第122話 邪神


何もない真っ白な空間に声がする。

「あぶな〜、危うく邪神になるとこだったよ。」


すると他にも声が聞こえてくる。

「本当にギリギリだったぞ。それにしてもあそこまで怒るとは‥。手が出せないとは言え、もどかしくてたまらん。」


「イチローカッコ良かったけど、邪神はまずいかな‥。まぁ、男らしいところが見れて良かったけど。ますます惚れ込んだよ。早く天界に来ないかなぁ‥、一万年は長いよ〜。」


「スローライフを望んでいたが、なかなか世界がそれをさせてくれんからな‥。」


「とりあえず闇精霊はワシが浄化しておくからイチローを頼んだぞ。」


「わかった。イチローは私が癒しておくから宜しくね。」


そう言うと、またこの白い空間に静けさが戻る。




気がつくと空間に浮いていた。

目は開けられないし、体を動かすことも出来ない。

ただ空間に浮いている感覚だけがする。


「気がついたの、旦那様。」


いきなり耳の横から声が聞こえる。

旦那様と言っているが、嫁達の声とは違うような気がする。


「正解!あの子達とは違うわ。」


げっ、俺の考えが読まれてる!ってことは神様かな?


「正解!でもあなたをこの世界に連れてきた神とは違うわよ。それに私はもっと上位の存在。」


神様に上位とかあるの?

何か聞くのが怖いのでスルーしよう。


とにかく声も出せないのは辛いかなぁ。


「私は念話でいいのだけど、それだと旦那様が困るわね。わかった、話せるようにするから待っててね。」


何をされるのかと怯えていると、いきなり誰かにキスをされる。

いきなりで驚いていると舌が口の中に入ってきて蹂躙される。

気持ちがいい。

何だなぼーっとする。

すると俺は意識を失ってしまう。


「ねぇー、起きて。」

また耳元から声が聞こえる。


「うわぁ、ビックリしたー。」

思わず叫んでしまう。


「良かった、声が出せるようになったわね。」


「あ、ありがとうございます。いやー何か夢を見ていたようで‥。何か良い匂いの人にキスをされる夢なんですが、あまりに気持ちよくて意識をなくすんですよ。」


「ふふ、それは夢ではないですよ。私がキスしてました。しかも私のファーストキスですよ。思わず100年も続けてしまいました。」


ん?100年?


「神様も冗談言うんですね。」


「冗談ではないですよ。100年間キスしてましたよ。」


100年もこの世界にいたのか‥。

まずい下手したら嫁さん達、死んでるかも


「あっ、大丈夫ですよ。この世界とお嫁さん達がいる世界では時間経過が違うので、こちらの100年はあちらの数秒です。100年と聞いて愕きました?」


何か可愛らしい神様だなぁ。

って、肝心の容姿が見れないよ。


「まだ姿は見せませんよ。そうですね、あなたがもっと強くなったら会いに行きます。」


「強くですか‥。」


「あっ、勘違いしないで下さい。剣技とかじゃないですからね?もっと心を強くして下さい。奪われるのが嫌なら、守ればいいじゃないですか?ちなみに家にこもっても守れませんよ。」


「まだよくわかってませんが、もっと強くなろうと思います。」


「私、待ってますから。では‥。」


その声を聞くと、また俺は意識を失うのであった。

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