第120話 そうだ、王都へ行こう! 15 アプティの正体と借金を想う俺の心様
「本……エロ本で仕入れた知識だ! 図解入りで載っていたのを熟読したんだよ!」
俺は吼えた。
こんな恥ずかしい咆哮は初めてだ。
「ふぅ~ん? それで、誰のブラを外すのを想像して読んだんだ?」
あああああ……! どっちに転んでも同じかよ! 言い損じゃねーか。
「マ、マスター……を困らせる奴……敵……」
アプティが震える声でベッドから起き上がろうとしている。
腕に力が入らず、ガクンと崩れ落ちた。
「アプティ! 無理するな……今ご飯あげるからな」
アプティに駆け寄り体を支え、ラビコから勝ち取った魔晶石をアプティに見せる。
「……マスター、これは……」
「魔晶石だ。これがエネルギーにはならないか?」
アプティは魔晶石をじっと眺め、俺に顔を向けた。
「……よろしいのですか……私は……あなた方の憎むべき……敵……」
「いい、アプティは俺を助けてくれた。それでいい」
俺の側に来た理由も知らないし、目的も知らない。
でも今まで危ない目にあったことはない。身の回りの世話を積極的にしてくれ、さっきは俺を救ってくれた。
甘いとは思う、けど……アプティはアプティだ。
アプティがラビコに視線を送る。
「ありがとう……これでまた私はマスターの側にいることが出来ます……」
「ふん、そこのお人よしに感謝するんだな。私一人だったら迷うことなくお前を消し去っているところだ。今後一瞬でも変な行動してみろ、消し炭にしてやる」
ラビコが睨む。
睨むのはいいが、胸を隠してくれ。
「了解した……私の目的はマスターを守り、満足させてあげること。あなた方と敵対する目的では無い」
アプティは魔晶石を口の中に入れ、豪快に音を立て噛み砕き始めた。
え……そういうふうに補給するものなの? もうちょっと美しいものを想像してた……例えば石にキスして、魔力だけ吸うとか……。
噛み砕くのかよ……俺の想像ファンタジー感がブチ壊れだ。あと歯、強いのね……。
俺を守る為に来た……と言ったか。俺って誰かに狙われてんのかい。
「あと分かっているとは思うが、それ、借金だからな? 一個五万Gな」
突如ラビコ様からのありがたいお言葉が俺に向けられる。
五万Gって日本感覚五百万円だぞ……。
「ご、ごま……まじかよ……な、なぁラビコ。俺の借金てもしかして、一生かけても払えない額に膨れ上がってないか……?」
「ん? ん~さぁな。あんま数えてねーけど、それならそれで早く諦めて私と結婚すればいい。簡単だろ、あっはは」
これはまずい。俺はアプティの両肩を掴み忠告する。
「い、いいかアプティ……今後は力を使うな。周囲の目もあるし、無用なトラブルは避けたい。アプティの体が心配なんだ……どうしてものときは俺の許可が無いとダメだ、いいな!」
力を使って今みたく倒れられて、ラビコから頻繁に魔晶石買うハメになるのは正直キツイ。
ちょっと俺の借金に対する恐怖から生まれた鬼気迫る演技が迫真染みていたようで、アプティは目を丸くして俺を見てきた。
「マスター……ありがとうございます。こんなに私に優しく、積極的に接してくれるお方はあなたが初めてです……嬉しい……」
アプティに無表情ながらもあたたかい顔を向けられたが、俺は直視出来なかった。
これが罪悪感というやつか。
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