第42話 舞台平面はこんな感じで
かすみセンパイの手が、凄まじい速さで走る。
「他のキャストをこんな感じで配置するわけね」
さっきの見取り図に、舞台装置とキャストの立ち位置が描かれていた。
「あ、そう、こんな感じです!」
客席にいちばん近い1袖(第1袖幕)と、その後ろの2袖(第2袖幕)の間に、廃屋の舞台装置が置かれている。
1袖の裏にあるSS(ステージサイドスポットライト)は、廃屋の壁を舐めるように照らすことになる。
2袖の裏にもSSが描かれているが、これはまだ何の役割も果たしていない。
廃屋を背景として観が立ち、それを両側から挟むようにして、他のキャストが配置されていた。
下手に担任と両親、上手にあきらと小菅。
下手の3人は三角形になっている。その頂点は事なかれ主義から豹変した担任で、客席沿いの中央寄りには口やかましい父親、舞台端に近い方には仕方なくついてきたっぽい母親。
上手の2人は、観に近い方と客席に近い方になるよう、斜めに立っている。
あきらは観の目の前に立ち、小菅はそれを見守る形になっている。
そこまで見せたセンパイは、声を低めて答えを求めてくる。
「クライマックスは?」
そう言うなり、見取り図の上に、もう一枚ルーズリーフが重ねられる。
僕は濁流そのもののような勢いで、一気に語りつくした。
「崖崩れで、廃屋が増水した川に流されます。観は廃屋と共に流される悠里を追います」
《悠里!》
観は声を限りに呼ぶが、その声は荒れ狂う川の轟音にかき消されてしまう。
《来ないで!》
そう言い残した悠里は濁流に呑まれるのだが、センパイはそういういいトコで話を遮った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます