2人芝居、開幕するよ」
総介 「10秒前……」
総介 「……5秒前……」
総介 「4、3、2…………」
真尋 「俺たちの“しばい”だ。……行こう、ロキ」
ロキ 「おう。行くぞ、真尋」
「「「「「「開演!」」」」」」
<第14章 本編終了>
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