第184話 異次元空間の主 8 どこでもゲートと魔王と旅の約束様
「今度来たときには我の部下を紹介したい、皆個性的で面白い奴なんだぞ」
魔王エリィが城のほうを指し、自慢げに語る。
さすがに二人が心配しているだろうから、と元の世界に返して欲しいとお願いした。
今度来たら……いや……あんまり来たくないかなぁ、ジェラハスさんがすげぇ睨んできてるし。
「今日はすまなかったエリィ、無断で入ってしまって。自分の不注意を反省しているよ」
「構わんよ。そんなことが出来るのはこの世でお前だけだ。むしろ誇るがよい、我の天頂世界に人間の身で入れたことをな、くふふ」
魔王エリィがニヤニヤ笑う。
招かれざる者は確か下手したら世界に拒絶されて消えちゃうんだっけ。おっそろしい……よく無事だったよ、その後も含めて、ほんと。
俺の異世界生活、綱渡り過ぎだな。
「それでどこにゲートを開けばいいのか。どこだろうと開けるぞ」
「……それって、ここからならソルートンにも繋がるってことか?」
ここってケルシィに繋がっているわけじゃないのか? ランヤーデの駅のとこの。
「ソルートン? ああ、ペルセフォスのソルートンか。いいぞ、そこでいいんだな? ほら」
魔王エリィが右手で円を描くと、人が通れるぐらいの歪んだゲートが出来上がる。フワフワと浮かぶゲートの向こうになんとなく景色が見える。
「あの、帰りたいのはケルシィのランヤーデ駅なんだけど、これ頭だけ出して向こうを見ること出来るのかな」
「ん? ああ、出来るが」
ちょっと見てみよう。
俺はアプティに左手を握ってもらって、向こうに落ちないように対策してゆっくり頭だけをゲートに突っ込む。
目の前に広がったのは港の風景。
倉庫のそばにゲートが繋がったようだ。
確かにここは見慣れたソルートンの港だ……向こうの漁船のところに海賊兄妹のレセントとシャムがいる。
うわ、これマジか。どこでもド〇じゃねーかよ、これ。
「す、すげーなエリィ……伊達に魔王名乗ってないな」
「くふふ、どうだ我のすごさが分かったか。魔王として崇めたてい、さぁもっと褒めろ」
ゲートから頭を引っ込めて魔王エリィを見ると、腕を組んでご満悦の顔。
いや実際これはすごい能力だな。
瞬時に世界のどことでも繋げれるんだろ、すげーぞ乗り物いらないじゃんこれ。ロゼリィがすっげー喜びそう。
「すごいぞエリィ。マジで尊敬するぞ。これ、乗り物酔いに困っている人の救世主じゃねーか」
「の、乗り物酔い……。お前、発想がしょぼいの……。これがあれば世界征服だの、悪いこといっぱい出来るだの思わんのか」
え、あ、ああ。そう言われればそうだが、そんなこと一切興味がないわ。
犯罪妄想より、ロゼリィの喜ぶ顔が真っ先に浮かんだぞ。
「ちなみに我はその乗り物に乗ったことが無くてな。一度乗ってみたいと思っている。ジェラハスも連れて一度乗ってみたいんだが、お前今度案内しろ」
「エ、エウディリーラ様、あんな時間の無駄な物など乗る必要がありません。私は行きません」
魔王が列車に乗っているのを想像したら、なんか面白くなってきた。多分ジェラハスさんブツブツ言いながらついてくるんだろうなぁ。
「いいぞ、魔晶列車っていうすげーものがあるから今度一緒に旅行しようぜ。旅ってのは目的地にいかに早く行くかじゃなくて、そこに行くまでの過程を皆で楽しむのが旅なんだ。不便だからこそ楽しいってのを感じて欲しいな」
ジェラハスさんがフンッと向こうを向いてしまう。嫌われてるなぁ、仕方ないけど。
「くふふ、不便を楽しむ、か。いいな、いい言葉だ。人間ってやつが文明を発展させていく理由がなんとなく分かるぞ。お前等は平和なときは本当にいい笑顔で暮らしを楽しんでいるからな。この世界を愛してくれるのは我としても本当に嬉しい」
魔王と旅行か、それは一体どんな旅になるんだろうな……。
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