第30話入舎試験(2)
その日の夜、クリスティーナは武器庫の中にいた。バートが去り際に伝えていく。
「目隠ししてるけど、取っては駄目だよ。まあ、取れないように特殊な縛り方してるけど。もし万一外してもほどけないだろうから、再び着け直すことはできないからね」
「はい」
「それじゃあ、明日の朝迎えにくるから」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみ」
バートは武器庫の堅い扉を閉め、鍵をかける。宿舎に戻りながら、手のひらで鍵をもてあそぶ。
(黙っていたけど、あとで騎士の連中が脅かしに行くんだよな)
本当のことを言ったら、洗礼にはならない。新人騎士にはただ閉じ込めるだけと言って受けさせるが、脅かしにいくのが本来の目的だ。驚かされた新人が、そのあとに続く新人に真実を伝えないのは暗黙の了解だ。
(まあ、クリスは騎士じゃないからちょっと可哀想だけど)
宿舎に戻ると、脅かし役の騎士に鍵を渡す。
「あんまり脅かすなよ。お手柔らかにな」
念を押して、部屋に戻ったバートはその後、その鍵が新人騎士たちに手渡されたことを知らない。
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