第9幕 それから――

[虹架高校_廊下]


ヘイムダル「次の公演は、オレが主役で決まりだなっ! 有希人と2人主役でもいいぞ!!」

ブラギ  「喜劇を通り越して、コントにでもするつもりですか?」

有希人  「ブラギ、いつの間に、コントなんて言葉まで覚えたの?」


14章9節


トール  「俺は、何役でもやってやるさ。有希人と、お前らとまた舞台に立てるならな」

バルドル 「僕もです! どんな役でも、有希人くんと一緒なら、喜んで!」


14章9節


有希人  「うん。次はこの5人でどんな芝居ができるのか、俺も、今からワクワクしてるよ」

ヘイムダル「だよな、だよな! 今度こそ、ロキの奴に絶対勝つぞー!!」

有希人  「……けど、『ワクワクしてる』のは、鷹岡さんも同じみたいでね。コンクールの結果もあって、『次の公演は、もっとしごく』って言ってたよ」


トール・ヘイムダル・バルドル・ブラギ「「「「……」」」」


トール  「……稽古が始まる前に、このメンツで、息抜きでも行っとくか」

有希人  「あは。前みたいに、『そんな暇はない』って言いたいところだけど、……いいかもね。みんなとなら。少し、ゆっくり歩くのも」





[東所沢駅前]


鷹岡   「ふん。相変わらず甘ぇんだよ、お前は。理想論ばっか謳いやがって、頭ガチガチの爺さんか」

竜崎   「サクラ演劇コンクールで負けを認めただろ。お前のやり方じゃ、あれが限界ってことだ」

鷹岡   「ああ? あの時は勝ちを譲ったが、俺のやり方が間違ってたって証明にはならねえだろ」

草鹿   「はいはい、そこまで、そこまで!」

竜崎   「なんだ? 草鹿。こいつの肩持つのか?」

鷹岡   「そーだ。お前はどうなんだ、しん

草鹿   「絡むねぇ。おれはがんばる子たちの味方だよ。ほら、おっさんども、帰るよー!」


竜崎・洸「「おっさんじゃねえ!」」


14章9節


草鹿   「そんなとこばっか息合って……もー、面倒みきれませんよ、おれは! そんなだから、モテないんだよ2人とも!!」




[アースガルズ]


 スマホで“リズム&ドラムス”をプレイするオーディン。


オーディン「──よっ……。──っ! はは、どうだ! これぞ最高神の実力よ!」

男神   「……オーディン様。また“リズドラ”ですか」


14章9節


オーディン「おお。ちょうどいいところに。見よ。世界ランク1位だぞ! ふふん。ネット上で、みなが“神”と崇めておるわ」

男神   「……はあ。最高神ご本人が、何を仰るのやら……」




[東所沢駅前_喫茶店]


 凛のスマホにメッセージが届く。


北兎凛   「ん……? 誰? “東堂章”? ……ああ、律の先輩ね」


――――――

章     『北兎凜さま初めまして、中都演劇部の東堂章と申します。突然ごめんなさい。律くんからID聞きました。迷惑だったらホントにごめんなさい! でも、よかったら、たまに、メッセージ送ってもいいですか? 馴れ馴れしかったらホントごめんなさい!』

――――――


14章9節


凛     「ふっ……『ごめんなさい、ごめんなさい』って。文面がもう挙動不審じゃない。……まあ、教育しがいがあるって意味じゃ、面白いかもね。私の連絡先教えるくらいなんだから、“合格”なんでしょ、律」




[中都高校_廊下]


雄三   「今度演劇部の最優秀賞記念公演やりまーす! 観に来て……ねっ!!」

雄二   「おい。あんまり勢いよくチラシ差し出すな。逃げられてんだろ」

雄三   「え~? だってシュバっと出さないと、避けられるじゃ~ん!」

雄一   「お前ら! もっと丁寧かつ素早くだ! 見てろ……こうだ! こうっ!」


14章9節


雄二・雄三「「おお~! さすが兄ちゃん!!」」

雄一   「フン。このくらい技、キメられなくてどーすんだ。我らが演劇部の、大事な宣伝なんだからな! 気合い入れろ!」

雄二・雄三「「おー!!」」




[中都高校_演劇部部室]


ハジメ(真尋)『……君と俺の出会いは、神様の気まぐれだった』

リョウ(ロキ)『そ。何もかも、たまたまだ。そんな相手と、無理にトモダチになる必要ないだろ?』


リョウ(ロキ)『……ハジメ。もう、これ以上俺に関わるな』

ハジメ(真尋)『……いやだ!』

リョウ(ロキ)『いやだって、お前……』

ハジメ(真尋)『だって俺は、出会ったのが君で……リョウでよかったと思ってる。何もかも、運命──……いや、“運命じゃない”』


章節


リョウ(ロキ)『……え』

ハジメ(真尋)『神様の決めた運命さえも超えてみせる! だから、お願いだ。俺の手を取ってくれ……!』


 総介、手のひらを打つ。


総介   「うん! やっぱこっちのほうがイイね!」

章    「前の公演の時も、このシーン十分評判よかったのに。まーた結構な大直しさせやがって!」

総介   「とかなんとか言って、アキもこっちの方がイイって思ってるクセにぃ!」

章    「……くそ~。俺、総介に何回このパターンで押し切られれば気が済むんだ……」

律    「あ。今の見てたら、なんか──メロディ降ってきました」

総介   「え。待って待って。このタイミングで曲変えるのはさすがに急よりっちゃん!?」

章    「台本直すのだって、十分急だっただろうがよ!」

衣月   「……ごめん総介。今のを見てたら、衣装もちょっとだけアレンジしたくなってきたんだけど……」

総介   「もうっ! みんなの演出家泣かせっ!! 本番まで時間ないんだから、超特急でね! ……てなわけで、またいろいろ変わるけど、対応オッケー? 2人とも」


真尋   「うん、もちろん」

ロキ   「これが、中都演劇部、だろ?」


総介   「……さあ。今日も本番だ。みんな、準備いい?」

章    「おう!」

衣月   「うん」

律    「はい!」


総介   「6人で創る“神級”の2人芝居、開幕するよ」



総介   「10秒前……」


総介   「……5秒前……」


総介   「4、3、2…………」



真尋   「俺たちの“しばい”だ。……行こう、ロキ」

ロキ   「おう。行くぞ、真尋」



「「「「「「開演!」」」」」」



<第14章 本編終了>

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