第359話 火の国エキサイトツアー4 陸海行くだけでもデスレース様
日も落ち、淡いオレンジの魔晶石ランプが街を灯す。
夕飯の美味しそうな香りが漂い賑わう中央通りを抜け、フォレステイ駅へ向かう。
「取れたよ~社長~。いつものロイヤルチケット~」
「おう、すまんなラビコ。しかし毎回取れるな、ロイヤル部屋」
慣れた感じで水着魔女ラビコが駅の窓口に行き、いつもの高級チケットを取ってくれた。
魔晶列車の最後尾はよくある四人がけの椅子ではなく、ちょっとした高級ホテルみたいな部屋になっている。一人単位でお金を取られるわけではなく、一部屋単位での値段。
部屋の広さは頑張れば簡易ベッドが七から八個設置可能で、雑魚寝含めれば最大十人は利用出来る。
二十二時発のフォレステイから王都ペルセフォス行きは、各駅停車ではなく朝・昼二回のみ停車の特急に乗れば一日の距離。
その特急魔晶列車最後尾のロイヤル部屋の利用料は、六千G。
日本感覚で六十万円なり。
まぁちょっとお高い感じだが、丸一日背もたれ直角の四人がけ椅子で過ごす苦労を考えたら価値はあるかな。
内装は豪華絢爛。名前の通り、王族貴族がよく利用する物なので充実した設備が整っているぞ。
紳士諸君も十人集まって割り勘にすれば、お一人様六百G、およそ六万円で利用出来るのでお勧めである。
「あっはは~さすがにお高いからね~利用出来る人は限られてくるよ~。空いているのが普通で、毎回利用する私達が珍しいと思うよ~」
やっぱこっちの異世界地元民感覚でも六千Gは高いのか。
フォレステイから王都ペルセフォスに行くたびにその金額取られてたんじゃ、たまったもんじゃないしな。
ちなみに特急自由席もあり、直角背もたれ四人がけ椅子にはなるが、二百Gの日本感覚二万円で利用出来る。普通はそっちを利用するらしい。各駅停車だと百G。
マジでラビコに借金してまで王都に行って、飛車輪レースでハイラに賭けて良かった……。
宿ジゼリィ=アゼリィの社員になったので毎月かなりのお金は貰えてはいるが、レースで儲けたお金のおかげで、こうして自由に世界を見て回れているしなぁ。
ありがとうハイラ。帰りに王都に寄る予定だが、しっかりハイラの頭を撫でていこう。
「で、いくらだったんだ。今回は魔晶列車でペルセフォス越えて、デゼルケーノまで行くんだろ?」
過去にルナリアの勇者メンバーと共に世界を旅したラビコによると、このフォレステイの街から火の国デゼルケーノまで魔晶列車で繋がっているらしい。
かなり遠いんだとか聞いたが、その分値段もお高いんだろうか。
「うん、今回は魔晶列車で行くルートだから~このフォレステイから西に向かって王都ペルセフォスまで行って、そこから一気に南下~。カエルラスター島のあるティービーチ通過の、そこから花の国に入ってビスブーケ~。さらに南下して火の国突入で、火山に砂漠に火柱を避けつつ、大きな港のある王都デゼルケーノ到着~ってわけさ~。なんと合計四日間、一万Gの列車旅さ~あっはは~」
おっふ、四日ですか。結構ですなぁ。
そして一万G……ひ、百万円ですか……。行くだけで魔晶石アイテムのお店デュアメロディでカメラ買えるじゃん。
まぁ、四日で百万ってロイヤルクラスだと普通なのかね?
火山に砂漠に火柱を避けながら進む列車って、残機ゼロでデスレースかよ。
「大きな港があるってことは、船でも行けるのか?」
「行けるよ~。ソルートンからも定期便が出ているけど、花の国以南は浅瀬に岩礁海域が多くあるから、かなり迂回ルートになるのさ~。船だと二日半ってとこだけど~デゼルケーノ付近は海流がおっかしいからかなり揺れるんだよね~酔いやすい人はやめといたほうがいいね~」
ラビコがチラとロゼリィを見ながら言う。
なるほど、一応船のルートはあるのか。でも乗り物酔いしやすいロゼリィを考えて、今回は魔晶列車ルートにしたと。
「いや~アンリーナの最新式豪華大型高速魔晶船があれば揺れも抑えられて大丈夫だろうけど~普通の定期船レベルじゃキッツイよ~事故も多いし、あっはは~」
そういや商売人アンリーナのご自慢の高速魔晶船は、この世界に数隻レベルの超高性能だったっけな。やっぱ本物のお金持ちってのはすげーわな。一夜成金の俺とはレベルが違ぇ。
最後事故も多いとか言ったか。なんとおっかねぇ……陸路も海路も危険揃いかよデゼルケーノ。
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