第2話 第4回東方巨大数参加作品

 2018年9月13日、某所──


十:──この「みくみく順序数Act.3.7.P」の付録に拡張のアイデ

  アが書かれてあって、例えば(3,Pᵪ¹,3)という表記で到達でき

  ない最小の表記を(3,3₃,3)のように「下付き文字」を導入し

  て表記して、この「下付き文字」に「みくみく順序数」を使

  うという事らしいのだけれど... これって、実質的には「新

  しい記号の導入」になってしまっているのよ...

霧:「下付き文字」を「新しい記号」と見なすかどうかは人によ

  ると思うけど...

十:私はそう感じたわ... だから「下付き文字」を使わない拡張

  を考えてみたの...

霧:興味深いね。

十:まず、素数を「巨大数庭園数よりも小さな数」と「巨大数庭

  園数よりも大きな数」に分けるの──

霧:ちょっと待ってくれ...

十:──ん?

霧:巨大数庭園数を使うと巨大数庭園数になってしまわないか?

十:巨大数庭園数の大きさそのものは、この拡張の強さとは関係

  ないわ... 任意の計算可能関数で物理的に表記不可能なほど

  大きな数なら何でもいいのよ...

霧:いいよ... 続けて...

十:要は、𝑭 ο_ω ⟮n⟯ について、この実世界で可能な限り、例え

  ば𝑭 ο_ω ⟮𝑭 ο_ω ⟮𝑭 ο_ω ⟮...⟯⟯⟯ みたいにくり返しても、巨

  大数庭園数には全く届かないわけだから、実質的に「巨大数

  庭園数ほど大きな素数」がこの演算の中で現れることはない

  のよ──

霧:まあ、そう推定できるな...

十:──ということは、素数を「巨大数庭園数よりも小さな素

  数」と「巨大数庭園数よりも大きな素数」に分けても、実質

  的には問題が起きない... ただ、表記する方法が無いのよ

  ね...

霧:巨大数庭園数よりも大きな素数だもんな...

十:だから「巨大数庭園数よりも大きな素数」を「3₀」ろ表記し

  ようと思うの──

霧:ちょっと待ってくれ... それは「下付き文字」を使うのと同

  義じゃないのか?

十:そうよ。

霧:そうよって...

十:でも「みくみく順序数Act.3.7.P」の付録の拡張のアイデアと

  違うのは、まず、私の拡張では「下付き文字」の値が変化す

  ることは無いのだけれど... つまり、拡張としてはてんで弱

  いのだけれど... でも、表記は不可能だけれど、理論的には

  「下付き文字」を使わない表現に変換できるということな

  の... もちろん、理論的に考えると𝑭 ο_ω ⟮n⟯にはいくらで

  も大きな数を入力できるから、入力できる上限値が発生して

  しまうのだけれど...

霧:上限値はどうするんだ?

十:任意の計算可能関数で物理的に表記不可能なほど大きな数

  で、巨大数庭園数よりも本質的に小さな数ならば何でもいい

  のだけれど... でも「3₀」という表記なら、そもそも問題が

  起きないわ... ただの「下付き文字を使った拡張」だから...

霧:ちょっと待ってくれ... では「巨大数庭園数」の意味は?

十:「下付き文字を使わない表記に変換できる」ということ... 

  その場合、急増加関数への入力には上限が出来て、かつ、実

  質的に表記が不可能になるけど...

霧:ちょっと待ってくれ... では、何の価値が...

十:ただのロマンよ。

霧:ロマン...


