誘惑

差しのべられたその腕は

わたしに向けたものなのか

わたしはあなたのその腕を

引き寄せ 抱いていいものか


揺れる瞳のその奥に

知らない誰かの影がある

断ち切りきれない

憎愛の


その誘惑は あなた自身を

傷つけ殺すためなのか

あなたはわたしに その大役を

果たしてくれと 希うのか


抗いきれない 甘美な誘惑

わたしは今宵 あなたを殺す

あなたの心を追い詰めている

知らない誰かを 想うあなたを


差しのべられた腕をとり

強く胸に抱き締めて

あなたの体と心深くに

わたし自身を焼き付ける


あなたの瞳に写るわたしは

あなたを救った天使だろうか

それとも 堕とした悪魔だろうか


やがて迎える朝の光に

あなたは何を想うだろうか

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう！

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録（無料）

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る