3 異世界転生したら魔王がいたんだが

第156話 勇者の絵本といざ銀行へ様


「ゆうしゃさまはーまおうをたおしーこのよにへいわがおとずれましたー」



「はい、ゆーくんよく読めましたー」






 二日間の豆スープを乗り越え、俺はソルートンへ帰ってきた。



 宿の皆にお土産を渡し、最後に撮った集合写真を見せその日は大いに自慢話をした。


 やはりソルートンにいると王都はなかなか行ける場所ではないので、皆食い入るように話を聞いてくれ、国王の立場であられるフォウティア様を初めて見た従業員も多くいた。


 バイト五人娘も王族であるフォウティア様とサーズ姫様のお話をしきりに聞いてきていた。


 憧れなんだろうな、お姫様って。








 そして次の日、俺は公園にいる。



 やっとベスをいつものコースで散歩させることが出来、俺とベスが上機嫌。少し休憩しようとベンチに座ると、ラビコも隣に座る。


 なぜかラビコも散歩について来たので驚いている。


 午前十時前とはいえ、ラビコはいつもなら布団にくるまっている時間なのだが。



「なぁラビコ。だいぶ前に魔王クラスの敵と戦ったことがあるとか言っていなかったか」


 隣のベンチでは小さな子供を連れたお母さんが、子供に絵本を読ませている。勇者が魔王を倒すお話が描かれた物みたいだ。


「うん~? 魔王クラス? ああ~あるよ~なんとも不思議な戦いだったな~」


 おお、すごいな。ってことはこの絵本は本当のお話なんだろうか。


「魔王を倒し、勇者が今の平和な世界を手に入れましたってことか?」


「ん? んん~……倒しては……ないかな~追い返した~いや~撤退してくれた~が正解かな~」


 なんか随分歯切れが悪い言い方だな、何かあったのだろうか。



 しかし魔王か……異世界だなぁ。


 絶対に出会いたくないけど、異世界感満載でワクワクしてくるな。絶対に出会いたくないけど。



「もしかして以前ソルートンの戦いで現れた銀の妖弧ぐらいの、とんでもない強さなのか?」


 あの時はラビコ含む、元勇者メンバーのジゼリィさん、ローエンさん、海賊のガトさんがいたが、手も足も出なかったよな。次出会ってしまったら、どうやって対応すりゃいいんだ。


「魔王ちゃんはそれ以上だね~次元が違う感じ~。あの時は私達の力を量るような戦いだったな~さすがの女ったらしも苦戦してたし~」


 女ったらし? 勇者のことか? 銀の妖弧以上ってかい……ますます出会いたくないぞ。でもこの世界のどっかにいるのか……怖いなぁ、魔王ちゃん……。 



「魔王ちゃん……?」



「うん魔王ちゃん~」


 俺が聞くと、オウム返しされた。







「ささ、社長~そんなことよりお金~お金降ろしに行こうよ~銀行銀行~」



 ラビコが立ち上がり、俺の腕をぐいぐい引っ張る。


「え、まだ数日だぞ? そんなに早く振り込まれているのか?」


「あっはは~あの女の仕事の早さを舐めちゃいけないよ~私達が出発した日にはもうお金の輸送は始まっているはずさ~あの変態姫、私を社長の本人確認に指定したから~私が行かないといけないのさ~」


 なるほど、確かにあのお姫様は行動早かったしな。


 ラビコを俺の本人確認に指定したのか。一応冒険者カードはあるが金額が金額なので保険でラビコを使った、と。まぁ、ラビコは有名人みたいだし、顔確認がしやすいからかね。


「よし、行くか銀行。みてろ、すぐに借金返してやるぞ。欲しい物も買ってやる、おじさんになんでも言ってごらん……うはは」


「うっわ……私をお金で買うとか気持ち悪いこと言うな~。私が欲しいなら普通に言えばいいのにさ~」



 いや、欲しいとかそういうことではなくてな……。







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