 🔷ω番地数列の拡張


  🔶P₂¹ ☞ 3

  🔶Pᵪ¹ ☞ 巨大数庭園数よりも小さな素数

  🔶𝐏₂¹ ☞ 巨大数庭園数よりも大きな最小の素数

  🔶𝐏ᵪ¹ ☞ 巨大数庭園数よりも大きな素数


 🔷拡張表記


  🔶𝐏₂¹ > Pᵪʷ

  🔶𝐏ᵪʷ = Pᵪʷ₀ = □₀ □は自然数


 🔷上書きする記号


  🔶z ☞ Pᵪ¹または𝐏ᵪ¹とする。 

  🔶a ☞ 𝐏ᵪʷ と𝓒...(Ø)𝐏ᵪʷを追加する。

  🔶Z ☞ Pᵪ₊₁¹または𝐏ᵪ₊₁¹とする。

  🔶A ☞ 𝐏ᵪʷ と𝓒...(Ø)𝐏ᵪʷを追加する。


 🔷追加する記号


  🔶Ͳ ☞ zを𝐏ᵪ¹としたときの𝐏ᵪ₊₁₊ᵨ¹

  ・この記号のある計算規則のzは𝐏ᵪ¹です。

  ・この記号のある計算規則のaは𝐏ᵪʷまたは𝓒...(Ø)𝐏ᵪʷです。 w≧2 

  ・この記号のある計算規則の…bは𝐏ᵪʷまたは𝓒...(Ø)𝐏ᵪʷまたは𝓒...(Ø)𝐏ᵪ¹です。 w≧2 


  🔶ϡ ☞ 𝐏₂¹

  ・この記号のある計算規則のzはP₂¹です。

  ・この記号のある計算規則のaはP₂ʷまたは𝓒...(Ø)P₂ʷです。 w≧2 

  ・この記号のある計算規則の…bはP₂ʷまたは𝓒...(Ø)P₂ʷまたは𝓒...(Ø)P₂¹ です。 w≧2


  🔶ᵪ₀ᵀᵒᵖ ☞ Ͳを𝐏ᵪ¹としたときのᵪです。

  🔶ᵪ₀ᴮᵒᵗᵗᵒᵐ ☞ zを𝐏ᵪ¹としたときのᵪです。


  🔶…₈Δ ☞ 0個以上の項が続きます。0個ではない場合は、2個以上の項が続きます。ただし…₈Δのある項を第𝑒項としたとき第𝑒項にある数はͲまたはϡより𝐏ᵪ²以上大きいです。

  🔶₈Δ ☞ 同じ計算規則番号の…₈Δと同じ文字列です。


 🔷追加する計算規則 加算


  🔶「みくみく順序数の計算規則」の「加算の定義」にあるPの文字を含む定義のPを𝐏に置き換えたものを追加します。


 🔷追加する計算規則 写像


  🔶01: ƒ (𝐏ᵪ¹) = 𝐏ᵪ ⁿ⁺¹


  🔶02: ƒ (𝐏ᵪ¹,𝐏ᵪ¹) = (𝐏ᵪ ⁿ⁺¹)


  🔶03: ƒ (…₀Δ,a) = 𝐒𝐮𝐦[n]

   🔶 𝐒𝐮𝐦[0] = 𝐏ᵪ¹ 

   🔶 𝐒𝐮𝐦[𝑒] = (₀Δ,a-1)𝐒𝐮𝐦[𝑒-1]

   🔶 aが𝐏ᵪʷまたは𝓒...(Ø)𝐏ᵪʷの場合のみ。   


  🔶04: ƒ (…₈Δ,z,Ͳ,z) = (₈Δ,z,𝐏𝐇[n],z)

   🔶 𝐏𝐇[0] = 𝓟_0

   🔶 𝐏𝐇[𝑒] = (𝓟_𝑒,𝐏𝐇[𝑒-1],𝓟_𝑒)

   🔶 𝓟_ x : 𝐏₍ᵪ₀ᵀᵒᵖ₋₁₎₊₍₍ₙ₋ₓ₎⊗₍₍ᵪ₀ᵀᵒᵖ₋₁₎₋ᵪ₀ᴮᵒᵗᵗᵒᵐ₎₎¹


  🔶05: ƒ (…₂Δ,…b,a,Ͳ,z) = (₂Δ,…b,a-1,Ͳ,z,𝐏𝐇[n],z)

   🔶 𝐏𝐇[0] = P_0

   🔶 𝐏𝐇[𝑒] = (𝓟_𝑒,𝐏𝐇[𝑒-1],𝓟_𝑒)

   🔶 𝓟_ x : 𝐏₍ᵪ₀ᵀᵒᵖ₋₁₎₊₍₍ₙ₋ₓ₎⊗₍₍ᵪ₀ᵀᵒᵖ₋₁₎₋ᵪ₀ᴮᵒᵗᵗᵒᵐ₎₎¹


  🔶06: ƒ (…₈Δ,z,Ͳ,z,δ…) = (₈Δ,z,𝐏𝐇[n],z,δ)

   🔶: 𝐏𝐇[0] = 𝓟_0

   🔶 𝐏𝐇[𝑒] = (𝓟_𝑒,𝐏𝐇[𝑒-1],𝓟_𝑒)

   🔶 𝓟_ x : 𝐏₍ᵪ₀ᵀᵒᵖ₋₁₎₊₍₍ₙ₋ₓ₎⊗₍₍ᵪ₀ᵀᵒᵖ₋₁₎₋ᵪ₀ᴮᵒᵗᵗᵒᵐ₎₎¹


  🔶07: ƒ (…₂Δ,…b,a,Ͳ,z,δ…) = (₂Δ,…b,a-1,Ͳ,z,𝐏𝐇[n],z,δ)

   🔶 𝐏𝐇[0] = 𝓟_0

   🔶 𝐏𝐇[𝑒] = (𝓟_𝑒,𝐏𝐇[𝑒-1],𝓟_𝑒)

   🔶 𝓟_ x : 𝐏₍ᵪ₀ᵀᵒᵖ₋₁₎₊₍₍ₙ₋ₓ₎⊗₍₍ᵪ₀ᵀᵒᵖ₋₁₎₋ᵪ₀ᴮᵒᵗᵗᵒᵐ₎₎¹


  🔶08: ƒ (…₈Δ,z,ϡ,z) = (₈Δ,z,P₍ₙ₊₂₎¹,z)

  🔶09: ƒ (…₂Δ,…b,a,ϡ,z) = (₂Δ,…b,a-1,ϡ,z,P₍ₙ₊₂₎¹,z)

  🔶10: ƒ (…₈Δ,z,ϡ,z,δ…) = (₈Δ,z,P₍ₙ₊₂₎¹,z,δ)

