ノータッチ
ユキの全力疾走のおかげか(?)、2匹いた一つ目の悪霊妖精は撒くことができたようだ。感じていた気持ち悪い視線から解放された。
無事に目指していた草原エリアにも到着。
「本当に草原がある……」
「はい。もうすぐ村に着きます」
「良かったね」
「前回は草原と森の境で悪戯妖精に転移させられました。気をつけて下さい」
想像よりも広い草原がキラキラと輝いているのを見ていたらお腹の虫が元気に叫ぶ。
時刻は11:30。ちょうど昼時。草原を少し進み良い場所で昼食をとる。
草原にはキラキラと小さな白い花びらが舞い幻想的な風景だ。
うどんが花びらを必死に追いかける姿が微笑ましい。
「これはなんの花?」
「これは……妖精ですが、長老様が言うには、この中から自我をもって成長する妖精はほとんどいないそうです」
「これも妖精なんだ。他のより綺麗ではあるね」
ほら、他のはどんぐりとか石だから。
そういえば、ベニもギンの元となった妖精が誕生した時に100年ぶりだと興奮していた。妖精が誕生するのには時間が掛かるのだろう。だから、あんなに頑丈なん?
【あら、妖精を見ているの?】
くっ。突然現れやがったよ。よく分からない妖精が。
ユキも直ぐに警戒体制に入る。
不可抗力で目の前に見えるのは、初めて遭遇する人型の妖精だ。ダリアとバンズが妖精を見ないように急いで下を見る。
【あら酷い。この前、新天地へ移動させてあげたのに。お礼もないの?】
こいつがダリアとバンズを転移させた妖精か。面倒なのが現れたな。
【あら、貴女妖精2匹も付けて優雅ね。キノコの子は女王種の分身ね。聞いてる? ねぇ? 何処へ行くのかしら?】
無視してみんなで出発の準備をする。立ち上がると妖精が真前に立ち行き道を塞ぐ。右左ちょこちょこと移動して邪魔をしてくるのにいつもよりイライラが募る。
「イライラ、ダメだえ~」
ギンに撫でられるとイライラしていた気持ちがおさまる。妖精って感情まで干渉してくんの? 最悪じゃん。
ダリアとバンズも心なしか不機嫌そうだ。急いでギンの出したロワーで買っておいた甘めの芋を蒸した物を渡す。これで気分を上げてほしい。
「美味しいです! なんだか気分が晴れました」
「よかった」
【本当、妖精付きは面倒ね。今日はもういいわ】
帰るのか? 是非そうしてほしいんだけど。帰れ帰れ。
この妖精は人型だけど身長は膝上程の高さ。中性的な顔で全身をパステルグリーンと灰色の鱗に覆われ髪は長い銀色だ。
(羽はないけど、想像していた妖精に一番近い)
次の瞬間ギンのビリビリが銀髪の妖精へと放たれる。
【きゃ。酷いわ。手が焦げたじゃない】
「お触り禁止だえ~」
どうやら脚に触れようとしていたようだ。ギンちゃんありがとう!
本当に一言も信用できない奴らだな。
さて、この面倒臭い妖精様をどうしようか?
ダリアとバンズがそそくさとユキとうどんに乗り私に視線を送る。
(うん。そうだね。無視して進もう)
しつこく手が痛いと言う銀髪の妖精を無視してユキの方へと歩くと再び気持ち悪い目線を背後から感じる。
また一つ目の悪霊妖精? 勘弁して!
【あら、あれは面倒ね。残念だけど……勇者キヨシの話もできると思ったのに】
「え?」
【はい。餞別】
しまった。つい小さく返事をした瞬間ドロッとした樹液のような液体を服に掛けられ銀髪の妖精は何処かへと消えていった。
「何この液、甘ったるくて臭い。何この液?」
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