第22話 イケメンボイス兄さんの笑顔様
お弁当販売以降、宿の酒場兼食堂に来るお客さんをぼーっと観察していたら、やはりいつもは来なかったお客さんの層の来店が増えた。
あのあとイケメンボイス料理人に店舗メニューにデザートを増やしてみようと進言したが、効果はあったようだ。
いつも我が物顔で席を占拠していた世紀末の覇者軍団が、隅っこで不安そうにしている光景は申し訳ないがちょっと面白かった。
「いやー今までお肉、油、濃い味、がメイン料理だったから気にしていなかったんだけど、デザートとかヘルシーメニューっていいもんだね」
イケボ兄さんがいい笑顔。
まぁここ酒場だしね。お酒のつまみとなるとそっち系になるしなぁ。
以前ヨーグルトにかけられたオレンジジャムがうまかったし、イケボ兄さんはデザート系パティシエに向いていると思う。
「あれぇ~? なんかお店の雰囲気が違うぞ~?」
ラビコがもそーっと起きて来た。
「もう昼だぞラビコ。ホラ用意しといたから食え」
「あれれ……すごい良い香りが漂ってる~。お酒と油とタバコの煙の香りがどこかへバニシング~」
ラビコの席に昼食を運んでやる。
本日は豆腐ハンバーガー。つなぎに豆腐を多めに入れてヘルシー志向。
「あれれれ……美声兄さんの頭どうしちゃったの~? 油は~? 濃い味は~?」
「生まれ変わったんだよ。みろよイケボ兄さんのあの笑顔を」
厨房で楽しそうに手早く調理をこなすイケボ兄さんを指す。
「あっはは~素手で肉を引きちぎる勇ましさが浄化されちゃったか~」
……確かにその姿はたまに見かけた。あのときも笑顔だった。いまとは真逆の笑顔。
とりあえず、お弁当作戦は成功したようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます