第40話 思わぬアクシデント

 そして、僕はつぶやくことになる。


「あ……」


 連休3日目の朝、僕たちは学校正門の前で呆然と立ち尽くしていた。

 二人きりじゃない。

 何十人という体育会の部員たちが、僕たちと同じものを無言で見つめている。

 その視線が集中する先にある学校の門には、張り紙がしてあった。


  (上下水道の緊急点検につき、全校舎閉館とします)


 このあいだの水道騒ぎは、それだったらしい。

 体育会の部員たちの諦めというか、踏ん切りは早かった。

 ジャージや短パン姿の生徒たちがぞろぞろと帰っていく。

 最後に、僕たちだけが取り残された。

 センパイが、独り言にも似た脱力感満載の声で尋ねる。


「ど~する?」


 急に聞かれても、いい考えは出ない。


「市の図書館とか……」


 僕の思いつきを、センパイは運命を自嘲するかのように却下した。


「私語厳禁。打ち合わせできないでしょ……」


 行き場所はなかった。

 でも、かすみセンパイの了解なしに先を書くわけにもいかない。

 その結論は、割と早く出た。


「歩きながら考えよ。帰る方向一緒じゃない?」


 仕方ない、というニュアンスたっぷりの深いため息が、唯一の解決策だった。

 僕たちは、とぼとぼと帰途につく。


「センパイ、帰りの駅は?」


 聞いてみたら、僕の乗り換え駅だった。とりあえず、最終打ち合わせはなんとかなりそうだ。

 学校最寄りの駅までは、歩いて10分。好天に恵まれたのはいいが、衣替え前の冬服では結構暑い。

 歩きながら、かすみセンパイはふうふう言っていた。

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