  🔶11: ƒ (…₂Δ,…b,a,ϡ,z,δ…) = (₂Δ,…b,a-1,ϡ,z,P₍ₙ₊₂₎¹,z,δ)


  🔶12: ƒ 奇術 = (3,(𝐏₂¹,𝐏₍ₙ₊₂₎¹,𝐏₂¹),3)


 🔷奇術

 

  🔶 (3,(𝐏₂¹,𝐏₍ₙ₊₂₎¹,𝐏₂¹),3)で到達できない最小のみくみく順序数を奇術とします。


 🔷巨大数

 

  🔶𝑭 ο ⟮n⟯  ☞  急増加関数

  🔶ο ☞  みくみく順序数 Act.3.7.P + 奇術

  🔶n ☞  非負整数

  🔶無量大数 ☞ 『塵劫記』寛永十一年版

 

   のとき、

 

   𝑭 奇術 ⟮ 無量大数 ⟯

 

   を『みくみく奇術数』と命名します。


十:──どうかしら?

霧:どうも私の趣味じゃないね... やってみていいかい... 巨大

  数に必要なのは、もっと、わかりやすい大きさなんだよ...

十:──強化が中途半端で、わかりにくくはあるわね...

霧:無量大数を使ったのはいいと思う...

十:らしくないじゃない?

霧:──なんのことだ?

十:そこは... ん、ん、──無量大数を使ったはいいと思う... 

  じゃないかしら?

霧:私は、アニメキャラかなにかか?

十:いいわ... 流して...

霧:──では、私がお手本を見せよう... もし、世界の1世紀が

  無量大数年だったら、もし、世界の1年が無量大数日だった

  ら、もし、世界の1日が無量大数時間だったら、もし、世界

  の1時間が無量大数分だったら、もし、世界の1分が無量大

  数秒だったら...

十:えええ...!?

霧:もし、その世界に生まれたたった1匹の生物が、1秒に1

  回、無量大数匹に分裂したら。生物が生まれた時を0秒とし

  て無量大数世紀後には何匹いるのだろう?

十:そういう...

霧:まず、無量大数世紀は何秒か考えてみる... 1分が10⁶⁸秒

  だから1時間は10⁶⁸×10⁶⁸で{10⁶⁸}²秒だ... つまり、

  1日は10⁶⁸×10⁶⁸×10⁶⁸で{10⁶⁸}³秒になる... 1年は

  10⁶⁸×10⁶⁸×10⁶⁸×10⁶⁸で{10⁶⁸}⁴秒... そして1世

  紀は10⁶⁸×10⁶⁸×10⁶⁸×10⁶⁸×10⁶⁸{10⁶⁸}⁵秒... 

  無量大数世紀は10⁶⁸×10⁶⁸×10⁶⁸×10⁶⁸×10⁶⁸×1

  0⁶⁸で{10⁶⁸}⁶秒ということになる。

十:あまり増えなさそうね...

霧:そうなんだ... 次に、n秒後に何匹になるかを考える... 0

  秒のときは1 匹だから{10⁶⁸}⁰匹と記す... 1秒後は10⁶⁸

  匹だから{10⁶⁸}¹匹と記す... 2秒後は10⁶⁸×10⁶⁸ 匹だ

  から{10⁶⁸}² 匹と記せるよね... つまり、n秒後は{10⁶⁸}ⁿ

  匹と記せる... ということは、無量大数世紀後には無量大数

  の無量大数の六乗乗匹となるわけだな...

十:うーん...

霧:これがわかりやすい大きさというやつさ、その弱さが可視化

  されてはじめて、巨大数と言うのは感じられると思うんだ... 

  まあ、ロマンだよ...

十:なるほど...

霧:この無量大数の無量大数の六乗乗を「大無量大数」とでも名

  付けよう... そして... 大無量大数の大無量大数の六乗乗を

  「無量大神数」と名付ける、さらに──


  ^ : 指数表記

  無量大数 : 10^68

  大無量大数 : 無量大数 ^ {無量大数 ^6}

  無量大神数 : 大無量大数 ^ {大無量大数 ^6}

  全無量大数 : 無量大神数 ^ {無量大神数 ^6}

  大全無量大数 : 全無量大数 ^ {全無量大数 ^6}

  全無量大神数 : 大全無量大数 ^ {大全無量大数 ^6}


霧:そして──


  𝑭 ο_ω +1 ⟮ 全無量大神数 ⟯


霧:──を「霧雨大数」であるとここに命名する!

十:他人の巨大関数に適当な数をぶち込んだだけじゃない!!

霧:なにお!!

十:あなたこそ上から目線で!!


 その後、両者による激しい術の応酬が繰り広げられたという... 勝負は膠着し、和解した。そして合議の結果──


  𝑭 ο_ω ⟮ 𝑭 ο_ω ⟮ 𝑭 ο_ω ⟮ 𝑭 ο_ω ⟮𝑭 ο_ω ⟮𝑭 ο_ω ⟮ 0 ⟯⟯⟯⟯⟯⟯


 ──を、二人は「十六夜の霧雨数」と名付けた。

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