ほらホラー
「妖精はもう大丈夫ですか?」
朝食を終えたダリアが不安そうに尋ねてくる。
「うん。反省室に入ってもらってる」
「反省室(?)ですか?」
「そうそう。心配しなくても出て来られないから。ここの妖精は皆んなあんな感じなん? 凄い罵倒されたんだけど」
「あの様に長く対話をしているのは初めて見ましたが、幼い下級の妖精は口だけは達者です」
だろうね。
でも、あれくらいの悪口だったら町にいた人間と然程変わらないと思う。人間も普通に聞こえるように悪口言ってくるし。
「先を急ごう。今日中には着くかな?」
「森が変化しているのでなんとも言えません」
ユキに跨がり出発する。
出発から2時間経過。
似た風景に何度も同じ場所を通過しているのではないかと不安に駆られる。それに、先ほどから気持ち悪い刺すような視線を感じる。
「ギンちゃん、ちゃんと進んでいるんだよね?」
「だえ~。大きい妖精いるだえ~」
大きい妖精?
この視線はその大きい妖精のなのか?
「ダリア、バンズ、大きいのいるみたい。気をつけて」
ダリアがコクンと頷きバンズがギュッと目を閉じる。
あれ? 私も目を閉じた方が良い? なんて考えていたら、視界の端に妖精らしきものが映る。
(待って待って。ちょっと待って。何よあれ)
木の陰から半身を乗り出すよう黒い人影。全身黒いのに黄色く濁った血走った目がひとつはっきりと見える。その雰囲気はおどろおどろしく背筋がゾクっとする。
あれ妖精ってか悪霊じゃね?
直接見ないように無視して通り過ぎるが、それからずっと後をつけるかのように背後に視線を感じる。
暫く進んだがダリアの言っていた草原には辿り着きそうもなく辺りが暗くなり始める。
不本意だけど今日も泊まりだ。
「今日はここまでだね。何してるの?」
うどんから降りたダリアが自分の目を隠すかのようにタオルで顔を縛る。
「これでしたら、妖精と目を合わせることもないかと思います」
そう言い、こちらに歩きながら地面に絡む木の根に引っかかり転ぶダリア。
天然さんなのかな?
しっかり者のダリアの意外な一面を見たところで、立ち上がる手伝いをする。
恥ずかしそうに謝るダリアに適当に言葉を送る。
「なんか、うん。そう言う日もあるよ」
「すみません……」
二人には、夕食後、また早々にテントに入ってもらう。
夕食中もずっと刺すような視線を終始感じたので、ダリアとバンズはタオルで目を隠しながら食事を取った。
野営で一人になった今、妖精(悪霊)が動き始める。
(ジリジリ詰めてきてんな。勘弁して)
「ギン、大丈夫なんだよね?」
右肩に座っているギンの返事が返ってくる前に左肩にズンと何かが乗った重さを感じる。
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