第407話 ペルセフォス騎士養成学校に通おう! 4 みんなでお昼ご飯とヤリ放題君様




「うわぁ……これが学校なんですね。私、初めて入りました!」




 俺の騎士学校短期体験入学初日。



 一限目は魔法構築学と魔法練度を習い、さて二限目は、と思ったら水着魔女ラビコがゲスト講師として参戦。


 てっきりラビコは部屋で寝てると思っていたので、俺は相当驚いた。しかもビシッとしたスーツに伊達メガネ装着というやる気っぷり。


 何やらかなりの高等テクニックを集まった生徒、教員達にご教授したらしいが、俺にはさっぱり分からん内容だった。




 午前十一時からの三限目は魔法系授業が無く空き時間とのことで、少し早めに昼ご飯にしようと学校の食堂に来てみた。





「午前のお勉強お疲れ様でした。しっかりご飯食べて、午後からの体力をつけましょう!」


 来てみたら、なぜかそこにはロゼリィ、アプティ、クロが先に座っていて全員分の本日のランチメニューを注文し終わっているところだった。愛犬ベスもフンフンと俺の足に絡んでくる。


「なんで全員ここにいるんだ……」


 俺が溜息混じりに言うと、ロゼリィがすごい笑顔で出来上がったランチを持ってきてくれた。


「ふふ、サーズ様が短期入学のご家族向けにと校内見学の許可を出してくれたんです」


 ご、ご家族……。俺達はパーティーメンバーであって、家族じゃねぇけど……。


 まぁ、ロゼリィすっごく楽しそうだし、いいか。


 この異世界って義務教育とかないっぽいし、普通は学校なんて行かない世界みたいだから、ロゼリィにとって学校っていう空間は憧れの場所なんだろう。



「……あと一歩です……」


 バニー娘アプティはいつものごとく紅茶を頼むが、その味には不満なご様子。学食なんて安くてボリューム満点なのが取り柄であって、味は我慢だアプティ。



「うん、うめぇな。ジゼリィ=アゼリィとは比べらんねーが、学食なんてこんなもんだぜ。ニャッハハ」


 猫耳フードにゴーグル姿のクロが本日のランチ、鶏の揚げもの定食を豪快にかっこむ。見た目は鶏の唐揚げだが、揚げる油がいい物でない味。


 学食なんてこんなもんってことは、クロはセレスティアで学校に通っていたんだろうか。


 まぁクロは王族だし、エリート教育を受けていた……んだろうけど、普段のガサツさがそれを感じさせないんだよなぁ。



 ハイラによると、本来混むのは今の時間行われている三限目が終わる十二時過ぎらしいが、ラビコとハイラ見たさに多くの学生が食堂に詰めかけ混雑している。



「えーと、特別枠さんと正規学生との交流度合いは……先生の放つ勇者オーラに力の差と格の違いを感じ恐れをなした生徒達が近寄ってこず、と。もしそれを乗り越え、命知らずに近寄ってきたら先制攻撃で撃破します、と。よしっ」


 ハイラがランチ片手にお仕事であるデータ取りをチェックシートに書き込んでいるが、俺とハイラが横並びでいたら、そりゃあこの学校の卒業生でしかも出世頭のハイラに生徒は集まるだろ。俺、なんでもない街の人だし。


 後半の先制攻撃うんぬんはデータ収集報告じゃなくてハイラの意気込みな。



 あとそのチェックシート、裏にさっきのラビコの授業内容の覚えをすっげぇ書き込んあるけど、提出できるのか? 



「あ~つっかれったな~チラッ、肩とか~足とか~チラッ、誰か揉んでくれないかな~おや~そこの少年、聞こえる心の声が聞こえるよ~是非とも尊敬し愛するラビコさんの肩を揉んで差し上げたいって~あっはは~」


 二限目の特別授業を終えたラビコも右隣にいるのだが、さっきから俺をチラチラ見ながら疲れたアピールの連打。


 多分これがやりたくて特別授業をやるとか言い出したんじゃないか。


「ね~ね~社長~、ラビコさん超頑張ったんですけど~。社長に魔法使いの楽しさを教えてあげようと~私の手の内も晒したわけだし~」


「あのな、さっきの授業は魔法使えるやつ前提の戦闘スタイルの話だろ。俺はそこに辿り着いてもいないで、魔法自体が使えないんだっての」


 言ってて悲しいが、事実だ。


「でもまぁ……ペルセフォスの為に真面目に教えていた姿は格好良かったぞ。俺、ちょっと見惚れていたし」


 正直言うと、ラビコは見た目性格ともに俺の好みど真ん中。


 ビシッとスーツ着て、時折メガネ直しながら真面目に語る姿はすげぇ俺の琴線に触れた。


 ああ、誤解のないように言うと、俺の中で格好いい女性ランキング一位な。


 気の利くお姉さんタイプ一位がロゼリィで、俺の秘密を知りすぎていて逆らえない一位がアプティ。妄想力すごいけど頼れる妹一位がアンリーナに、頑張り屋だけど暴走娘一位がハイラ。人の上に立てる器一位がサーズ姫様、ガサツヤンキーだけど将来大物になりそう一位がクロってとこだろうか。



「うっは~! それ告白? 告白だよね~? これはラビコさんの一人勝ちコースきた~!」


 ラビコが目を見開き、子供のような笑顔で勝利をつかんだように右手を天に掲げる。


「あ、いや、そういう意味じゃなくて俺の中で格好いい女性一位……」


「先生! 見惚れていたのは私の露出した胸元じゃなかったんですか!? あんな至近距離でじっくり見ていたじゃないですか! こう、こうです!」


 チェックシートを怒りのままにブン投げたハイラが、制服の胸元を大きく広げ俺に迫る。ちょ……なんで怒ってんの……あとその紙サーズ姫様に提出するんじゃ……。


「……ハイラさんの胸元を無理矢理露出させてじっくり見た……? それ、どういうことでしょうか、ふふ」


 左隣にいた鬼、起動。


 ああああ……ロゼリィさん、無理矢理っていうワードは一度も出ていないっす……。見ての通り、今みたくハイラが自ら広げて見せてくれたんですって……。


「キングよぉ、授業つまんねーからってハイラ脱がせンのはやり過ぎじゃね。そんな焦んなくても部屋戻りゃあヤリ放題だろ? ニャッハハ!」


 ク、クロックリムさん……周りに集まっている多くの生徒達が見えますでしょうか。


 やり過ぎのあとに言ったヤリ放題って、なんでそっちだけカタカナ表記っぽく言ったんですかね……。



 もう早く帰ろう。


 これ以上王都にいたらソルートンと同じ位置まで俺の世間体が地を這いずってしまう。


 冒険者センターで試験受けたらすぐ帰ろう、そうしよう。


 そしてソルートンで始まる新たな物語、魔法使い(予定)俺をお楽しみに。







 翌日、ハイラを引き連れ登校したら、周囲から胸元ヤリ放題君と呼ばれていた。









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